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GDP後も高い政策期待、「ヘリマネ」でも克服できない課題

[東京 18日 ロイター] - 日本の国内総生産(GDP)に力強さはみられず、市場の政策期待は高いままだ。しかし、いわゆる「ヘリコプターマネー」のような極端な政策であっても財政政策をめぐる諸問題を克服できるわけではない。大規模な財政資金を投入することで、経済を持続的な成長軌道に乗せることができるような有効な使途が、現時点では見当たらないためだ。

<財政出動には最高の環境>

財政出動するのに今は絶好の環境だ。マイナス金利による低金利環境の中で、国債は低利回りで発行できるうえ、発行した国債は日銀が買ってくれる。一番怖い金利上昇も日銀による国債大量買いによって防がれる可能性が大きい。

1─3月期実質GDPは年率1.7%増。予想よりやや強かったが、うるう年効果を除けば0.5%増程度。国内景気の足取りは弱い。サミットや参院選が近づくなか、日本は財政政策を含む景気対策を打ちだすとの期待が、市場では一段と高まっている。

「経済環境からみて、財政政策が今ほど強調されるべきときはない。デフレマインドの復活を防ぐためにも、財政出動するなら大きければ大きいほどいい」とJPモルガン・アセット・マネジメントの主席エコノミスト、榊原可人氏は話す。

消費増税見送りの判断次第で、財政出動の規模は決まるとみられているが「真水10兆円なら好感、8兆円で想定通り、それ以下なら失望だろう」(国内証券ストラテジスト)との声も出るなど、市場の期待値は日増しに高まっている。

<長期的効果に疑問>

規模次第では、短期的な景気押し上げ効果は大きくなるのは確かだ。GDP比1%の5兆円の2次補正を組んだ場合、公共投資が半分とすると、来年度のGDPを0.75%程度押し上げるとSMBC日興証券・チーフエコノミストの牧野潤一氏は試算する。

しかし、長期的な経済効果について、市場でも疑問を示す声が少なくない。「短期的な相場材料に使われるだけだろう。大規模な財政を出したからといって、日本が持続的な成長軌道に乗れると思っている市場参加者はほとんどいない」(米投信の運用担当者)と冷ややかだ。

「経済新生対策」、「日本新生新発展対策」、「日本経済再生に向けた緊急経済対策」──。日本政府はバブル崩壊以降、いく度となく景気対策を実施してきた。景気の落ち込みを防いだとの評価も可能だが、いずれの対策も日本経済を持続的な成長軌道に乗せるには至らず、国の債務は膨らんでいった。

足元の景気は弱いとはいえ、「リーマン・ショック級」の景気悪化が起きている、もしくは起きそうだとは言えない状況だ。「無理に財政出動すれば、使われない設備や道路などが増えるだけだ。経済にゆがみをもたらしかねない」と、りそな銀行・総合資金部チーフストラテジスト、高梨彰氏は警戒する。

<有望な資金使途という課題>

市場では、いわゆる「ヘリコプターマネー」政策を期待する声もある。「ヘリマネ」には、いろいろなパターンがあるが、金融緩和策の限界が意識される中で、中央銀行が財政政策の一部を担うことへの関心が高まっている。

法律上のハードルが取り払われ、財政出動に必要な資金を日銀が100%ファイナンスすることができるようになれば、国の財政状況が悪い中でも、大規模な財政出動が可能になり、しかも金利は抑えられる、というメリットがあるという。

しかし「ヘリマネ」は一種の財政政策というのが、マクロ政策に詳しい市場関係者の一致した見方だ。日銀がファイナンスしたとしても、「有望な資金使途」という財政政策をめぐる問題を克服できるわけではない。「中長期的な成長力を高めるような質の高い事業を盛り込めるとは思えない。ヘリマネをやれば必ず景気は良くなるとは言えない」とシティグループ証券・チーフエコノミストの村嶋帰一氏は指摘する。

かつての高度成長期には、公共投資の乗数効果が3年目で3倍近くになったとされるが、最近は1倍強。将来への不安から、公共投資によって増えた所得をわずかしか消費しなくなり、好循環が働きにくくなっているためだとみられている。

エコノミストの中では、日銀が銀行券をばらまいたとしても、将来の不安が消えない中では、そのお金の多くは消費に向かわずに貯められてしまうだろうとの見方も多い。

インド準備銀行(中央銀行)のラジャン総裁は今月10日、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで講演し「窓からお金をばらまいたりすることが多くの国で政治的に実行可能、もしくは経済的に望ましい効果を生むということは、必ずしも明確ではない」と指摘。そのうえで世界的に金融政策が解決策の一部というよりも、問題の一因になっているのではないかという問いが、発せられる必要があると述べている。

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