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「宇宙人が飛んでくるから、それを撮るんです」〜矢追純一氏がUFO特集を始めたワケ

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数々の怪奇現象や、UFO特集を手がけてきた、テレビプロデューサー・矢追純一氏。1980年代、90年代に子ども時代を過ごした人で、その名を知らない人はいないだろう。

一体、矢追氏はそのような経緯であのような番組を手掛けることになったのか。80歳を迎えた同氏に話を聞いた。【大谷広太/永田正行、撮影:野原誠治】

■大学に入ったのも、日テレに入ったのも"流れ"

ー矢追さんがテレビディレクターになられたきっかけはなんだったのでしょうか。

僕は小さい時に、自分でものを考えることを放棄したんです。頭も悪いから。自分で考えたことが、その通りになるということはほとんど無いんだと気づいたんだね。それから左脳は眠らせて右脳で、一種のインスピレーションで生きていこうと決めたんです。こういう風になりたいとか計画を立てたことはありません。従って、大学に入ったのも、日テレに入ったのも"流れ"なんです。

終戦後、母と僕と二人の妹で、命からがら満州から逃げてきました。日本に帰ってきた当初は、母の入院先のベッドの脇にゴザを引いて暮らしていました。小学校も中学校もまともに通っていません。高校も、実業学校の特待生制度試験に受かると授業料が免除になると聞いて、受験しました。そのうちに母が亡くなり、二人の妹を引き取ってバイトしながら高校に通いました。

そして卒業する段階になって、大学にも行っといたほうがいいんじゃないかと思って、東大受けたんですけどさすがに落っこちました(笑)。すべり止めには、学費が安かった中央大学を選びました。中でも法律学科が良いと聞いたので法律学科を。問題集だけ買って、最初から最後まで全部読んだ。読んだだけです。

受かると思ってたから遊びに行っちゃって。帰ってきたら受かってた。

ーすごいですね。すべて流れのままと。

そういうところが無謀なんですよね。全く何も考えていない。

学生時代は日比谷公園にある市政会館のエレベーターボーイのバイトをしていました。決まって月に一度来るおじさんがいて、「君、就職決まったの?」「全然考えてません」「日本テレビって知ってる?」「知りません」「ちょっと遊びに来てみる?」「はい」と。

そして見に行ったらスタジオを案内してくれて。なんだかガランとしているし、ライトが垂れ下がっているし。ここで力道山の試合をするのかな?くらいの理解しかありませんでしたが、「どうだった?おもしかった?入りたい?僕が推薦してあげるから」と聞くから「はい」と。ものすごい競争率だったようですが、また受かったんですね。

その人は日本テレビの著作権課長で、著作権協会が市政会館にあったので、月に一度会合来ていたということだったんです。

入社が決まり、「君が矢追くんか。何部に入りたい?」と聞かれました。TBSのカメラマンになっていた友人に技術よりはディレクターとかプロデューサーが良いと聞いていたので、「編成なんかいかがでしょうか」と答えると、「編成部も面白いけど、演出部も良いんだよ」と言うので、「それで良いです」と。

■たまには立ち止まって空を見上げようよ、と思った

ーとくに超常現象やUFOなどを取り上げるようになったのは何故でしょうか。


配属後、最初にドラマをやって、そのうちに「11PM」(日本で初めての深夜番組)をやりました。

「11PM」は深夜番組ですから、そもそもスポンサーもほとんど付かなかったんですよね。加えて、当時は23時台にテレビを見ている人も多くはなかった。だから当初は視聴率なんてゼロに近いんですよ。

立ち上げた後藤達彦さんというプロデューサーのことは、今も日本一のプロデューサーだと思っているんですが、局内を走り回ってとにかく色々なところからディレクターをかき集めて来たんです。小道具、メイク、食堂の主任とかね(笑)、そして「金曜だけは麻雀・ゴルフ。それ以外はなんでも自分が好きなモノを作れ、ケツは俺が拭く」と。だからみんなが勝手なことをやって面白かった。ストリップ好きな奴は本当にストリップだけ。夕日がすきな奴は世界中の夕日を流すだけとか、それでもokなんですよ。

僕も「何でもいいからやれ」と言われて困ったのですが、街を歩いている人を見てふと気になったのが、みんななんだか忙しそうで、ゾンビのようだということ。ぶらぶら歩いている僕から見ると、なんでこんなにみんな忙しいんだろうと。「これはきっと精神的に余裕がないんだ。これでは社会全体が煮詰まって危ないぞ。たまには立ち止まって空を見上げようよ」という番組を作ろうと決めた。みんな、立ち止まって空を見上げることってあまりないんだよね。

そしたら、本屋に「空飛ぶ円盤」と書いてある本があった。立ち読みしたらどうも、宇宙人が地球に来ているらしい、これにしようと。当時はUFOなんて言葉は無かったんだ、僕が流行らせたんだから(笑)。

ーそんなきっかけだったんですか(笑)

そう。その頃としては珍しかったんだよ。屋上にカメラを出そうなんて言い出すのは。

だけど、それは当時難しかった。技術部長に呼ばれて行ってみると、「お前か!矢追というのは。なんで屋上にカメラを出すんだ?」と言う。「宇宙人が飛んでくるから、それを撮るんです」と。「馬鹿野郎、冗談じゃねえよ!駄目だ、前例がない」と言われたので、「前例がないなんてと言ってると、テレビは発展しません!」とか言って、ごねたんだよ。そしたら、「お前、もし壊れたら弁償できるのか?」「ちょっと無理です」「ほら見ろ、だからダメだ」と。

これはやっぱりダメなのかなと思ったけど、「結局、出来ないんですね?」聞いたら、「できなくはないと」。技術部長も、技術屋として「出来ない」とは言えなかったんだろうな。「出来ないって言ってるわけじゃないけども…」と態度が変わってきた。

最終的にプロデューサーが政治力でOKにしたんですが、どうやってカメラを屋上に上げたのか、未だにわかんないんです(笑)。当時のカメラは今よりもずっと大きくて、太いケーブルでつながっていましたからね。

放送前、そのプロデューサーに呼ばれて、「お前、今日、宇宙人呼ぶんだってな。本当に来たらどうするんだ?」と言われました。「考えてませんでした」なんて言っちゃうと身も蓋もないから「お見えになったら接待くらいしないとまずいかもしれないと思います」と答えると、「それもそうだな。社長用の応接室を取っておいてやろう」と、部屋を予約してくれただけでなく、そこに「宇宙人様御席」と貼り紙までしてくれた。粋なプロデューサーでしょう?そういうプロデューサーが今いないという話なんだよ。

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