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世界一の電気自動車大国になった中国 EVが次世代自動車の主役になるのか? - 山本隆三

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日本ではハイブリッド車の人気に隠れてあまり目立たない電気自動車(EV)だが、欧米、中国ではハイブリッドよりもEVとプラグインハイブリッド(PHV)に人気がある。その背景にはEVとPHV購入への政府による支援政策がある。 

 米国で大きな受注数が話題になったテスラ・モーターズの新型EV「モデル3」だが、政策による補助金支給も人気の理由の一つだろう。カリフォルニア州では3万5000ドル(約380万円)のモデル3に、国と州を合わせて1万ドル(107万円)もの助成が受けられる。欧米諸国の政策支援の目的は気候変動を引き起こす二酸化炭素(CO2)排出量の抑制だ。中国政府の目的はPM2.5による大気汚染対策だ。

 米国だけではなく、他国でも同様の政策がある。ドイツでは購入支援のため大きな補助金が導入された。オランダは2025年からガソリン、ディーゼル車の販売を禁止する法案を検討中だ。中国では中央政府と地方政府の補助金に加え、都市部では高倍率の抽選に当たらなければ取得できないナンバープレートが、EVとPHVには優先的に与えられることもある。

 このため、欧米、中国ではEVの販売は伸びている。中国は2015年には世界最大のEV市場になり、世界のEV生産の3分の1を担う世界最大の生産国になった。急速に成長した中国のEV市場では補助金詐欺による台数の上乗せもあった。

中国では補助金詐欺も

 中国ではEV/PHV、燃料電池車は新エネルギー車(新エネ車)と呼ばれ、購入に際しては大きな補助金が支出されている。中央政府によるものだけでも最大5万5000元(93万円)。さらに多くの地方政府が追加の補助金を支出している。補助金だけではなく、大都市では抽選によるために入手が難しいナンバープレートが優先的に割り当てられる、あるいは登録税が軽減されるなどの支援策も導入されている。

 例えば、北京市では2014年に小型車には13万枚のナンバープレートが割り当てられ、抽選倍率は100倍を超えていたが、2万枚が割り当てられた新エネ車のナンバープレートには余りがあった。新エネ車購入が登録上は有利だが、充電場所の問題もあり、誰でもEV/PHVを購入できるわけではない。北京市ではナンバープレート目当てにPHVを購入したものの、結局ガソリン車として利用することを防ぐためにPHVを新エネ車の対象外にしている。

 政策支援により、中国では2015年のEV/PHV乗用車の販売が前年比233%増の18万8700台になり、11万6000台の米国を抜き世界一になった。EVバスなどを含めると33万台以上の販売だ。しかし、この販売数には補助金だけを目的にしたものが含まれている。EVメーカーが自社系列のリース会社などに車を販売したことにし、リース会社が補助金を受け取る方法だ。実際には車が販売されていないケースが地方ではかなりあると言われ、中央政府が調査を行っている。

 中国政府は2020年に新エネ車の目標を500万台にするとの目標を立てているが、補助金を徐々に削減し2021年以降は廃止する予定だ。補助金の予算額を新技術の研究、開発支援に振替るとしている。中国で販売されているEVの40%は2人乗りの3メートル以下の小型車とされているが、普通車で力をつけて来ている企業も出てきており、中国政府の支援がさらに競争力の強化につながると考えられる。

世界最大の市場になった中国

 詐欺があったものの、中国市場は世界最大のEV/PHV市場になった。生産メーカーの国別シェアでも、中国が33%になり、世界一になった。図の通りだ。中国では第2のテスラを目指すEVベンチャー企業だけでも10社以上あると言われ、製造が比較的簡単なEVの製造業者が筍のように出てきている。

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 そんななかで、力を付けているメーカーも出てきた。昨年6万2000台を販売した最大メーカーBYD(比亜迪汽車)は南米などに続き、豪州への輸出を開始すると発表した。輸出されるE6モデルは、タクシー主体に利用される予定だが、価格は8万豪ドル(640万円)と報道されている(注:中国での販売価格より60%以上高いので特別仕様車の可能性が高い)。

 中国メーカーは技術力を付けるため技術者の引き抜きも行っている。BMW社にて、iシリーズのEV開発に携わっていた複数のエンジニアが辞職し、中国最大のインターネット関連企業テンセントが後押しするベンチャーEV企業、フユーチャ・モビリティーに移籍すると報道されている。また、テスラの製造担当副社長と生産担当副社長の辞任も報道されている。去就は未定とのことだが、中国メーカーに移籍する可能性もあるのかもしれない。

 日産自動車のゴーンCEOは、同社のリーフが中国市場では思ったほど売れないことに触れ、中国のEV製造コストは25%安いが、リーフと同じ航続距離を達成できるとコメントしている。世界の自動車、環境政策の展開次第では、中国メーカーが急速に世界市場に進出してくる可能性もある。

 モデル3が米国で人気のテスラも、なぜか中国市場では苦戦している。「対生物兵器モード」と呼ばれる特殊なエアーフィルターをテスラのモデルは備え、大気汚染のひどい中国では車内の空気が外よりも800倍綺麗になるとアピールしているが、それでも中国では売れていない。

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