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京都人は中国人観光客をどう見ているか? - 中村繁夫 (アドバンスト マテリアル ジャパン社長)

京都という土地柄から着物が似合うのだろうか?

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京都旅行に訪れたAMJシンガポールの社員

 京都のレンタル着物がブームになっている。昔の貸衣装屋さんは冠婚葬祭や卒業式やお見合いやパーティ用途が専門だったが、最近では誰もが気楽に利用するようになった。誰にも変身願望があるのか、太秦の映画村でお姫様や町娘の格好をしたり、お殿様や忍者や剣客に変身したりするのが流行った。ところが、しばらく前からは夏祭りや五山の送り火の時に若いカップルが着物を利用し始めた。そして、「舞妓はん」に変身する観光客のニーズが本格的なブームにつながった。

 さらに、中国や台湾、香港、韓国からの外国人観光客が増えてきて、最近では主に爆買いツアーの中国人観光客がレンタル着物の需要の多くを占めだしたらしい。

たった3000円で変身願望が満足できる

 タクシーの運転手さんによると、着物のレンタルショップから出てきた4人の中国人観光客が、貸切で数時間の名所旧跡を回るというのが流行らしい。さて、レンタル着物の内容は着物・帯・和装カバン・草履を好きに選べるらしい。着付け付のお任せコースは3000円からあるという。スタンダードコースは4000円、フルコースが5000円で丸一日楽しめるという訳だ。足袋だけは別売りで500円、ヘアメイクも別だから全て入れても1万円以下である。中国の観光客の場合はツアー料金に含まれているから多分半値くらいになっているらしいとタクシーの運ちゃんから聞いたが詳細は不明である。

 さて、中国の観光客の皆さんは他県からバスを連ねて50人単位で五条近辺の大手レンタル着物店に朝一番に入り、絵柄の選択から着付け、ヘアメイクまで流れ作業で行うと1時間はかからないらしい。中国のお客さんは、そのまま名所旧跡を5軒も回れば夕方になる。ホテルに着いたら業者の方がホテルに回収に来ているから、段取りよくその日のうちに洗濯して次の朝一番には次のお客様用に提供されるという仕掛けらしい。今や観光客専門のレンタル着物の大手の店だけで15軒が軒を並べているとのことだ。

レンタル着物の戦略とは?

 正直に言えば、格安のレンタル浴衣はペラペラの化繊の和装生地だから、レンタル業者も気楽なものだ。いくら汚してもジャブジャブ洗えるから和装着物の大革命である。まあ、言ってみれば数でこなすという着物業界のビジネスモデルが確立したわけだ。レンタル着物には手描き友禅などはない筈である。多分、中国のどこかでプリント柄をコンピューターグラフィックスでデザインして大量生産しているのだろう。

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着物姿の女性が見られる

 別の見方をすればあのけばけばしい着物の柄目は中国の観光客の皆さんにはよく映っているともいえる。日本人の着物のセンスは「詫び寂び文化」に近いから、レンタル着物ブームとは似て非なるものである。そういえば、旧来の冠婚葬祭のニーズについては別に結構繁盛しているとも聞く。市場ニーズの差別化もあって、結婚式の黒留袖になると正絹の着物になるから、最低でも1万5000円から2万5000円が相場になるらしい。和装の世界にも多様性とグローバル化が進んでいると言えないこともない。

高田好胤老師の視点

 さて、修学旅行生のレンタル着物も流行しているが、中高生でも日本人だから、ペラペラの化繊生地はやはり嫌がるらしい。彼らは着こなしも見よう見まねで渋い着こなしをしているから堂にいったものだ。そう言われると最近では東京でも若者たちが着物を着て繁華街を歩いているのが流行っているのは修学旅行の学習効果なのかもしれない。

 話は変わるが、奈良の薬師寺の故高田好胤管主は修学旅行生に説法をするので有名だったが、青空法話で600万人以上の生徒さんに青空法話をしたことを聞いたので「毎日、修学旅行の生徒さんに説教するのは大変でしょう」と僕が聞いたら「いや、将来のために今から市場開拓しとかんと日本の仏教は廃れるからな〜」と屈託なく笑われたのを思い出した。京都の呉服屋さんも高利益商いの限界を感じて高田好胤さんの真似をして、和服の市場開拓を目指しているのかとも、フッと思ったがそんな発想を持っている和装衣料の経営者は寡聞にして聞いたことはない。

和服の似合う外国人はどこの国だ?

 さて、最近では中国系ではなく欧米人や東南アジアやアフリカの観光客も和服を着てそれぞれの変身願望を満たしているが、アジア系はともかく、欧米系やアフリカ系の方々は率直に言って和服は似合わないケースが多いようだ。欧米系のお嬢さん方は一般的にはスタイルが良すぎて似合わない。やはり和服は胴長短足に似合う様に感じるのだがどうだろうか? 

 脚の長い西洋人が裾をはだけて歩いているのを見ると幻滅する。無論、アジア系の観光客の中にもがに股で歩くから前がはだけるお嬢さんも居るから目のやり場に困るケースも多い。一方では着物はのっぺり顔に良く映える。ポッチャリタイプのおたふく顔は良いが鋭い般若顔は違和感があるからだ。

タクシーの運ちゃんの意外な反応とは?

 こうして見て行くと着物レンタルは新しい流れであるから京都の伝統文化にも結構寄与しているということになる。とはいうものの観光客以外のニーズについては、大体において着て行く場所も減る一方だし、日本人にとっては価格も高いし、要するに使い勝手が悪いと思ってしまうのだ。ところが、中国人観光客は何のこだわりもなく、人目を気にせずに京都の雰囲気を純粋に楽しんでいるというのだ。

 最近の中国では、結婚式の写真も有名人気取りで撮影するのが大流行である。結婚式に招かれた僕の方が恥ずかしくなるぐらいのアイドル気取りである。ということは、中国からの観光客への新需要と囲い込みとリピーターを開拓しないといけないことになる。タクシーの運転手さんに中国観光客の風評を聞いてみたところ、意外にも「最近の中国の若い観光客の方はエチケットも心得ているし京都にとっては有り難いお客さんですよ」との答えが返ってきた。

京都人の腹の中は?

 京都という街は、不思議な場所で古い歴史の中にも新しいものを常に開発してゆく伝統がある。信長も秀吉も家康も気がついたら京都の文化に染まっていった。西郷さんも坂本龍馬も新選組も京都を舞台に新しい時代を追いかけた。

 2020年の東京オリンピックまでにはあと4年しかない。日本に来る外国人観光客の数は少し前には500万人といっていたのが、今や2000万人になったらしい。2020年には4000万人とも5000万人とも政府観光局は発表している。その内、狭い京都に何人の観光客が訪れるのかは分からないが多分、多くの京都人は冷ややかな視線で「嫌やわー、あんなペラペラの着物を着て恥ずかしないのやろか」と思っているに違いない。

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