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【グレン・フクシマの分析】

トランプvsヒラリーの一騎打ちの可能性が高まっていますね。

アメリカ通商代表部の通商代表補代理や在日アメリカ商工会議所会頭などを務めたGlen. S. Fukushima氏が来日。日本記者クラブでお話を聞きました。

テーマはもちろん大統領選挙の展望と日米関係について。グレンさんは民主党政権下の高官で、民主党びいきです。それでも、トランプ現象(Trump Phenomenon)、サンダース現象(Sanders Phenomenon)、通商問題などの分析がおもしろかったので、ざっくりご紹介します。

なお、発言は日本語、資料は英語でした。日系アメリカ人のご本人曰く「日本で話すことはできるが、書くのは苦手」。

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<共和党トランプ現象の10の理由>

①Dissatisfaction with the status quo, establishment(現状や特権階級に対する不満)

②Anger at inequality(格差拡大に対する怒り)

③Anxiety and fear regarding globalization, immigration, trade, terrorism(とりわく白人男性によるグローバル化、移民、通商、テロに対する懸念や危惧)

④Being blunt, telling like it is, denying political correctness(率直に本音で話し、ポリティカルコレクトを否定)

⑤Simple talk, simple solutions(言語学者によると小学3年生でも理解できる語彙や文法を用いて、極端で大胆で分かりやすい)

⑥Self-funding, independent, not beholden to special interests(金持ちゆえに資金面で独立していて特定の利益団体に縛られない)

⑦Effective use of mass media(視聴率が取れるエンターテイナーとしてテレビを上手に活用)

⑧Lack of media scrutiny(これまで泡沫と見られていたので、メディアが真剣に調査していない)

⑨GOP leadership opposition to Obama(反オバマの流れに乗った)

⑩GOP mainstream fighting among each other(共和党の候補は当初17人もいて、主流派が内ゲバをやっている間に支持を伸ばした)

共和党がトランプを泡沫ではなく最初からまっとうな候補として扱っていれば、主流派ももっと早くにトランプを叩き落としていたのではないか。

<民主党サンダース現象の10の理由>

①Dissatisfaction with the status quo, establishment(現状や特権階級に対する不満)

②Anger at inequality(格差拡大に対する怒り)

③Preference for new faces(とりわけ民主党は新顔が好き)

④Hope for future, "political revolution"(将来への希望を打ち出し、「政治革命」を主張)

⑤Authenticity(慎重で明確でないヒラリーに対して本音で語り、物事を隠していない印象)

⑥Appeal to youth, students, women(若者、学生、女性による支持)

⑦Simple solutions(簡単に問題が解決できると言う。ヒラリーはできないことは、できると言わない。というのは、オバマが期待にこたえられなかったことに対する失望も横でよく見てきた)

⑧Small donations, not dependent on "Wall Street"(小口寄付が多く、ウォール街に依存せず。ゴールドマンサックスから莫大な講演料を受け取っていたヒラリーとの対比)

⑨End of Cold War, less allergy toward "socialism"(冷戦の終結によって"社会主義"という言葉に対する抵抗が特に若者の間で少ない。格差が拡大する中で平等主義とも映る)

⑩Support to influence Clinton(サンダースが勝つと思っていない民主党員も、ヒラリーにもっと左よりのスタンスをとらせるために敢えてサンダースを支持)

いま最大の問題は、いつどういう形でサンダースが撤退するか?

<通商が選挙の主要な争点に>

通商は、共和党でも民主党でも批判の的。議会、NGO、NPO、労働組合が反対しているだけでなく、エコノミストの中にも通商のメリットを疑問視する声が出始めている。米中の通商関係を例にアメリカへの打撃が大きいという試算などがワシントンで話題になっている。

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■2016年の大統領選挙は、「民主党の時代」の幕開けとなるか?

□その可能性は十分にある。もともと、人口動態を考えるとヒスパニックが増えることから、ヒスパニックに人気の民主党に有利な情勢。共和党は、オバマ大統領になぜ惨敗したかをまとめた報告書の中で、ヒスパニックなどマイノリティの支持を得られなかったことが主要な理由と総括した。今回は支持層を広げたかったのに、トランプの登場でまったく逆の方向に動いている。

■世論調査ではトランプvsヒラリーの一騎打ちではヒラリーが圧勝だが、トランプが勝つシナリオは?

□ヒラリーの失言や国内のテロなどが考えられる。彼女の電子メールをめぐる問題は深まらない。過去の国務長官もプライベートなメアドを使っていたし、「秘密事項」と後から分類された書類だってある。

トランプは穏健なことを言い、中道に寄ってくると思う。それでも、マイナス要因はいくらでもあるが、プラス要因は思い当たらない。

ヒラリー・クリントンは、有能な弁護士であり、判断力・決断力に優れ、よく勉強する。ただ、政治としての魅力、カリスマ性は残念ながらあまりない。ビル・クリントン、ジョージ・ブッシュ、バラク・オバマとその点が違う。でも、今さらそれを克服できない。今は高齢の女性層の支持が高いが、今後は、若者にも十分アピールできると思う。

焦点は、副大統領候補。ヒラリーは今年の10月26日に69歳になる。40代の人を選んで若者にアピールすることが重要。

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■トランプ氏は共和党の指名を得れば、方向転換するか?

□トランプの言うことは予測不能だ。言葉に責任を持たない。公約に意味がないのだ。一貫性がない

中国に対する報復関税や米軍の日本撤退といったこれまでの主張を変える可能性はある。彼は特殊な政治家だ。いや政治家ではなく、特殊なビジネスマンだ。とにかく、自らの行動を予測できないように動き回っている。

■トランプ候補によって上下両院の議会選挙にどう影響するか?

□上院では、5人が共和党から民主党に移れば、民主党が過半となり各種委員会の委員長を奪還できる。トランプが積極的に世の中に出た方が、民主党に有利になると見られている。

■TPPの批准はどうなるのか?

□クリントンは国務長官の当時、「TPP支持」を打ち出していた。それが去年、支持するための3つの条件を挙げた。①雇用を創出するか、②賃金が上がるか、③アメリカの国家安全保障を促進するか。

現段階では満たしていないと言う。ポール・ライアンのような、安倍首相訪米時に新聞にTPPの重要性を寄稿した共和党の通商を支持してきた議員まで、選挙期間中はとても批准できないと言っている。

大統領選挙当日の11月8日と新大統領が就任する来年1月20日の間のLame Duck Sessionでの批准を期待している。こうなれば、オバマのレガシーとなり、ヒラリーも「前政権が決めたこと」と言える。

ただ最高裁判事の指名が問題になるかもしれない。オバマ大統領は、2月に死去したAntonin Scaliaの後任としてMerrick Garlandを指名した。しかし、共和党は新判事は、後任の大統領が決めるべきだとして、議会上院の委員会で公聴会を開くつもりはないと主張している。

ただ、ヒラリーの勝利が確実となった段階で、いっそうリベラルな判事を指名されるくらいならMerrick Garland が"まし"だと思えば、Lame Duck Sessionを使って公聴会を開いて就任を決める可能性がある。

そう考えると、TPPがLame Duck Sessionで批准される確率は50%以下。ヒラリー・クリントンが大統領になった場合、あそこまでTPPを批判してきだだけにすぐに批准するわけにはいかない。

Lame Duck Sessionで批准するのがベストだが、できなければしばらく時間がかかるだろう。

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