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労働力不足対策より「本当に足らぬ人数」の見極めが先だ - 河合雅司(産経新聞 論説委員)

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人口減少社会にどう対応するのか。安倍政権が、その「処方箋」として位置付ける「ニッポン1億総活躍プラン」をまとめた。

「1億総活躍社会」はあまりにテーマが大きく、それが何を意味するのかは、いまだ国民に浸透したとは言い難い。

だが、プランは「国際的には『人口が減少する日本に未来はないのではないか』との重要な指摘がある」との危機感を示しており、政府の狙いが少子高齢化で減り始めた労働力人口の確保にあることは明らかだ。

総務省によれば、2015年10月1日現在の生産年齢人口(15~64歳)は約7,708万人で、前年よりも77万人も減った。すでに景気回復に伴って人手不足に悩んでいる企業も多く、このままでは社会が回らなくなるとの思いであろう。

「1億総活躍社会」について、安倍政権は「名目GDP600兆円」、「介護離職ゼロ」、「希望出生率1.8」という3大目標を打ち立ててきた。これを労働力確保の視点で捉え直せば、すべてが結びつく。

「介護離職ゼロ」は言わずと知れた、40~50代の働き盛りが親の介護で仕事を辞めなければならない状況に歯止めをかけようということである。だが、プランが打ち出した具体策は、要介護の家族を抱える人たちの負担の軽減よりも、介護職員の処遇改善に比重が置かれた。賃金を月額1万円程度アップするのだという。

介護の現場は仕事の厳しさの割に賃金が安い。このため恒常的な人手不足が続いている。こうした根本部分を直さない限り、介護の受け皿は増やせず、介護離職もなくならない――という理屈の展開である。すなわち、「介護労働者を確保しなければ、すべてが始まらない」との考え方だ。

実は、メディアはあまり大きく取り上げていないが、プランは介護労働力について、外国人材の活用を「積極的に進めて行く」とも書いている。安倍政権は1億総活躍プランの議論と同時進行で自民党に特命委員会を設置し、単純労働者の受け入れ解禁の検討を行ってきた。4月26日に集約された特命委員会の報告書は、介護人材を念頭に「必要性がある分野については個別に精査して受入れを進めていくべき」と結論付けており、本音はむしろ、賃上げによる日本人の就労促進よりも「今後の介護は外国人に委ねよう」というところにありそうだ。

次ぎに「希望出生率1.8」だ。これは言うまでもなく、少子化に歯止めをかけることで将来的な労働力を増やして行こうということである。出産を機に辞職する女性は少なくない。一方で多くの女性が出産後も働き続ける状況となれば待機児童の増加という新しい壁が立ちはだかる。子育て環境の劣悪さを懸念して、出産そのものを諦める人もいる。結果として、女性労働力の確保を困難にし、あるいは少子化が進むという「負のスパイラル」になっている。

待機児童対策の遅れを批判するブログが世間の注目を集めたこともあり、これを解決すべくプランが打ち出したのが、待遇改善による保育労働力の確保であった。保育士の処遇を月額6千円程度引き上げ、職務経験を積んだ人には最大月額4万円程上積みするという。「介護離職ゼロ」と同じ発想である。

そして、3つ目の「名目GDP600兆円」だ。これは、労働力の確保が、結果としてそれを達成することでもあるということだ。要するに「労働力の減少に歯止めをかけられなければ、日本の経済成長はない」と言いたいのだろう。プランは高齢者の就労にも触れている。定年退職後に、やり甲斐のある仕事がなかなか見つからないという現実への対応だ。

プランは、非正規社員と正社員の賃金格差の是正や残業時間規制といった働き方改革にも踏み込んだのが最大の特徴だが、それも女性や高齢者の働き方のバリエーションを増やすことが、働き手自体を増やすことになるという判断からであろう。

出生数の減少に歯止めをかけるには時間がかかる。それまでの間、女性と高齢者の就労を促進していくのは現実的な政策だ。女性や高齢者によって社会の縮小スピードをやわらげなから、同時に出生数増につながる政策を講じていくしかない。そうした意味では「1億総活躍社会」が目指す方向性は間違っていない。

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