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共産党の破防法調査対象への抗議を読んで思ったこと(下) 問題は民主集中制にある

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三、この誤った路線〔第8回党大会で決定される予定の宮本書記長らの綱領の路線〕にたいする幹部の異常な執着は、党内外の批判・反対をおさえるために党内民主主義を破壊し、いま、第八回党大会を前にして、みずから規約をふみにじり、反対意見の代議員の選出を組織的に排除し、少数意見の中央委員の意見書も発表させず、代議員権の獲得もさまたげ、一方的なやり方で大会を開こうとしています。このような度はずれの幹部独裁は、「下級は上級に無条件に服従し、決定は忠実に実践する」という「組織原則」に、誠実、献身的な党員大衆をしばりつけることによって保証されています。

それは幹部が自己の政策・方針をつねに「基本的に正しい」といえば、末端まで「基本的に正しい」とシュプレヒコールする自動連動装置であります。

幹部会の方針に批判を加えたり、反対したりするものは、すべて自由主義、分散主義、修正主義、反中央、反党分子として排除されます。これは、いかなる失敗があっても「基本的に正しい」といわせられる、上から下までの自己瞞着、政治的腐敗の体系であります。何月何日までに党員倍加達成、アカハタ何部の拡大、責任買取り制が、下部でどのような危険と困難をよびおこしていようと、幹部会はこの「基本的に正しい」「偉大な成果」の上に自己の権威を高めようとしています。

四、こういう状態の中では、党内民主主義に依拠して、原則的な党内闘争によって事態を改善してゆく余地はほとんどありません。真面目な党員、批判力をもった党員は、上級の圧力によって漸次、面従腹背の二重人格においやられています。だんだん党員は無気力になります。上向きの出世主義がはびこります。「いかなる分派の存在も許さぬ一枚岩の党」の圧力に耐えられないものは脱出します。〔中略〕

五、私は熟慮の結果、離党の道を選びました。現職の統制監査委員会議長が離党を決意するということは非常なことです。私は四十年近い自分の革命経歴の重味におしまかされて、安易につくべきではないと決断しました。私は自己瞞着の体系を破って全党員諸君と共に大胆、卒直〔原文ママ〕に語り合う自由をえたいのです。

(日本出版センター編『日本共産党史 -私の証言』日本出版センター、1970、p.327-328)
 民主集中制の「民主」の実態は、こんなものなのだろう。
 春日に限らず、宮本体制確立後、執行部への反対派が党にとどまっているという事例は聞いたことがない。

 共産党は、党員による党首の普通選挙を行ったことがない。自民党の総裁選や、旧民主党の代表選のように、複数の候補者が公然と党首の座を争ったことがない。
 規約第3条に「すべての指導機関は、選挙によってつくられる。」とあるように、選挙は行われている。
 まず、党の最高機関とされている党大会が中央委員会を選出する。中央委員会は幹部会委員と幹部会委員長(党首)、書記局長などを選出する。
 ではその党大会の代議員はどうやって選出されるのかというと、これは中央委員会が決めるのである。
 つまりは、中央の意に沿う人間しか代議員に選出されない。第7回党大会前後のように党中央に反対派がいればいざしらず、党中央が一枚岩であれば満場一致で中央の決定を追認するだけである。
 かつてのソ連共産党、現在の中国共産党、朝鮮労働党が行ってきたことと同じである。

 宮本は1970年に書記長に代わって新設の幹部会委員長(党首)に就任した。新設の書記局長に40歳の不破哲三氏が起用された。不破氏は宮本の後継者と目された。
 1982年には宮本は野坂参三に代わって名誉職的な中央委員会議長に選出され(野坂は新設の名誉議長に就任)、幹部会委員長は不破氏が継いだ。書記局長には労働者出身の金子満広(1924-2016)が就いたが、1990年に党職員で35歳の志位和夫氏に代わった。志位氏は不破氏の後継者と目された。
 2000年に志位は幹部会委員長に就任し、不破は老齢の宮本を引退させて議長に就いた。2006年には議長も引退したが常任幹部会にはとどまっている。志位はその後現在まで幹部会委員長を務めている。
 この間党勢は様々に推移した。しかし、党勢が低迷した時期に、党内で宮本や不破や志位の責任が問われることは全くなかった。何故、経験豊富な他の幹部ではなく、若手の不破氏や志位氏が後継者候補なのか、その説明もなかった。
 同じ左翼政党であり、衰退が著しい社民党ですら、福島瑞穂の党首辞任に際しては選挙が行われた。
 わが国の政党で、党首の人事がブラックボックスと化しているのは共産党と公明党ぐらいのものである。

 春日が言うように、「下級は上級に無条件に服従し、決定は忠実に実践する」のが民主集中制の本質である。
 だから、米軍占領下での平和革命が可能だなどという珍論を執行部が唱えれば下級党員はそれに従う。
 そして、執行部より「上級」のコミンフォルムから平和革命論を批判されれば、執行部はそれに従い、下級党員もまたそれに従う。
 朝鮮戦争が始まり、執行部の主流派が地下に潜行して武装闘争路線を採ると、下級党員もまたそれに従う。
 執行部の主流派と反主流派が逆転して、武装闘争は戦術的誤りだったと批判すると、下級はこれまた従う。
 新たな主流派となった宮本らが新綱領を定めると、それにも従う。
 やがて執行部がソフト路線に転じて、「自由と民主主義の宣言」を打ち出したり、天皇制や自衛隊の廃止を明言しなくなったりしても、それに従う。
 「上級」から何を言われても、「下級」はただただそれに従う。それが共産党である。そうでない人間は排除されてきた。
 個々の議員が議会政治を前提に結成し、離合集散を経てきた、自民党や民進党といった諸政党とは異質な存在なのである(公明党は、共産党に類似している。ただ、公明党に武装闘争の前歴はない)。

 ならば 執行部が再び武装闘争を実行する条件が整ったと判断すれば、執行部はそれを指示し、下級党員はやはり無条件にそれに従うのではないか。
 この疑念が、日本共産党が現在でも破防法における監視対象とされている最大の理由だろう。

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