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「余命宣告」の恐怖! 覚悟を決めて「いまを大切に生きる」

フリーランスライター 桃山透=文

闘病生活の「風邪」は余命宣告より怖い?

がんになると、つらい闘病生活を送ることになります。それでも「余命宣告」されていなければ、完治する可能性が高い人も少なくありません。そういう意味では、“希望につながる闘病生活”と思うこともできます。残念ながら妻の場合、主治医から「治るとは思わないでください」といわれているため、ゴールのないマラソンを走っているようなものです。常に「余命宣告」の恐怖がつきまとう、つらくて過酷なレースです。

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連載「ドキュメント 妻ががんになったら」が書籍化されました!『娘はまだ6歳、妻が乳がんになった』(プレジデント社刊)

最近、妻が続けていた抗がん剤の効き目が悪くなってきたため、新しい抗がん剤に変えました。これは1つの希望が消えることを意味します。新しい抗がん剤が効くかどうかがわかるまで、私たち夫婦の憂鬱な日々が続きます。効かなければ、近い将来「余命宣告」されてもおかしくないからです。

この気持ちは、がん闘病者とその家族にしかわからないかもしれません。つらくて過酷なレースですが、妻も私も、このゴールのないマラソンから降りることは考えていないのです。少なくとも、11歳の娘が20歳になるまで、なんとしてでも、妻にはがんばってもらわなければなりません。

幸い新しい抗がん剤の効き目が現われ、ひと息つくことができたのですが、妻の闘病が終わったわけではありません。それでも妻は命を拾うことができたのです。新しい抗がん剤が効いているうちは、命をつなぐことができるからです。このように「余命宣告」に怯えながらも、「がんと一生つきあっていくつもりで、長生きしよう」と妻と言い合い、家族でがんと対峙しているのです。

昔から「風邪は万病のもと」といわれ、風邪をこじらせて死ぬ人もいますが、健康な人なら、かなりの無理をしない限り、風邪で死ぬ確率は極めて低い、といえるでしょう。ところが、がん闘病者の場合、感染症にかかりやすいため、風邪をこじらせて肺炎になり、死に至るケースはめずらしくはありません。

一昨年前の12月中旬、そのことを痛感するできごとが起きました。妻が風邪をひいたのですが、重症ではなかったため、安静にしていればだいじょうぶ、と思ったのです。ところが、クリスマスになっても風邪は治るどころかひどくなる一方で、高熱が続き、トイレに行くのも大変な状態になってしまいました。救急車を呼ぶべきと思ったのですが、妻が制したため、もう少し様子を見ることにしたのです。

数日後、高熱が続いているとはいうものの、ほんの少し快復の兆しが見えた妻をタクシーに乗せ、クリニックに連れていくと、肺炎と診断されました。

1年後より“いまを大切に生きる”重要性

その後、妻はすぐによくなったのですが、下手をすれば、肺炎で命を取られていたかもしれません。妻の従姉弟が20代の若さで、インフルエンザで命を落としていたため、この考えがおおげさには思えませんでした。ただ、私のように風邪や肺炎で119番に電話するのをためらう人は、多いかと思います。

そこで、ひどい風邪や肺炎で救急車を呼んだほうがいいのかどうか迷った場合、どうすればいいのかをネットで検索してみると、「救急相談センター」(♯7119)に電話すればいいことがわかりました。この電話では、相談医療チーム(医師、看護師、救急隊経験者などの職員が24時間年中無休で相談に乗ってくれるのです。これなら気軽に電話することができ、手遅れになる心配が激減します。

このときは大事に至りませんでしたが、がん闘病者が家族にいるにもかかわらず、「救急相談センター」の存在を知らなかったことを反省しました。つくづく自分がダメ夫であることを、あらためて痛感したのです。

“いまを大切に生きる”重要性を解く人は結構います。これは健康に関係なくいえることではないか、と思っています。ただ、がん闘病者の場合、「5年生存率」がよく取り上げられるように、人によっては5年後、生きていない可能性があります。なかには1年後さえ、自分の命がどうなるかわからない人もいます。

妻の場合、肝臓にがんが転移したとき、主治医から「治療をしなければ、2カ月持ちません」といわれました。このとき私は、「治療を受けたとしても、効かなければ、ママの余命は数カ月なのか」と愕然としました。ただ、気持ちの整理がついてから、“いまを大切に生きる”ことの重要性を痛感しました。“いまを大切に生きる”ことができなくては、長生きすることにつながらないように、と思えたのです。たとえ長生きできたとしても、不毛な人生を送ることになりかねない、と思いました。少なくとも、“いまを必死になって生きる”ことが重要なように思えました。そうすることで、ひいては人生の質を上げることができる、と思ったのです。

また、近い将来、たとえ妻が亡くなるようなことがあっても、悲しむだけ悲しんだあとは、「普通の夫婦と同じくらい、ともに時間を過ごせたじゃないか」と自分に言い聞かせよう、と思うようになりました。このような覚悟を決めておかなければ、やっていられないからです。

夫婦の時間をたくさんつくることができるのは、私がフリーのライターで、自宅で仕事をしているからです。貧乏暇なしの不安定な仕事ではありますが、この点においては、この仕事をしていてよかった、と思っています。もちろん、近い将来、がんを治せる薬が発明されることを、期待せずにはいられません。

『娘はまだ6歳、妻が乳がんになった 』(プレジデント社)
リンク先を見る [著] 桃山 透  

プレジデントオンラインの好評連載が単行本に! 家族を襲った一大事にダメ夫は何を考え、どう行動したか?

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