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- 2016年05月09日 10:23
韓国の日米中外交を笑えない ―かつての自民党外交を猛省せよ― 屋山太郎
理事・政治評論家 屋山太郎
韓国が政治、経済にわたって塗炭の苦しみを味わっているようだ。隣国の日本から見るとこういう苦境に陥ったのは当然のことに見える。一方我が身を顧みて自民党も猛省して貰いたい。
韓国がいつから外交的妄想に憑りつかれたのか分からないが、記憶する限り盧武鉉大統領時代ではないか。それまで韓国は米国の忠実な同盟国として振る舞ってきたが、盧武鉉は強烈な反日、反米論者として登場した。その親北姿勢は米国をハラハラさせる傍ら、彼が断固として宣言した外交路線は「韓国が北東アジアの米・中のバランサーの役を果たす」という壮大なものだった。
バランサーというのはどちらの大国も韓国を敵に廻しては不利になるほど強力である必要がある。盧武鉉はイラク戦争に3260人もの軍隊を派遣したが、軍事同盟国の米国は韓国が引き揚げれば困るほどの数ではない。
中国に対しては経済的接近を図る反面、米・日とは距離を置く路線を採った。米・中間のバランサーというからには当然の路線だろう。この路線を引き継いだのが朴槿恵大統領だ。自分がバランサーであるためには、近辺の日本ごときは「歴史を顧みない不道徳国家である」と欧米に“告げ口”して廻ることから始めた。しかし中韓は別にして首脳が悪口を言って廻る国家が尊敬されるはずはない。
朴槿恵氏は外交路線として「安全保障は米国と手を携え」、「経済は中国を重視する」と称した。メディアは「安米経中」と名付けたが、朴氏は自らが引けば米も中も困ると考えたのだろう。「自らを小国と考えてはいけない。それは敗北主義だ」と強調した。米欧と一回りしたあと15年、中国のコケ脅しのような軍事パレードに参加を強行した。たまたま米韓の間で「高高度防衛ミサイル(THAAD)を配備するのが懸案となっていた。渋る韓国に米国が怒り、はっきり断れない韓国に中国が怒った。この兵器は北朝鮮の攻撃に対して極めて有効だが、同時に中国の攻撃をも防ぐことができる。防衛兵器の配備一つを巡っても、韓国のバランス外交とか等距離外交は成り立たないのである。
韓国外交のどこが間違ったかは明瞭である。どこかの国と防衛条約を結んだら、敵と見做す相手国との付き合いには不都合が起こるということだ。
盧武鉉氏や朴槿恵氏を笑ってはいけない。日本の政権与党である自民党にも、かつては日米、日中と“等距離外交”をすると豪語していた三木武夫首相がいた。福田赳夫首相は“全方位外交”と称していた。その後も中国と太い人脈を繋げておけば、いざという時に役に立つと信じる党首脳がいたものである。谷垣禎一幹事長や岸田文雄外相が属する宏池会は経済重視主義で中国側を向いていた。
中国は目下、カッカとなって日本に文句をつけているが、かつて養った中国人脈はどこに居るのか。これが共産主義の本質なのだ。
(平成28年5月4日付静岡新聞『論壇』より転載)
屋山 太郎(ややま たろう)
1932(昭和7)年、福岡県生れ。東北大学文学部仏文科卒業。時事通信社に入社後、政治部記者、ローマ特派員、官邸クラブキャップ、ジュネーブ特派員、解説委員兼編集委員を歴任。1981年より第二次臨時行政調査会(土光臨調)に参画し、国鉄の分割・民営化を推進した。1987年に退社し、現在政治評論家。「教科書改善の会」(改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会)代表世話人。
著書に『安倍晋三興国論』(海竜社)、『私の喧嘩作法』(新潮社)、『官僚亡国論』(新潮社)、『なぜ中韓になめられるのか』(扶桑社)、『立ち直れるか日本の政治』(海竜社)、『JAL再生の嘘』・『日本人としてこれだけは学んでおきたい政治の授業』(PHP研究所)など多数。
- 一般社団法人日本戦略研究フォーラム
- 外交安全保障を主軸としたシンクタンク



