- 2016年05月13日 12:13
予測不可能を好むトランプの副大統領候補は? - 海野素央
1/2今回のテーマは、「トランプの副大統領候補」です。不動産王ドナルド・トランプ候補は、中西部インディアナ州でテッド・クルーズ上院議員(共和党・テキサス州)をノックアウトし、撤退に追い込みました。しかも、ジョン・ケーシックオハイオ州知事も撤退表明をしたため、トランプ候補は共和党候補指名獲得を確実にしたのです。
ラインス・プリーバス共和党委員長は、2013年3月ワシントンで演説を行い、12年米大統領選挙の敗北を分析し、少数派、ことにヒスパニック系の票の獲得が16年の選挙の勝敗を左右する重要な要因の1つになると結論づけています。ところが、ヒスパニック系を排斥する政策で支持を得たトランプ候補の勝利は、同委員長が描いたシナリオとはまったく異なった方向へ共和党候補指名争いが進んでしまったことを意味しています。それでも、同委員長はインディアナ州における指名争いの結果が出ると、ツイッターで「トランプ候補が指名獲得をするだろう」とコメントし、ヒラリー・クリントン候補を破るために党の結束を図る必要があると呼びかけました。
指名獲得を確実にしたトランプ候補ですが、反トランプの主流派からの抵抗が強いため、党の統一が最優先課題になっています。同候補がその課題を果たすには、「副大統領候補のカード」を効果的に切ることが欠かせません。
そこで、本稿ではトランプ候補の副大統領候補を中心に述べていきます。
トランプ候補の副大統領候補
トランプ候補の副大統領候補は、激戦州、女性、ヒスパニック系及び政治的経験の4つのカテゴリーに分類できます。ただ、各候補の中には、カテゴリーが重複する候補も存在します(図表1)。
画像を見る米メディアによりますと、激戦州ではケーシックオハイオ州知事とリック・スコットフロリダ州知事が挙がっています。1960年の大統領選挙以来、オハイオ州を制した候補が大統領に就任していると言われるほど、同州は激戦州の中で極めて重要な地位を占めているのです。しかも、共和党は夏の全国党大会の開催地を、民主党の地盤である同州北東部クリーブランドにしました。トランプ候補及び共和党幹部にとってケーシック知事の力は、大会成功のための必須となっています。
一方、フロリダ州も重要な激戦州です。米メディアの中には、本選で民主党は過半数の選挙人270に対して、すでに242まで獲得が可能であり、フロリダ州の選挙人29を獲得できれば、271となり過半数を超えることができると分析するメディアもあります。それを阻止するために、トランプ候補は本選で第2の故郷と呼ぶフロリダ州での勝利が欠かせません。
イメージアップのための女性候補
次に女性候補をみていきましょう。女性蔑視の発言を繰り返してきたトランプ候補は、女性有権者に対してイメージアップをする必要があります。
まず注目されるのが、スサナ・マティネスニューメキシコ州知事です。マティネス知事は、女性、ヒスパニック系、激戦州の3点を備えています。同知事の副大統領候補選定には、トランプ候補が移民政策においてタカ派で、異なった人種や民族を嫌悪しているというイメージを弱めるメリットがあります。トランプ候補の弱点である女性票及びヒスパニック票の双方を獲得できるというメリットも生まれます。
米メディアの間では、マーシャ・ブラックバーン下院議員(共和党・テネシー州)の名前も挙がっています。ブラックバーン下院議員は、下院エネルギー商業委員会の副委員長を務めています。同下院議員は、女性に低価格で医療サービスを提供する非営利団体「プランド・ペアレントフッド」が、胎児の細胞を不正に販売していたという疑惑に関する調査の急先鋒に立っています。
筆者が活動をしていたミシガン州デトロイトにあったクリントン選対では、プランド・ペアレントフッドのスタッフが会員に対して、クリントン支持要請の電話を連日入れていました。クリントン候補とプランド・ペアレントフッドの関係が密であることが窺われます。共和党は、プランド・ペアレントフッドを選挙戦における攻撃材料として活用していることは明らかです。その中心的な役割を担っているのが、ブラックバーン下院議員なのです。
もう一人、トランプ候補の副大統領候補としてメディアが取り挙げている女性知事を紹介しましょう。ニッキー・ヘイリーサウスカロライナ州知事です。同知事は、インド系の女性で反オバマ色の強い保守系市民団体「ティーパーティー」の支持を得ています。テレビ映りも抜群で、今年行われたオバマ大統領の一般教書に対して共和党を代表して反対演説を行っています。
ただ、サウスカロライナ州共和党候補指名争いで、ヘイリー知事はマルコ・ルビオ上院議員(共和党・フロリダ州)を支持し、選挙期間中行動を共にしました。トランプ候補が、ヘイリー知事を副大統領候補に希望する場合、同知事を説得できるのかが注目点になってきます。
ヒスパニックと政治経験
次に、ヒスパニック系に移ります。トランプ候補と共和党候補指名争いを戦ったルビオ上院議員の名前が挙がっています。同上院議員は、ヒスパニック系であり激戦州フロリダ州を地盤にしています。ルビオ上院議員は次の選挙に出馬しないので、副大統領候補に関心があるという見方があります。ただ、フロリダ州共和党候補指名争いで、トランプ候補はルビオ上院議員に18・7ポイント差で勝利を収めているので、同上院議員の力を借りずに本選でクリントン候補に対して勝算があると捉えている可能性は否定できません。
4つ目のカテゴリーである政治的経験についても説明をしましょう。トランプ候補は、副大統領候補の条件に政治的経験、ことに行政経験を挙げています。クリス・クリスティニュージャージー州知事は、撤退後、党主流派の中で即座にトランプ候補支持を表明しました。『トランプの変化とクリントンの苦悩』で説明しましたように、従来の激戦州に加えて、トランプ候補はミシガン州、ペンシルべニア州、ニューヨーク州及びニュージャージー州を奪還する意思を示しています。従って、トランプ候補が他の激戦州と比較して相対的に見た場合、ニュージャージー州にどの程度の価値を置くのかが、クリスティ知事の副大統領候補選定と絡んでくるでしょう。クリスティ知事に加えて、政治的経験が最も豊かであるニュート・ギングリッチ元下院議長の名前も挙がっています。
さて、共和党候補指名争いを戦い、撤退後即座にトランプ候補に対して支持表明をした元脳神経外科医ベン・カーソン氏も、副大統領候補の1人として名前が挙がっています。しかし、カーソン氏は、副大統領候補選定の調査チームに入るので、同氏が指名を受ける可能性は低いかもしれません。
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