- 2016年05月13日 10:00
なぜ他の人ばかり、相談事が集まるか
相談の裏にある「心」の問題
あるとき、部下から「仕事上のミスでクレームが入っている」と相談されたとしよう。それに対しあなたは「これまでのやりとりは確認したか?」「まずは直接謝罪したらどうだ?」など対処法をアドバイスする――。これは一見、ごく普通の対応に思える。しかし実は、部下の悩みが深く、自信を失って落ち込んでいるのだとしたら、部下を逆に追いつめ、傷つけてしまう。部下の相談の裏に、心の問題が隠れているケースが多いからだ。
リンク先を見る相手の心はどちらの状態か?
ビジネスの世界で成果主義が広がりつつある今、我先に争って獲物を狩る競争ごとに慣れていない日本人の多くは、仕事の場において多大な心理的負担を感じている。その結果、ストレスで心を病む人の数も増えているため、相談を受ける側は、相談者の心理状態に常に配慮する必要が生じているのだ。
冒頭の例のように、ストレスで弱っている部下の悩みに対して問題解決策を提示したら、部下の心理はどうなるか。部下は、「君はやるべきことができていない」「こんなアイデアも思いつかないのか」と責められていると受け取り、モチベーションを失ってしまうのだ。部下を支援してあげようとアドバイスしたにもかかわらず、問題解決に至らないばかりか、部下から「あの人に相談しても落ち込むだけ」と苦手意識を持たれてしまうというのは、実に残念すぎるではないか。
「相談を受ける」という行為は、人と人が信頼関係を築くうえで重要な役割を担っている。相手が相談によって前向きな気持ちになれれば、信頼する人と共に働けることに喜びを感じ、遺憾なく力を発揮するに違いない。部下からの相談は部下と信頼関係を築く絶好の機会だ。あなたがうまく相談に答えれば、あなたに付いてくる「子分」が増えて人望も高まるという展開につながるはずだ。
ではどうすれば相談受けが上手になれるのか。その具体的な方法をお教えしよう。深い悩みの相談にはまず「30分、徹底的に相手の話を聞く」ことをしていただきたい。しかし、試してみるとわかるのだが、これが実に難しい。なぜなら私たちにはすでに、アドバイスしたり自分の意見を言うという“支援者癖”がついてしまっているからだ。
この癖を抑えて話を聞くための、2つのコツをお教えしよう。まず1つ目は「うなずき」。相手の話に合わせて小さく(“興味津々”のメッセージ)、時折大きくのみ込むようにゆっくり首を縦に振る(“納得”のメッセージ)のがポイントだ。2つ目は「要約・質問」。話を聞いているうちに自然と疑問が湧いてきたら、質問してもかまわない。ただし必ず相手がこれまで何を言ったのか繰り返し(要約)、それから質問をすること。「~だったんだね。それからどうなった?」と時折挟むと、“しっかり聞いている”というメッセージを送ることができる。30分これを続ければ、相談者はあなたを味方と認識するだろう。
この状態でのアドバイスは、驚くほど相手の思考を働かせ、問題解決に向かうパワーをよみがえらせる。ちなみにアドバイスする際は「私だったら、~するな。君はどう?」と「アドバイス+どう?」の形で、10秒以内に収めるとより効果的だ。
以上のように、30分話を聞く+アドバイスで、トータル1時間は相談者と向き合うことをお勧めしたい。多忙な中で相談にこれだけの時間を取るのは非効率だと感じるだろうか。しかし相手との信頼関係を失うのと、どちらが建設的だろう。とにかく、日々少しずつでも試してほしい。きっとその効果に、コストパフォーマンスのよさを納得してもらえるに違いない。
画像を見る 心理カウンセラー 下園壮太(しもぞの・そうた)1959年、鹿児島県生まれ。防衛大学校卒業後、陸上自衛隊入隊。陸上自衛隊初の「心理幹部」として多くのカウンセリングを手がける。著書に『1時間で相手を勇気づける方法』(講談社)などがある。
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