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[本]【読書感想】訒小平 ☆☆☆☆

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 その一方で、訒小平は、晩年、「天安門事件」という歴史的な汚点を残すことになります。

 1989年、胡耀邦・元総書記の死去を契機に、民主化を要求した学生たちが天安門で座り込みを行いました。

 同年6月4日、その学生たちに軍隊が発砲、200人以上の死者が出ました(海外の推計では、その10倍とも言われているそうです)。

ヴォーゲル:あとひとつ、大事な疑問は、ある中国の友だちの言い方なんですが、訒小平はどうして、「ひとを少し殺してもいい」と思ったのか。

 たぶん訒小平は、当時の中国の政治の状況をみて、こう思った。指導者が強くないと、ちょっとでも弱みを見せると、人びとは勝手に行動するようになる。それを統制し、安定した政治を進めるために、指導者は、強さを誇示しなければならない。弱みを見せては危ない、と。

 86年に、訒小平は経済改革と並んで、政治改革も進めるよう党内で研究をさせていたのですが、折から海外の動きに刺激された学生運動が高まり、それを胡耀邦が抑えられなかったというので、胡耀邦の更迭も決めていた。そのころから、政治改革は先送りにしたほうがいい、という判断に傾いていたのです。


 ――なるほど。


ヴォーゲル:中国でよくあるのですが、役人が中央から地方に行くと、威厳を見せつけるために、なにか目立ったことをやる。自分が強くて恐ろしいと、みなにわからせるためです。さもなければ、秩序が乱れてしまう。天安門事件も、似たようなところがあるのではないか。ある中国の友人の解釈です。合理的な意見だと思う。


 ――わかりました。

 以上をまとめると、訒小平には、いくつか間違いがあった。そして、訒小平が実力で、学生から死者が出てもいいと思うようなやり方で鎮圧したのは、それが必要で、政治的効果があるからだということですね。


ヴォーゲル:そう。仕方がない。そういうことはやりたくないけれども、国を考えるならば……彼のロジックは、個人的なロジックではなく、全国を統一するためのロジック、なのですね。


 200人は「少し」じゃないだろう、とか、こういう「力を見せつけるやりかた」というのは、訒小平が日中戦争や国共内戦で実際に軍隊を率いていたことの影響が大きかったのではないか、と僕は思うのです。

 でも、「天安門事件」がああいう形で「鎮圧」されなかったら、中国は平和な民主国家になっていたかと問われると、あまりそんな気もしないんですよね。

 中国は、あまりにも大きすぎる。


 ――中国に話を限っていいんですが、中国はなぜ、ポスト冷戦の時代に、解体しなかったんでしょうか。社会主義体制が。


ヴォーゲル:まあそれは、ひとつには、経済成長がものすごく速かったことですね。80年代に、みんな生活がよくなった。もうひとつは、阿片戦争以来、この国を統一するのが難しいとわかっていること。政治が乱れ国が分裂している状態では、ダメだと、誰もが骨身にしみてわかっている。多くの人びとがこのふたつを認めているから、中国共産党が支持されているのだと思うんです。


 中国という大国には、それに適した「やりかた」がある、ということなのかもしれません。

 それにしても、天安門事件は「やりすぎ」だとは思うのだけれど。


 訒小平という人への興味が、あらためて湧いてくる新書、だと思います。

 それでも、日経版はやっぱり僕には敷居が高いかな……

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