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米国は中国の「いじめっ子」姿勢を正せ - 岡崎研究所

 マケイン米上院軍事委員会委員長が、4月12日付の英フィナンシャル・タイムズ紙に、「南シナ海において米国は象徴的なジェスチャー以上のことをする必要がある」との論説を寄せ、しっかりした対応をすべきであると論じています。マケイン上院議員の論旨は、次の通りです。

対中抑止失敗招いたオバマのリスク回避姿勢

 ハリス太平洋軍司令官は、上院公聴会で中国の戦略的目的について聞かれ、「中国は東アジアで覇権を追求している。中国は南シナ海を軍事化している。そう考えないのは地球が平面と考えるようなものである」と答えた。

 オバマ政権は埋め立て、軍事化、強制に反対する、3つの「No」を言っているが、中国はそれを継続している。オバマ政権のリスク回避の姿勢が、中国の海上覇権を抑止するのに失敗し、米国の同盟国やパートナーを心配させている。

 6月初め、常設仲裁裁判所は南シナ海での中国の主張についてのフィリピンの提訴について、判決が予定されている。不利な判決の可能性に直面して、中国は既得利益の確保や拡大のために新たな措置を追求しかねない。戦略的に重要なスカボロー礁での埋め立てや軍事化、紛争地域からの他国の追い出し、防空識別圏宣言などが考えられる。

 米国はこれに対応して新しい政策を考慮する必要がある。今月、フィリピンとバリカタン軍事演習があるが、これに空母打撃部隊を派遣し、スカボロー礁の水域を監視するのを考えるべきである。カーター国防長官は、米比両国が条約上の同盟国であることを強調すべきである。フィリピンやその他の同盟国と共に、国際法違反の中国の行動に対抗する戦略を共同策定すべきである。

 もし中国が南シナ海防空識別圏を宣言すれば、ただちにその地域に軍用機を、飛行計画提出、事前通報、周波数登録なしに、飛行させるべきである。

 加えて米国はしっかりとした「自由航行作戦」を実施し、中国の海洋主権主張に挑戦すべきである。共同の監視や演習、情報収集活動も拡大・継続されるべきである。

 当該地域は、軍事バランスが変化しており、米国は地域での軍事力強化を目指すべきである。追加的な空軍、海軍、地上軍の前進配備をすべきである。

 ここ数年、中国はアジア・太平洋地域で、規則に基づく秩序の「責任ある利害関係者」ではなく、「いじめっ子」のように振る舞ってきた。米国は挑戦の規模とスピードに適応できていない。米国は、南シナ海での中国の海洋覇権に対し、決意を持った対応を示し、同盟国を安心させるべきである。

出 典:John McCain ‘America needs more than symbolic gestures in the South China Sea’(Financial Times, April 12, 2016)
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/69f9459e-fff4-11e5-99cb-83242733f755.html#axzz45ccaSNVR

*   *   *

将来にかえって禍根残す対中宥和政策

 この論説で示されたマケインの主張は、適切だと思います。

 中国は、ハリス司令官が言うように、東アジアでの覇権を追求しています。中国の「平和的台頭」の主張を信じる人はもういないでしょう。中国の脅威を言い立てると、その予言が自己充足し脅威になるという一部識者のまことしやかな説は、怪しげな政策論と情勢判断を混同した虚偽に近い詭弁であったことが、今は大方の人に明らかになったでしょう。マケインは現在、上院軍事委員会委員長であり、彼の意見はワシントンでそれなりの影響力があります。それに、習近平総書記は、オバマ大統領に対して南シナ海の軍事化はないと言った後、軍事化を進め、今回の核サミットでも南シナ海は中国の核心的利益というなど、オバマ大統領の要望をすげなく退けています。オバマ大統領としても、中国を刺激しない方がよいとはもう言えないのではないでしょうか。

 かつては、中国は脅威であると言うと、そういう発言はするなと制止されました。今では、中国の東・南シナ海での国際法無視の行動によって、やっと中国脅威論が当然のことのように言われるようになりました。物事を正確に認識、表現できるようになった点は歓迎すべきことです。情勢認識の点では、中国のおかげで良くなったと言えます。

 後は、この脅威にどういう政策で対応するかです。マケインの主張している点は適切ですが、米国の国防費も削減されており、どこまでできるか、やる気があるかはよくわかりません。しかし、米国の政策の方向が、マケインの言う方向をとるのは歓迎です。

 宥和政策と強硬政策を比べると、今、対中宥和策を行うのは将来に禍根を残すように思われます。こちらがまだ有利な時に、決意をもって対応しておくことが正解でしょう。

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