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社会人の辞書に"不可能"はない

 この頃ですと三菱自動車の燃費偽装が話題ですが、少し遡れば東芝の不正会計なんかもあるわけです。そしてこのブログにも過去に書きましたが、私の勤務先でもカラ受注なんかは横行しておりまして、まぁヨソの国は知りませんが日本の会社なら多かれ少なかれどこでも見られることなのかな、という気がします。会社の偉い人の求めるままに実態からかけ離れた都合の良い報告をする、ってのはコミュニケーション能力によって選別された日本のサラリーマンにとっては当たり前の行動なのかも知れません。

 かのナポレオンは「"不可能"とはフランス語ではない」みたいに語ったそうで、これが「我が輩の辞書には~」と訳されて日本に普及しているのはよく知られていることですが、むしろ日本の場合こそどうでしょう? 「"不可能"とは社会人の使う言葉ではない」ぐらいに考えられている気がします。実際、会社で高く評価されている人はおろか下っ端でもマトモに就職できている人、非正規でも会社に完全になじんでいる人は決して「無理です、不可能です」とは口にしませんから。

 ……で、その結果が三菱自動車であり、東芝でもあると言えます。私の勤務先でも会社の偉い人が毎月、全国の営業拠点長に「どうして(予算を)達成できないんだ!」と電話会議で詰問しているわけです。もちろん各拠点で事情はありますし計画通りに受注が取れるとは限らない、それは当たり前のことです。しかし、会社で偉くなるような人の辞書に「不可能」はありません。なんだかんだ言って結局は「(予算達成)できます」と全国の拠点長が宣言し、それに基づいた事業計画が立てられて終わるのです。

 言うまでもなく予算目標が事前の宣言通りに達成されることはなく、蓋を開けてみた結果は当初の目論見からは大きくかけ離れた低い実績でしか出てこなかったりします。そんな結果があらわになって初めて「なぜ見込みと実績にここまで差があるのか」を分析すべく役員層からの厳命が飛び交い、本社の管理部署では上へ下への大騒ぎを繰り広げていたりするのですが――いやはや馬鹿の相手は仕事とはいえ疲れますね。

 私なんかは事前に不可能であることが分かっていれば「それは無理です」と適切に現実を伝えてしまうわけです。だから自分はまともに就職できないし会社でも孤立しがちなんだろうなと思うところですけれど、結局のところ実務に携わっている人間が最も正しく実態を把握しているもので、そこから上がってくる報告が歪められてしまえば将来の予測もおぼつかないのではないでしょうか。「やります」「できます」と言わせることは簡単なのかも知れませんが、実際にできるかどうかは別問題なのですから。

 気象予報士に「晴れ」の予報を出すことを強要することはできますが、翌日の天気を晴れにすることができるわけではありません。むしろ「雨」の予報を受け入れていれば、まだしも対策は取れるというものです。社員が正しく「そんな都合良くは行きません」「我が社では開発できません」「状況は厳しいです」と現状を報告し、偉い人がそれを受け入れることができれば最低でも「備え」ができます。しかし偉い人が望むがままに都合の良い報告を上げる/上げさせるのが当たり前になった会社にできるのは夢を見ることだけです。夢の中では燃費が他社を上回っている、利益は上がっている、計画通りに受注できているのかも知れません。しかし夢はいつか醒めるのです。

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