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日本の大学進学率は低いは本当か?

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④パートタイムの学生の要素

OECDの定義によれば、フルタイムの学生は、週に占める75%以上を勉学のコースに費やす者と規定されている一方で、パートタイムはそれ以下の時間を勉学に費やす者とされている。日本ではフルタイムの学生が多数であり、パートタイムの学生は少ない(学校基本調査によれば,大学や短大の通信制は全体の5%強に過ぎない)。一方で、海外ではパートタイムの学生の割合は高い傾向にある。パートタイム学生が増えることは入学へのハードルが低くなるため,進学率は上がりやすくなるといえる。

図3:2012年の在籍者に占めるフルタイムとパートタイムの割合(リンク

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 上記のグラフ(図2)は、在学生に占める割合を示したものだ。2012年時点で、パートタイム学生の割合は,オーストラリアでは29%、ニュージーランドでは39%、英国では23%、スウェーデンでは51%である。ただし,この数値は大学院等を含む在学生を対象とした数値であり、パートタイムの学生がどれほど初回入学者に含まれているのかはよく分からない。また,スウェーデンのように履修内容によりパートタイムを計上する国もあるため、データを比較するのかは簡単ではない。いずれにしても,パートタイムの学生が多くなれば,(社会人を中心として)入学のハードルが低くなるため,一部の国の進学率は高くなりやすくなるといえる。

まとめ

海外の留学生を除き,専門学校等のBタイプを含めた場合,日本の進学率はOECD各国でも上位となり、日本の進学率が低いという主張は必ずしも正しくない。そもそも、国民の教育到達度を図るのであれば、進学率よりも修了率に注目するべきだろう。これを見ても、日本の修了率はOECD諸国と比べても上位にあり、世界的にも劣後していない(2013年のデータ)。

では、日本はもう進学率を上げなくとも良いのだろうか? 高等教育の進学率・修了率は結果として上がった方が良いが、それは政策的に無理やり上げるべきものでもないし、大学(タイプA)に行くものという社会的な雰囲気もどうかと思っている。大学が多すぎて質の確保ができていない状態にある中で、18歳の進学率を上げることが意味のあることなのだろうか。自分がやりたいことが決まっていて勉強する気持ちがあるのであれば意味があるだろうが、何となく進学する意味が本当にあるだろうか。むしろ、人手不足が続く労働市場に早めに参入する方が費用対効果の面からも良いのではないだろうか。まずは仕事をやりながら、やりたいことを見つけた時に大学や専門学校に行く方が合理的な選択ではないだろうか。

日本の高等教育の問題は、こうした柔軟な進学の道が事実上閉ざされていることである。18歳〜19歳で大学に進学しなかった場合、そこから大学に行くことは時間的な面でも心理的な面でも厳しいものがある。特に、日本の大学では勉強をしない若者が多数派というイメージがあるので、社会人を経験して真剣に勉強を学びたいと思っている人は入りづらいだろう。実際に、下記のグラフで分かるように、日本は25歳以上の入学者の割合は国際比較で最低である。

図3:2012年の大学短大(Aタイプ)の初回入学者に占める25才以上の割合(リンク大学入学者に占める25歳以上の割合

 (※日本のデータは学校基本調査(2015)から計算)

 OECD報告書から読み取るべきポイントは、 18歳進学率を上げることではなく、人生の色んな段階での進学または学び直しができる環境を整えることである。むしろ、18歳での進学率は低くてなっても何の問題もない。18歳〜19歳で同じ年代に生まれた同じような人間と一緒にいても楽しいかもしれないが価値観は広がらない。社会人経験者、海外からの留学生など幅広い層の人間がいた方がいた方が多様性が増して学びが増えるだろう(これは大学院も同じだ)。

(注1)日本の大学進学率が50%以上あるというのは厳密には間違いである(文科省は大学・短大進学率は57%と計算)。日本の大学進学率(18歳進学率)は18歳人口の進学割合を示したものではなく、全ての年齢を含む大学進学者数(約68万人)を18歳人口(約120万)で割った数値である。厳密に18歳のうち大学に進学する割合は約42%程度である(短大を含めれば約45%)。

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