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「炎上もあるけれど、記者はSNSをやったほうがいい」 毎日新聞・小川一取締役インタビュー(前編)

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■「3回ほど炎上したが、だんだん成熟している」

――ソーシャルメディアの活用というのは、プラスの面もあれば、マイナスの面もあります。ある新聞社は、記者が自由にTwitterを使うことを禁止しているとか、そんな話も聞きますが、毎日新聞のスタンスはどうでしょうか。

小川:私は推奨している立場です。私が編集局に戻る前から、ガイドラインを作って「使いましょう」と社内に呼びかけました。勉強会も年に30回ほどやっています。編集局に戻ってからはソーシャルメディア委員会を作って、何か炎上したら対応するようにしました。というわけで、もっともっとやってほしいというのが、私の考えです。

――社内的には、届出制になっているのですか。

小川:そうですね。やるときに届出をしてもらいます。新聞社によっては、 入社5年目まではTwitterができないというルールもあるようですが、毎日新聞ではそういう縛りはありません。

――ただ、ソーシャルメディアにはリスクもあると思います。小川さん自身がこれまでTwitterなどをやってきて、「炎上」したというのはありますか。

小川:私はこれまで3回ほど炎上したのですが、炎上といっても、だんだん質が良くなってきていると思います。

――どういうことでしょうか。

小川:たとえば、2013年のアルジェリア人質事件のとき、「政府が死者の名前を発表しないのはおかしい。実名で報道するのはこういう意味がある」という内容のツイートをしたら、「他人の不幸で商売をしているのか」と炎上しました。

――そのときの炎上というと、Twitterが中心ですか?

小川:いえ、2ちゃんねるでも、Twitterでも炎上しました。そのときは、私の息子も「親父がこう書かれている」と全部わかっているわけです。家族は「大丈夫だよ」と言ってくれましたが、社内で若い人と会って「元気?」と言うと、それまでは「おはようございます」と返ってきていたのが、目を反らすわけですよ。何とも言えない雰囲気になりました。

――炎上がネットだけでなく、リアルの世界にもつながっていくわけですね。

小川:そのとき、同期の斗ヶ沢秀俊記者(@hidetoga)や地方紙の記者が実名で守りに来てくれて、「何がおかしいんだよ、まともなこと言ってるじゃん」と、Twitterで書いてくれた。すごく守られている気がしました。それから、Twitterのダイレクトメッセージで「怖くて今はできないけれど、小川さんの言っていることは絶対正しい」というのが来て、守られているな、と。これは成熟したなと感じました。

――そうなんですね。

小川:この炎上は1月から始まって1、2週間で終わったのですが、2月14日には、見たことも聞いたこともない女の子からバレンタインのチョコレートが届きました。何かと思って開けたら、「ずっと支えられなかったけど、小川さんのことを応援していました」というフォロワーの人だったんですよ。

そんなことも、社内では体験として共有しているわけです。炎上はあるけれど、(ソーシャルメディアは)やったほうが良い、と。それは、僕らが生きていくうえでの一つの所作なので。それを知らずにやっていたら「あっちむいてホイ」の新聞になってしまうというのが、私の積極的な推奨理由ですね。

――芸能人の中には、批判を見ると気がめいってしまうので、2ちゃんねるなどは絶対見ないようにしているという人もいるようです。小川さんは、批判や誹謗中傷を見ても、それほどへこまないということですか。

小川:へこみはしますけど、僕らの仕事というのは、人を自由に批判、攻撃してきたわけです。それなのに「自分は嫌だ」というのは許されないと思います。

――小川さんは、炎上を前向きに捉えているのですね。

小川:炎上を経験して思ったのは、僕のことが嫌いでフォローしている人もいるけれど、守ってくれるフォロワーもいるということ。たとえば津田大介さん(@tsuda)がTwitterでガンガンやっているのは、「自分を守ってくれる石垣がある」という安心感があるからだと思います。いろいろな批判が来ても、「自分は裸ではなくて、守ってくれる人がいる」というつながり、エンゲージメントの力というのを感じました。そういうのを若い人も実感してほしいなと思っています。(後編:「デジタルに強い記者から出ていってしまうのは辛い」につづく)

(おがわ はじめ)1958年生まれ。毎日新聞社取締役 総合メディア戦略担当 デジタル担当。 京都大学卒業後、81年毎日新聞社入社。社会部長、販売局次長、コンテンツ事業本部次長、「教育と新聞」推進本部長、編集編成局長などを経て現職。

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