記事
  • essa
  • 2016年05月09日 00:00

「おま国」問題に切り込むためにデジカを作った -- Degica CEO Jack Momose インタビュー

2/2

デジカ創業

  • Q: 「創業時から、デジカにははっきりとした理念というかヴィジョンがあったんですね」
  • A: 「海外のいいソフトを日本の消費者に届けることが自分の使命だと思った。海外から見ると日本はフワフワで全部あいまい。日本では商品の良さではなくて、誰それと仲がいいとかそういうことで何を売るか決める。そういう透明性がないことに困っている人がたくさんいた」
  • 「逆に日本のソフトを海外に売る時も同じだと思う。海外で勝負するためのチャンネルがないからチャレンジする所までいけない。消費者の評価より、間にいる人の言うことを聞くようになってしまう。その人がお客さんだと作る人が考えるようになってしまう。本当は使う人がお客さんでその人の方を見てないといけないと思う」
  • 「その両方向で、作る人と使う人の距離を短かくすることが大事だと思った」
  • Q: 「始めてみて、どうでした?」
  • A: 「お客さんはすぐにたくさん見つかったけど、最初はキャシュフローが大変だった。どんな会社も、最初はスタッフの人月をそのまま売るところからスタートしますね。デザイン一枚3万円とか。毎月いくらでコンサルレポート書いてとか。これは当事者じゃない。ただの下請。決定権もあまりない。1日24時間だから、これでは売り上げにリミットがある」
  • 「ここから、次の段階へ行けないで終わってしまう会社も多いと思います。売り上げにならない投資としての作業が必要だけど、失敗すると両方ダメになる。デジカでは、2009年に最初のEコマースシステムがスタートして、これの売り上げで人件費を含む経費を払えるようになって、そこでやっと一息つけた。朝起きると、夜の間に売り上げが立ってる」
  • Q: 「その時はホッとしましたか?」
  • A: 「ホッとしたではないね。OK、予想通り、ここまでの道は間違えてなかった。よし次行こうという感じ」
  • 「でも、たくさん失敗もした。無理して自社ブランドのソフトを売り出してみたけど、これはひどい失敗だったね。でも、これでブランドとは何かということがよくわかった。お客さんと関係なしで、自分のロゴをつけてもそれはブランドにならない」
  • Q: 「ああそうですね。ロゴが付いているだけではブランドにならないし、すぐ忘れられてしまいますね」
  • A: 「そう、大事なのは、お客さんにうちが何を提供できるか、それをお客さんが知っていて信頼されていること。それで初めてブランドと言える。自分の商品やサービスで売り上げが立つようになったら、その次の段階がこれだと思う。デジカは今これを目指している」
  • 「ビジネスは飛行機と同じで、一度飛びたったら止まれない。飛んだままで方向を確認して間違っていれば、方向を変える。デジカは飛び続けながら、次のステージに向けて正しい方向に向けることができた」

「おま国」問題へのジャックさんの視点

  • Q: 「Eコマースシステムは、その後、Railsベースに書き換えられて、どんどん拡張されて順調に育っていますね。その中で大きかったことは何かありますか?」
  • A: 「Komoju は重要な進化です。海外のベンダーが日本でソフトを売ろうとするときに、支払い方法がたくさんあって、Komoju以前は、いろいろなサービスを個別に使う必要があった。それをワンストップで提供できるのが Komoju」
  • 「何をいつ売るか、それを本当に自分で決めて自分でコントロールするには、決済の機能を持っていることが大事。デジカは最初からそこに力を入れていたね。できあいのパッケージも検討したけど、いろいろなビジネスモデルに対応したかったから自分で開発した」
  • 「それから Valve のパートナーになれたことも大きい。最初は、単にうちで扱うゲームを Steam にだしていただけだけど、これを日本に持ってくることを提案して、何年もかけて議論して、信頼してもらえるようになった。Steamは絶対日本に持ってくるべきだと思ったね」
  • Q: 「なぜ、それが日本にとって重要だと思ったのですか?」
  • A: 「steam を使えば、作る人と使う人の関係がダイレクトになる。距離が短くなるからです」
  • Q: 「流通なんていらない?」
  • A: 「いや、流通は大事で重要な役割もある。たとえば広告ですね。出す側が、手数料を広告費用と見て、見合っているかどうかを評価すればいい。日本が他の国と違うのは、そういうところに透明性がなくて、間にいる人がどういう役割でどういう費用を取っているのか、なぜその会社を通さないといけないのか、そういうことが外側から見えにくい」
  • 「最初の頃にデジカがお付き合いした会社の中には、そういうところもありました。自分の商品がどういう風にユーザに受け入れられているか全然気にしないで、ただ売り上げ、お金のことだけ気にしている。あるいは、リスクを一方的にこちらに押し付けてくる。ユーザと開発者の間のコミュニケーションを考えずに、自分の直接の取引相手だけ見てる。そういう流通はダメですけどね」
  • Q: 「意味がないレイヤーがたくさんあって、そこと仲良くしないと、ユーザとの接点を持てるスタート地点まで行けないということですか?」
  • A: 「そう。それと日本には無駄な競合も多い。電気屋さんに行って電池売り場を見るとわかる。たくさんのブランドがあるけど、全部同じ。アメリカでは、電池の高級ブランドは二つに集約されていて、あとは安いマイナーなブランド」
  • 「僕もそんなに広く全部を見ているわけではないけど、日本にはいい開発者や小さいスタジオでチャンスを与えられないところがたくさんあると思う。Steamは海外の開発者が日本でゲームを得る場でもあるし、同時に、日本の開発者が海外に売るチャンスにもなる。少しづつでも業界を変えて、チャンスを広げていきたい」
  • Q: 「透明性が大事なんですね」
  • A: 「そう、開発者はユーザの声にきちんと向き合って責任を持ってほしいし、ユーザも真面目に評価してほしいと思う。日本の市場でそういう活発なコミュニケーションが行き交うような状況を作れるのがデジカだと僕は思っている」
  • Q: 「そういう所は日本だけが特殊なんですか?」
  • A: 「ネットが広まる以前は、どこもそうだった。カナダもそうだしアメリカもそう。前はみんなそうだったけど、ネットが普及して変わった。The world is flat という言葉があるでしょう。あれが他の国にいると実感だね。使う人と作る人の距離が縮まった」
  • 「日本のシステムの中にいたら外が見えないし、これでいいじゃん、しかたないと思ってしまうのかもしれない」
  • 「日本人は、日本人からお金を取れるのは日本の会社だけ、と思っているみたいだけど、それは違うと思う。それではユーザが本当にいいもの、本当に使いたいものを使えない」
  • 「日本の流通を透明性のあるものにする、ゲームでそれを確立できれば、その方法論を持って、デジカは他の業種にも入っていける。デジカは10年20年の会社ではなくて、100年の会社になれると思う」

VR と Vive について

  • Q: 「だいぶわかってきました。では、今デジカが力を入れているVive や VR についても一言お願いします」
  • A: 「あれをつけた人はみんな、体が自然に動くし叫び声が出る。これはその人の頭脳が、提示されたものを現実だと認識しているということです。VR (Virtual Reality)とは、人間の頭脳にとっては現実そのものなんです」
  • 「VRで宇宙に行ける、遠いところにいる友達に会える、ゾンビに襲われゾンビを倒す。そういう別の現実を人間の頭脳にとっては現実そのものとして体験しているということ。こういうことができるようになったのは、人類の歴史上初めてのことで、本当にすごいことです」
  • 「だから、VRはインターネットと同じくらい、いや、それ以上の大きな革命になる。ちょうど、インターネットで言えば25年前くらいのフェーズで、誰もそれがここまで大きな革命になることを予想していなかった。今この段階で参入することが大事」
  • 「一方で、VRはホットであるだけに、みんな色々想像であれもできるこれもできると色々なことを言う。その中で何が現実的にできるか、今できることは何かそれも考えなくてはいけない」
  • 「問題は色々あるけど、デジカは、それが解決するのを待つことはしない。先に参入して問題を解決する当事者になります。まず、多くのユーザにヘッドセットを届けること。それから、開発者がそれを手にして、自分がこれで何をできるか理解すること。その手助けをしていきたい。先日のニコニコ超会議でもブースを出したし、今後もみなさんが体験できる機会を提供していきます」
  • 「それと、今の事業と全く関係ないことはしない。それではビジネスではなくてチャリティに成ってしまう。今の事業との関連でできることをする。それも大事なポイントです」

終わりに

ジャックさんは、完全にセールス畑の人でしゃべりもソフトなんですが、よく話を聞いていくと話の内容はロジカルでトップダウンなんですね。そして、繰り返し出てくるのは「当事者」と「透明性」という二つの単語。実際はもっと出てて、これでもだいぶまとめています。

「透明性のある流通を作り、そこに当事者として関わる」という理念を強烈に感じました。

それと、デジカ創業以前のことは初めて聞いたのですが、まるでジャックさんの前半生がデジカという会社の起業に向けてのトレーニング期間のようにも感じました。

これは、以前、井口尊仁さんのインタビューをした時 にも感じたことですが、起業をする人は人生のテーマを持っていて、そこに重なる所で会社を興すような気がします。いや、起業に関係なく、キャリアを考える上ではそういう視点が欠かせないのかもしれません。

最後に、利害の開示として明記しておきますが、インタビュアーの私、essaは現在、 Degicaの社員です。

あと、インタビュー内で言及されている、"The world is flat" については、発売時に書評を書いています。

この本の原題は、"The World *IS* Flat" であるのに、邦題は「フラット化*する*世界」である。意地悪く言えば、「これからフラット化するかもしれないけどまだフラット化してない昔通りのこの世界」である。「あなたが住んでいるこの世界は今現在既にフラットである」と直訳したら、日本では意味不明であるか無駄な反発を買って売れないのかもしれない。

The World *IS* Flat - アンカテ

私も、ちょうど同じ2006年頃に、同じようなことを感じていたみたいです。

あわせて読みたい

「ビジネス」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    BLOGOSサービス終了のお知らせ

    BLOGOS編集部

    03月31日 16:00

  2. 2

    なぜ日本からは韓国の姿が理解しにくいのか 識者が語る日韓関係の行方

    島村優

    03月31日 15:41

  3. 3

    「いまの正義」だけが語られるネット社会とウェブ言論の未来

    御田寺圭

    03月31日 10:09

  4. 4

    カーオーディオの文化史 〜ドライブミュージックを支えた、技術の結晶たち〜

    速水健朗

    03月30日 16:30

  5. 5

    BLOGOS執筆を通じて垣間見たリーマンショック後10年の企業経営

    大関暁夫

    03月31日 08:27

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。