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東京のマンション価格高騰はバブルなのか? - 塚崎公義

東京都心のマンション価格が高騰しています。一部ではバブル期よりも高い値がついた物件もあるようです。これはバブルなのでしょうか? 今回は、バブルというものについて考えてみましょう。

バブルには二種類ある

 バブルというと、「欲の皮が突っ張った愚か者が馬鹿げた投機熱に踊らされている」というイメージがありますね。たしかに、バブルの歴史には、チューリップの球根が現在の貨幣価値で何千万円もした、といった記載がありますから、そういうイメージが持たれるのでしょう。しかし、最近ではそうしたバブルは見かけません。「誰もが値段が高すぎる事を知りながら、明日は今日よりさらに高くなると期待して買っている」というバブルは、経済学では「合理的バブル」と呼ばれているようですが、仮に発生したとしても、早い段階で政府がバブル潰しをするからです。

 じつは、バブルには2種類あって、最近のバブルは誰もバブルだと気付かない間に膨らむバブルなのです。「今がバブルなのか否かは、バブルが弾けるまでわからない」と言われるゆえんです。たとえば日本のバブルは、「日本経済は世界一になったのだから、株や土地が高いのは当然だ」という事で、人々はバブルだと思わずに取引をしていたのです。

 今から思えば、バブルだったわけですが、当時は日本経済を動かしている賢い人々の中にも、「急いで買わないと自宅が持てなくなる」と言って自宅を買った人が大勢いました。バブルであると解っていたら、バブルが弾けてから買えば良いのですから、自宅を買うはずはありません。つまり、当時は賢い人々にもバブルだとはわからなかったのです。筆者はこうしたバブルを「惚れ込み型バブル」と呼んでいます。

今の都心不動産はバブルの匂い

 さて、では現在の東京都心の住宅価格高騰はバブルでしょうか? それはわかりません。ただ、筆者は独自にバブルの判定基準を設けています。それは、以下の4条件が揃った時は、バブルの匂いが強いので近づかない、という方針です。結果としてバブルでなかった場合には儲けのチャンスを逃すことになりますが、それは仕方ない、と割り切って考えることにしています。その4条件とは、

①値段が高すぎると心配する人を説得するような「理論」が説かれます。日本のバブル当時は「日本経済は世界一で、21世紀は日本の時代だから、当然だ」といった感じでした。ITバブル期の米国も、「インターネットは米国経済のインフレなき成長を可能にする夢の技術だから」といった感じでした。今の東京では、「アジアの主要都市より安いので、海外の金持ちが買いにくる」といった所でしょうか。

②金融が緩和されている。日本のバブル期は、プラザ合意後の円高による輸入物価低下のおかげでインフレが防がれていて、景気が絶好調であったにもかかわらず、日銀が金融の引き締めをしませんでした。ITバブル期の米国も、インターネットのおかげか否かわかりませんが、とにかく物価が安定していたので、金融は緩和されていました。昨今の日本も、バブル的な現象は都心のごく一部で見られるだけで、景気全体はパッとしないため、金融は超緩和状態です。

③今まで投資と縁遠かった人が、急に参入してくる。バブル当時は、井戸端会議で「隣の奥さんが株で儲けた」という話を聞き、自分も株を買い始めた、といった主婦が大勢いました。ITバブル期の米国も、同様でした。今回は対象が都心の不動産ですから、サラリーマンの主婦が井戸端会議で、という事は無いでしょうが、今までと投資家層が大きく変化しているのか否かは見極めておきたいポイントです。

④当事者とそれ以外で温度差が大きい。バブル期の日本では、日本人が全員で浮かれていましたが、海外では「日本は大丈夫か」と懸念する人も多かったと聞きます。ITバブル期の米国についても同様でした。当時筆者は日本で経済予測を担当していましたが、米国出張から帰国した人が次々と「熱病」に伝染し、「米国経済は素晴らしい。米国の株高は本物だ」と言い始めたため、筆者たちは「米国に出張しない方が米国のことが良くわかる」と陰口を叩いていたものです。現在の東京では、一部の人々は盛り上がっているようですが、それ以外の人々は冷めていて、結構な温度差が感じられるかも知れません。

 こうした事を総合的に考えると、筆者個人としては「バブルの匂いが強いので近づかない」という判断に傾いています。もっとも、もともと先立つものが不足していて、近づけない、という事情もありますが(笑)。

バブルを止める役割は銀行に期待

 「惚れ込み型バブル」は、文字通り当事者が惚れ込んでいてバブルだという認識が無いのですから、当事者が止めることは期待できません。政府にも、期待はできないでしょう。バブルの時は人々がみなハッピーですから、政府がバブルを止めようと思ったら、「今がバブルである事を証明して、早いうちに潰さないと将来の被害が甚大になることを示す」必要がありますが、そもそも政府がバブルか否かを正しく判断できないわけですから、それは無理な相談です。

 そうした中で、筆者はバブルを止める役割を銀行に期待しています。バブルか否かは不明だとして、仮に「バブルではないから不動産価格は5割上がる、という確率が9割ある。今がバブルで、不動産価格が5割下がる、という確率が1割ある」と人々が考えていたとします。不動産を買うことは、期待値から考えてプラスですから、合理的な行動でしょう。ペーパーカンパニーを作って銀行から借金をして不動産を買うことは、さらに合理的でしょう。値上がりすれば大もうけ、値下がりしてもペーパーカンパニーが破産して出資額を損するだけですから、期待値は大幅なプラスです。

 しかし、銀行にとってはそうではありません。「9割の確率で不動産価格が上がるが、銀行の儲けは金利分だけ。1割の確率で不動産価格が下がると、銀行は貸出金の元本を損する」というわけです。

 つまり、バブルが疑われる時の不動産融資は、「勝てば借り手の得、負ければ銀行の損」という賭けなのです。つまり、バブルと確信しなくても、バブルかもしれないと思っただけで、銀行はこの手の融資を控えるべきなのです。
前回のバブルの時は、銀行がこうした冷徹な期待値計算をせず、大けがをしました。今回は、銀行が過去の失敗に学んで賢くなっている事を期待しましょう。

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