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日産はいかに三菱自スキャンダルに乗じられるか

資本業務提携で電気自動車などに利点

日産自動車と三菱自動車は東南アジアで協力が可能だ。グラフは日本を除くアジアでの三菱自の売上高(単位:十億円)
日産自動車と三菱自動車は東南アジアで協力が可能だ。グラフは日本を除くアジアでの三菱自の売上高(単位:十億円)

By ABHEEK BHATTACHARYA

 三菱自動車は、今日の日本の自動車業界のなかで最も窮地に陥った「囚われの姫君」だ。白馬の騎士がやって来てくれるなら何だってするだろう。このため、日産自動車はあまり大きなリスクを抱えることはなく、しかも自分の騎士道精神は確実に報われる可能性がある。

 日産は12日、三菱自の株式34%を22億ドル(2370億円)で取得すると発表した。三菱自は先月、日産に供給していた軽自動車を含む燃費試験でデータを不正操作していたことを認めていた。三菱自の株主が日産との提携合意に安堵(あんど)したのは当然だ。実際、三菱自の株価はスキャンダル発覚以降43%落ち込んでいたが、12日には一気に16%反発した。

 日産にとって、三菱自をめぐる一番重要な問題はこのスキャンダルがさらに拡大するかどうかだ。日産はこの点で自衛策を講じた。提携は「重大な悪影響」をもたらすものが一切ないことを特別調査委員会が確認した時にのみ完了する、との合意条件が基本合意書に盛り込まれたのだ。

 つまり、調査担当者たちが年内に予定される提携の完了前に新しい不正の事実を突き止めた場合、日産は提携から手を引くか、提携内容を変更できる。また、事情に詳しい関係者によれば、日産は日産ブランドで販売された三菱自の乗用車に関して、三菱自への損害賠償請求を継続するつもりだ。

 一方、日産は三菱自の支配株主になって会長を指名するなかで、三菱自の戦略を練っていくだろう。この提携の一つの柱は、新技術となるはずだ。これは両社いずれもが重点的に投資を行ってきた分野だ。

 また、巨額の資金が吸い込まれる分野でもある。このため、研究・開発(R&D)を統合するのは理にかなっている。日産が進出している電気自動車も、日本で好調な三菱自のプラグインハイブリッド版「アウトランダー」を補完できる。

 両社はまた、東南アジアで協力することが可能だ。調査会社LMCオートモーティブのデータによれば、両社はいずれもこの地域の同じ国々で販売しており、似たような市場シェアを持っている。このため、両社は互いに競争するのをやめ、互いの流通チャンネルを活用するようになるかもしれない。

 東南アジアはまた、三菱自にとって最大の単一地域市場であり、インドと並んで、世界の乗用車メーカーが向こう10年間にわたって浸透しようと目指す次の大市場だ。目先の困難がどんなものであろうと、この市場にさらに食い込むのは日産にとって大きな意義がある。

 もっと重要なのは、この地域がすでに大きな利益をもたらしていることだ。三菱自のアジア(北アジアを含む)の営業利益率は15.5%に上る。北米の2%とは対照的だ。一方で3月に終わった前年度の日産の全体的な営業利益率はわずか6.5%だった。

 さらに日産は、軽自動車の活力ある売り手として三菱自を温存することを選ぶかもしれない。それは自社へのサプライヤーとしてだけでなく、この分野でライバルであるトヨタ自動車の子会社ダイハツ工業にこれ以上大きな市場シェアを獲得させないようにするためだ。提携にはこうした長所があり、日産はその弱点を克服しようとしている。日産の株主たちは喜ぶべきなのだ。

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