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中央銀行頼みの一本足打法

きょうで日銀のマイナス金利政策の導入から3か月。世界的に中央銀行の役割問われていますね。そんな中、「不本意ながら唯一の選択肢」とでも訳すのでしょうか、"The Only Game in Town" を読みました。

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副題はCentral Banks, Instability, and Avoiding the Next Collapse(中央銀行、金融不安、そして次の金融危機を回避するために)です。

今や多くの国で景気刺激策をとっているのは中央銀行だけで、その一本足打法で大丈夫ですか?持続可能じゃないですよね?という内容です。

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(WSJより)

著者は著書「市場の変相」や「ニューノーマル(低成長、非伝統的な金融政策、大きな政府が常態化、政治の機能不全)」という言葉で知られるMohamed El-Erianです(今はAlliantz顧問)。おもしろかった!

3月に首相官邸を訪れたPaul Krugmanも日本やユーロ圏を念頭に「金融政策が唯一の選択肢となってきた(monetary policy has been the only game in town)」と指摘しました。(3)の指摘です。 http://blog.livedoor.jp/kaoriiida/archives/57675857.html

  エラリアンの問題意識はこんな感じです。

いま世界経済は、T字路にさしかかっている。▼片方の道の先には、多くの人たちが豊かになり、金融不安のリスクが低く、格差が是正される社会が待っている。▼もう片方の道の先には、経済の低成長、失業率の高止まり、格差がいっそう拡大した社会が待っている。

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その中で、かつては面白みがなく地味な存在だった中央銀行が今や主要な、そして多くの場合、唯一の政策決定機関となった  (These once-staid, unexciting institutions have emerged as the majorand often sole policymakers)。

目立たない機関から、唯一の選択肢へと誰もが予期せぬ変貌を遂げた中央銀行を理解することで、いま世界に起きているより大きな変化が見えてくる(Understanding the unplanned and, for them and many others,uncomfortable conversion of central banks from largely invisible institutions to the only game in town, provides us with a unique perspective on the much larger changes impacting our world)ということでこの本を書いたそうです。  

将来の金融政策の出口という難しい課題を後回しにするのと引き換えに、目の前の景気刺激を追い求めている、と危機感を強めています(warning about the "trade-off" between more stimulus today at the expense of a more challenging and disruptive policy in the future)。

解決方法としては、何と言っても政治のリーダーシップを求めています。政治の機能不全の解消で▼財政支出とか、▼ineqaliity trifecta=3つの格差(所得、資産、機会)の縮小とか。

中央銀行は時間稼ぎのために緩和をしてきたが、中央銀行が引き続きthe only game in townだと、解決の担い手から問題そのものになってしまうと危機感を募らせます。

よくも悪くも、「日本」が頻繁に登場します(「失われた20年」とか、バブル崩壊後の課題を十分に理解しなったとして2011年に日本に謝罪するべきだと訴えた、とか)。そして、日本への示唆も多いです。

タイトルとなったonly game in townという表現は2014年11月にフランス中央銀行のノワイエ総裁の発言 から。central banks have been considered the only game in town とした上で、the very high expectations placed on them (might) backfireと疑問を呈しました。IMFもonly game in townという表現を用いています。

https://blog-imfdirect.imf.org/2016/04/10/the-broader-view-the-positive-effects-of-negative-nominal-interest-rates/

常に「難しいことを難しく伝えることは簡単だけど、難しいことを簡単に伝えることがいかに難しいか」を痛感している身としては、エラリアン氏の比喩の使い方などは勉強になりました。

1989年のラブコメ映画「恋人たちの予感」の中のSally(メグ・ライヤン)とHarry(ビリー・クリスタル)の会話とか。

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へ〜、おもしろそうだけど、読む時間はないという方は、エラリアン氏が登場した米公共ラジオ NPR がオススメです。

http://onpoint.wbur.org/2016/02/16/economic-market-crash-prediction

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(FTより)

アメリカ生まれ、エジプト育ちで、IMF=国際通貨基金、 PIMCO のCEO を経て今のポジションに就いた彼の英語は「誰かに伝えたい」という力強さがあり、分かりやすいです。

出版がことし1月26日で"トランプ旋風"や日銀のマイナス金利導入は反映されていません。いま、お会いしていろんなお話を聞いてみたい!

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