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なぜ女子高生は「早く18歳になりたい」と言ったのか

ジャーナリスト 山田厚俊=文

若者を襲う想像を絶する貧困

昨年、流行語大賞にもノミネートされた「下流老人」。その言葉を生み出した著者が今春、上梓したのが本書だ。

ブラックバイトでこき使われ、学ぶ時間さえない学生たち。社会に出た途端、奨学金の返済に苦しみ、結婚など夢のまた夢。いや、リスクでしかないという。そうやって、給与も上がらず過重労働を強いられながら家族を養ったり、独身のまま過ごしたりして年を重ねる。やがて、貯蓄もなく年金だけに頼る生活は、生活保護に陥る“下流老人”への道しか見えてこない。つまり、若者の貧困も、現役世代の生活苦も、仕事を失い年金だけに頼る下流老人も、それぞれが点ではなく、「一本の線」で繋がっていることに気付く。

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『貧困世代』藤田孝典著 講談社現代新書

著者は、10年以上生活困窮者の支援活動を行ってきた。今も年間500人以上の人たちが著者の下を訪れ、支援を願い出ているという。そんな実践の中、具体的な事例を挙げ、今の社会の問題点を浮かび上がらせているのが、本書なのである。

たとえば、夜間定時制高校に通う女性(17歳)は昼間、アルバイトをしている食品加工工場での給与が9万円程度だという。バイト先の社長名義で借りているワンルームマンションの家賃は5万円。生活さえままならない中、著者に語った台詞が「早く18歳になりたい。風俗店で働けるようになるから、お金に困ることもなくなるでしょう? 風俗店で働いたら、専門学校にも行けるかもしれないし」。

また、「脱法ハウス」で暮らす男性(24歳)、ブラック企業でうつ病を患った男性(27歳)、生活保護を受けている女性(34歳)、所持金13円で野宿していた男性(21歳)などの事例が紹介されている。想像を絶する貧困が、若者たちを襲っているのだ。

なぜ貧困問題は見える化できないのか

著者はこの問題に、次のような疑問を投げかける。

<若者たちの支援活動を行っていると、決まって言われることがある。「怠けているだけではないのか?」「支援を行うことで、本人の甘えを助長してしまうのではないか?」などである。要するに、“若者への支援は本当に必要なのか?”という疑念である。これは若者たちの置かれている現状の厳しさが、いまだに多くの人の間で共有されていないことを端的に表している。>

働けば何とかなる。努力した者が報われる。高度経済成長以降、誰もが経験し、得てきた教えである。しかし、バブル崩壊後、その“神話”も崩壊している。また、家族が支えてくれるというのも神話化した話だ。要は、終身雇用制の中、社宅を完備し、家族や地域が守ってきた社会構造は今や跡形もなくなっているといっていい。その神話に守られて、高額な年金を得て悠々自適の暮らしを送っている人たちは、何も分かっていないというのだ。

また、著者は個人の責任論にすることにも反論する。たとえば、生活保護は個人のだらしない生活に起因するものであり、個人で何とかするものだという風潮がある。しかし、社会構造を変えないかぎり、どうしようもないのだと言う。

確かに、「自助」「共助」「公助」の中で、今の日本に一番欠けているものは「公助」の部分だ。基本的に、自助と共助で乗り切ってきた社会が破たんしているといっていい。まずは国民一人ひとりの意識を変えていかないかぎり、この問題は解決しないのかもしれない。もやもやしていた現代社会の病巣が、“見える化”されたといっていい本である。

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