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共産党の破防法調査対象への抗議を読んで思ったこと(下) 問題は民主集中制にある

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承前

 この一連の記事の「(中) 「敵の出方論」について」で引用したように、政府は、鈴木貴子衆議院議員の質問主意書に対する答弁書で、こう述べている。
 警察庁としては、現在においても、御指摘の日本共産党の「いわゆる敵の出方論」に立った「暴力革命の方針」に変更はないものと認識している。
 そして、共産党が暴力革命を否定していないことは、これまでの記事で説明したとおりである。

 では、仮に共産党が「いわゆる敵の出方論」を否定すれば、共産党は破防法の調査団体ではなくなるのだろうか。
 共産党が、「敵の出方」がどうであれ、一切の暴力を否定し、議会による民主制を堅持すると宣言すれば、公安調査庁は共産党への監視を中止するのだろうか。

 私には、共産党が「敵の出方論」を採るから監視しているというのは、ある種の方便ではないかと思える。
 仮に、共産党が「敵の出方論」の放棄を宣言したとしても、おそらく公安調査庁は共産党への監視をやめないだろうし、やめるべきではないと私は思う。
 その理由は三つある。
 まず、かつて武装闘争を行ったというれっきとした前歴がある以上、その団体が監視対象とされるのは当然だということ。
 次に、共産党が理論的基礎としているマルクス・レーニン主義(近年の彼らは科学的社会主義と呼んでいるが、これは単なる言い換えである)は、元々暴力革命を肯定していること。
 そして、共産党特有の組織原理である民主集中制には、何ら変化が見られないことだ。

 民主集中制とは、ロシア革命を成功させたレーニンが打ち出した共産党の組織原理である。
 コトバンクで「民主集中制」を引くと出てくる、日本大百科全書(ニッポニカ)の加藤哲郎氏による解説中に、次のようにある(引用文中の太字は引用者による。以下同じ)。
共産主義政党および社会主義諸国家において公式の組織原理とされたもので、民主主義的中央集権制ともいう。自由主義的分散主義と官僚主義的集権主義の双方と異なり、民主主義の原則と中央集権主義の原則とを統一したと称される論争的概念。典型的には、スターリン時代の1934年にソ連共産党規約に明記され、各国共産党規約に採用された、〔1〕党の上から下まですべての指導機関の選挙制、〔2〕党組織に対する党機関の定期的報告義務制、〔3〕厳格な党規律と少数者の多数者への服従、〔4〕下級機関および全党員にとっての上級機関の決定の無条件的拘束性、の原則をいうが、その実際の運用にあたっては、「党内民主主義」を制限し、共産主義政党の国民に対する閉鎖性・抑圧性を印象づける現実的機能をも果たした。そのため1989年東欧革命前後に、イタリア、フランス、スペインなどの共産党は民主集中制を放棄して変身をはかった。
 現在の日本共産党規約(2000年11月24日改定)には次のようにある。
第三条 党は、党員の自発的な意思によって結ばれた自由な結社であり、民主集中制を組織の原則とする。その基本は、つぎのとおりである。
 (一) 党の意思決定は、民主的な議論をつくし、最終的には多数決で決める
 (二) 決定されたことは、みんなでその実行にあたる。行動の統一は、国民にたいする公党としての責任である。
 (三) すべての指導機関は、選挙によってつくられる。
 (四) 党内に派閥・分派はつくらない
 (五) 意見がちがうことによって、組織的な排除をおこなってはならない。
 これだけを読むと、(四)を除けば、組織としてごく当たり前のことを述べているにすぎないように見える。
 しかし、規約の次の条文を合わせて読んでみると、どうだろうか。

第五条 党員の権利と義務は、つぎのとおりである。
 (一) 市民道徳と社会的道義をまもり、社会にたいする責任をはたす。
 (二) 党の統一と団結に努力し、党に敵対する行為はおこなわない
 (三) 党内で選挙し、選挙される権利がある。
 (四) 党の会議で、党の政策、方針について討論し、提案することができる。
 (五) 党の諸決定を自覚的に実行する。決定に同意できない場合は、自分の意見を保留することができる。その場合も、その決定を実行する。党の決定に反する意見を、勝手に発表することはしない
 (六) 党の会議で、党のいかなる組織や個人にたいしても批判することができる。また、中央委員会にいたるどの機関にたいしても、質問し、意見をのべ、回答をもとめることができる。
 (七) 党大会、中央委員会の決定をすみやかに読了し、党の綱領路線と科学的社会主義の理論の学習につとめる。
 (八) 党の内部問題は、党内で解決する
 (九) 党歴や部署のいかんにかかわらず、党の規約をまもる。
 (十) 自分にたいして処分の決定がなされる場合には、その会議に出席し、意見をのべることができる。
 何やら実に息苦しいものを感じる。
(なお、第五条の(一)で「市民道徳と社会的道義をまも」るとあるが、法律を守るとしていない点が興味深い)

 一見、党外はともかく、党内であれば、党の決定に反対する意見を述べる自由や、その意見を保留する自由が認められており、反対意見を理由に排除されることはないように読める。
 だが、実際にはどうか。

 この一連の記事の「中の3」で述べたように、現在の日本共産党綱領の原型は、宮本顕治書記長の下、1961年の第8回党大会で決定された党綱領である。
 1958年の第7回党大会で、宮本らは綱領と規約を一体化した「党章」の決定を図ったが、党中央に春日庄次郎(1903-1976)ら少数の反対派がおり、大会でも代議員の3分の2以上の賛成が得られなかったため、規約のみを決定し、綱領については持ち越しとなった。
 党内の綱領論争は続いたが、宮本ら主流派が大勢を制し、第8回党大会では綱領反対派の意見表明もなされずに綱領が決定される見通しとなった。
 戦前からの非転向の党幹部である春日庄次郎は、大会を前に離党した。共産党は離党を認めず春日を反党行為者として除名した。

 離党に当たって春日が発表した「日本共産党を離れるにあたっての声明」の中に、民主集中制の問題点をわかりやすく説明していると思われる箇所があるので、引用する(〔〕内は引用者による註)。

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