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創業家のからむ経営支配権争いには「ふたつの顔」がある

リンク先を見る定食屋さんを全国展開する大戸屋ホールディングスさん(JDQ)の定時株主総会において、創業家株主の方々が会社側人事案に反対する意向であることがマスコミ各紙で報じられています。最近は某大手流通グループさん、セコムさん、クックパッドさん、ロッテさん、黒田電気さん、王将フードサービスさん、そして大塚家具さん等、多くの企業のガバナンス問題で「創業家株主の活躍(暗躍?)」が話題になります。こういった時代を反映してか、左にご紹介した本のように、経営支配権争いに関与する法律家、企業実務家向けの良書も出版されています(ちなみに電子書籍版もあるそうです)。

経営支配権をめぐる法律実務(二木康晴、平井貴之著 新日本法規出版 3,500円税別 2016年4月)

本書のご著者である二木先生は富山和彦さんのところ(株式会社経営共創基盤)の社内弁護士の方ですね。平井先生も東京の企業法務に強い事務所の方だそうです。これまで真正面から「支配権争い」の攻撃防御について指南する本は出版されなかったのではないかと思います。経営権争いの準備方法、具体的な手段、参考となる裁判例が豊富に掲載されています。攻撃側、防御側いずれにも参考になります。私自身も現在進行形で3つほど(実際に裁判になっているのは1件ですが)、経営支配権争いの代理人を務めていますので、今後、活用させていただきます。

ただ、実際の経営支配権争いとなりますと、中小会社の「親族間の争い」に近いものと、委任状争奪戦等を前提とする上場会社の紛争とでは争い方も変わってきます(そもそも和解による終結の方策も全く異なります)。相手が嫌がることはなんでもやる!・・・という感じで、監督官庁や証券取引所にいろいろな投げ込みをやりますし、メインバンクや資本業務提携先企業を揺さぶるような情報提供もやります。コンサルタント・アドバイザーの方々のお知恵も拝借します。ときには著名な商法学者の方々の意見書も頂戴します。法に触れない、もしくは弁護士倫理に反しない範囲で、いろんな手を考えて事件を組み立てるので、まさに総合格闘技のような世界ですね(当ブログも、一方代理人の方から「あまり手のうちがわかるような内容のブログは書かないでね」と警告?を受けたことが何回かあります)。もちろん事件処理は秘密裏に行うのが鉄則です(ときどき表に出てしまうケースもありますが)。

ところで、先に掲げたような最近の事件は、オモテの世界に登場してしまったものですが、いったんオモテの世界に出てしまいますと「創業家VS現経営陣」「創業家内のお家騒動」といった構図でおもしろおかしくマスコミで話題になってしまう傾向があります。もちろん、本当に大株主としての支配力を駆使して現経営陣と対立するものもありますが、実はもうひとつ、「創業家の威信を隠れ蓑にした社長派と反社長派、または社長派と会長派との派閥争い」が実態、というケースもあります。いや、私が経験上では後者のほうが多いのではないか、と。

昔、普通の弁護士(?)をしていた頃、よく相続争いの事件を担当していました。亡くなった母親と同居していた長男夫婦の悪口を、生前、母親は、ときどき見舞いに来てくれた次男夫婦にしていました。次男夫婦は世話をする責任がないから「そんなことひどいことをされたのか?お母さん、かわいそうに」と母親に同情します。母親はかわいい次男夫婦に多くの遺産を与えて、(ケンカをしながらも、最後まで母親の面倒をみてくれた)長男夫婦には遺産を少ししか渡さない・・・ということがありました。経営者をリタイヤした創業家についても、経営権争いを繰り広げる反主流派が「今の社長はこんなひどいことを社員に強いています。このままだと会社はもちません」として創業家をなんとか自派の味方にしたいと画策します。創業家の中で主流派支持、反主流派支持と意見が分かれるケースもあります。冒頭の大戸屋さんの一件でも、監査役さんや社外取締役さんの多くが一度に退任されますので、色々な憶測が飛び交うことになるのでしょうね

某大手流通グループさんの事例で、社外取締役の方々に対して(社内取締役の方から)「S氏の退任後の処遇にまで社外取締役が口をはさむとは何事か!」と発言があったことが報じられていますが(産経ビズニュース)、やはり過去に大きな成功体験を持つカリスマ経営者の方の影響力というものは非常に大きいと思います。創業家がたとえ数%の株しか保有していないとしても、その方が経営に口を出すということは、おそらく現在議論されているガバナンス改革では制御できない影響力があります。では、そのような創業家大株主が存在する場合のガバナンスの最適な運用方法はどのようなものか?これはまた、持論を別途(論稿で)述べたいと思います。

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