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子供にとってより良い教育とは? 寄宿塾「はじめ塾」を通して考える - 池上眞平

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共同生活で磨かれる周囲との関わり方

うらら:合宿中の食事づくりでは、寄宿してない塾生や後輩などの経験の浅い人に頼むより自分がやった方が早いと思う場面があります。しかしそこを我慢して、彼らに仕事を頼みかつ自分の能力の範囲でサポートする力を磨くのは、はじめ塾での大切な学びの一つだと思います。

 私の場合、食事づくりや作業はあまり得意でなくてイラスト描きが好きなので、チラシやパッケージの挿絵を頼まれることが多いです。指名されるのはけっこう自信につながりますね。

ふうた:塾生はまず「えり好みをせずに色々なことに挑戦する姿勢」を修得し、次に「自分の得手不得手を理解し、自分が今できるかどうかを判断する力」を磨くというステップを踏みます。私の場合、はじめ塾で自分はできることは自分でやるという力を身につけましたが、できないことはきちんと断るという能力をあまり磨けなかったように思います。また自分でできることを自分でやってしまい過ぎると、人に頼んだり人を使ったりすることが苦手になるのかもしれません。自分の能力に見合った指導の仕方を心がけて一歩一歩マネジメント能力を身につけていくのが良いと思います。例えば、言葉だけではなく紙に手順を書いたりして、少し手間がかかっても的確に指示する経験を積むのも良いのではないでしょうか。

あかり:試行錯誤すること自体が学びであって、結局は、食当が後輩に教えているのではなく、食当自身が教えられて一番学んでいるのだろうと思います。さらに食当には、自分の感情や体調と行動を完全に分けてコントロールする力も求められます。どんなに機嫌や体調が悪くても食事づくりは必要だし、自分の指示で動く人達に対して安定した態度でなければ信頼を得られません。このことは、食当に限らず共同生活という環境の中では大切な姿勢で、卒業した今でも一番意識しています。

うらら:自分のように適当に力を抜くタイプと、何事にもきちんとしているタイプとの間では、どうしても感情のぶつかり合いが起こりがちです。それは当事者だけの問題だと思っていましたが、実は取り巻いている周囲にも心配や迷惑をかけることになると気付くようになりました。周囲や相手との距離の取り方を今も学んでいます。

自分にとっての正宏先生と麻美先生

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夏期合宿でご飯を作る子供達。まだ小さな子も包丁を使う作業に挑戦

あかり:寄宿していた当時はこわかった印象が強くて、「先生」として見ていましたが、進路だけでなく何か悩んだ時に相談するのは正宏先生です。実の親には距離が近すぎて話せないことも話せて、卒業した今でも一番信頼できる大きな存在です。麻美先生からは料理のことを沢山教わりました。女性として直接的な人生の先輩です。お二人とも私にとって恩人です。

うらら:正宏先生は自分のことを良く理解した上で提案をしてくれます。私は、「自分はこう思う」と意見を言った後に自分で結論を出します。麻美先生は女性同士という面で話しやすく、「こうしたら」というアドバイスではなく「私はこうだったよ」という目線で話してくれます。3人のお子さんの話をすることも多く、麻美先生のような母親になりたいなぁと思っています。

なつみ:私はまだ自分の考えを口にするタイミングがわからないので、正宏先生から注意されると、理解されていないと感じることがあって心の中でイライラする時もあります。でも注意されるからこそ自分が成長できると思えるようになりました。私にとってもお二人が「育ての親」だと感じ始めているところです。

ふうた:寄宿し始めた頃は、僕も正宏先生の考え方を理解できないために「一方的に怒られた」と感じることもありました。でも相手に自分の考えをどう伝えて説得するかが大切だと気付いてから、この反発は解消していきました。相手との人間関係や感情的な面に左右されるのではなく、中身の本質を的確に捉えて論理的に自分の意図を伝えることが大切だと気付きました。

ひろじ:正宏先生の話は長くて内容があちこち飛ぶので、聞いていて煩わしい時もあります(笑)。でも、脱走した僕を小田原から東京まで車を飛ばして迎えにきてくれたのも正宏先生だし、不登校だった僕が登校できるように何度も中学校の先生と話し合ってくれたのも正宏先生だし、来年の受験の相談を親身に聞いてくれるのも正宏先生で、やっぱり頼りにしている存在です。

ふうた:僕にとっても「第二の親」というような存在ですね。ふつう本気でアドバイスをくれる人って“親”しかいないと思います。学校の先生や友達のアドバイスがちょっとした思いつきだと感じることが、よくあります。しかし正宏先生は、本気でその当人のためだけを考えてアドバイスをくれます。現代では珍しい教育者だと思いますね、本当にありがたい存在です!

あとがき

 寄宿生活や合宿を通して、子供達が互いに学んだり気付いたりする様子が浮彫りになった座談会だったと感じました。

 座談会で語られた「寄宿生になったきっかけ」、「ふうたくんによる高校卒業後の進路選択」から読み取れる親子の関係および「自分にとって正宏先生と麻美先生、はじめ塾はどういう存在か」やその他の箇所で読み取れる塾長夫妻と子供達の関係から、「子供を信じる」、「子供が自ら気付き行動を起こすのを待つ」、「子供の個性を尊重する」という親や先生を含む大人達の気持ちの交点が、「教育の原点」だと改めて痛感しました。また大人達が子供から多くを学べるという気持ちを持って子供との時間を共有すると、大人達も子供達と一緒に成長できることも再認識しました。

 測り知れない可能性を秘めた子供達から元気を貰いました。

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