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ピケティブームの真実とは? 18世紀のルソーから始まった「不平等との闘い」を総ざらいする 『不平等との闘い ルソーからピケティまで』 (稲葉振一郎 著)(文藝春秋 刊)

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「ピケティが示した不平等の歴史的な展開を、さらに歴史的に俯瞰する。格差論の未来のために!」トマ・ピケティ『21世紀の資本』共訳者の山形浩生氏 推薦!
ブームの背景にある壮大な経済学者たちの「闘い」を、『経済学という教養』で知られる稲葉振一郎さんがまとめた。

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『不平等との闘い ルソーからピケティまで』 (稲葉振一郎 著)


――まず、ピケティはどうしてあれほどブームになったのでしょうか?

 彼は20年前から「将来恐るべし」と言われていた数理経済学者で、10年前に実証分析に転換し、大出世した、というイメージです。つまり下地はあったわけです。しかしこんなに売れるとは思わなかった。翻訳が早く出たのはよかったですね。冗談半分で勝手に「どうせならこれは山形浩生さんに訳させれば早く出るのに」と言ってたらほんとに山形訳になって驚いた。

 目新しさという点では、「資本」という言葉に目をつけたのはいいですよね。アメリカ大統領選でサンダース候補が社会民主主義を標榜して票を獲得するなど、時代は大きく変わってきているのではないでしょうか。貧困から脱却するにはただ単に所得が保証されるだけではだめで、ピケティの言う「資本」つまりは財産が形成されないとだめなのです。むろんそこに教育、「人的資本」も入るのですが、物的資本もまだまだ重要だ、というのが優れた問題提起でした。

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本書の第9章でピケティを取り上げる

――近年は「成長主義より貧困対策を!」という声もあります。

 それは難しい話ですよね。もちろん「貧困」という言葉は直観に訴えるものはある。でもそれはいったい何なのか、というと案外難しい。

 ヨーロッパの社会学界では「貧困」に加えて「社会的排除」(社会的ネットワークから排除されること)を重視するようになりました。現代社会ではケータイがないと職も探せないでしょう? それは普通に考えれば飢えて死ぬわけではないですから「絶対的貧困」ではなく「相対的貧困」になります。でもそんな風にまとめちゃうとその深刻さが見えなくなりますよね? 「社会的排除」とはこの辺を捕まえるための言葉ですね。それにしても貧困というものは、まだうまい理論化が出来ていないですね。実のところ我々は「貧困」というものの満足な定義がまだできていません。

 しかしどう定義するにせよ、貧困対策には財源が必要です。そのためには成長が必要。成長のためには不平等もやむを得ないとする経済学者もいます。格差と成長の関係はいまだに分からないことが多いんです。

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