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武士道精神の衰退 ―資質なき卑しい政治家は去れ―

理事・政治評論家  屋山太郎 

 舛添要一・東京都知事にはそもそも政治家たる資質がない。即刻、辞職するか、自ら辞さなければ、都民はリコール運動を起こすべきだろう。

 舛添氏は遊興の資金まで、政治活動に使うべき政治資金の中から支出した。今のところホテル代など45万円を返済することで罪を免れようとしているが、問題は金額の多寡ではない。その精神の汚さにある。こういう人物はバレなければ、いつまでも、どこまでもやる。美術品等の支出は知事の必要経費と言っているが、政治資金によって自らの資産を増やしたことにならないか。それを「当然だ」と強弁する神経は異常だ。

 海外出張では飛行機のファーストクラスを使い、滞在先のホテルも最高級を選ぶ。2015年度だけでも海外出張費は5686万円支出した。石原慎太郎元知事より出張1回につき、平均1千万円高いと言われている。

 本人は「一流ホテルに泊まらないと相手側にナメられる。都知事と言う格のしからしむるところだ」と言う。産経新聞が各知事にアンケートしたところ「1泊10万円超」を使っているのは東京都知事のみ。1泊あたりの宿泊費が最も高かったのは舛添氏で19万8000円(パリ・ロンドン)、次が福岡県の小川洋知事の8万8000円(ロンドンのデラックスルーム)。一方で千葉、埼玉、奈良など11県では条例に基づく上限額を超えないよう工夫し、1泊3万円程度に収めていた。1回の随行人数も舛添氏はケタ外れに多い。

 舛添氏のカネの使い方は成金か小役人根性の風情で、税金を納める都民の心情に対して慮りが全くない。仕事を創り出し、公金が使えるならやりたい放題、何をやってもいいと思っている卑しい人物だ。いかに出費を倹約して効果を出すかを考える気配はない。この種の人物に反省を求めても人格は変わらない。公金や税金はなるべく少しで済ますという謙虚さが全くない。根っから公人に向かない人物だ。

 福田赳夫氏は大蔵官僚から政治家に転じ、首相にまでなった人だが、引退するまで官僚時代に作った古家に住み、別荘を持たなかった。福田氏が病気退院した後、「別荘ぐらいもったらどうか」と勧めると「政治家は別荘など持つものではない」と言下に答えたものである。

 かつて士農工商の階層が存在した時代でも、武士は生産にも商売にも関係せず、支配しているのだから、最も質素でなければならないとされた。これが武士道の考え方だ。この考え方はやがて寺子屋を通じて庶民にも浸透。日本人のモラルを貫く哲学となった。世界に武士道を紹介したのは新渡戸稲造氏だが、日本人の道徳を律しているのは今も武士道なのである。

 最近、三菱自動車とか東芝とか、弛んではならない社会の主柱たるべき大会社の屋台骨が弛んでいる。これも武士道精神の衰退というべきだろう。衰退の責任者は社長であれ、都知事であれ、自らの失敗を潔く認めて退陣するのが日本社会の掟だ。

(平成28年5月18日付静岡新聞『論壇』より転載)

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