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災害時、避難所となる学校運営の問題と再開の課題 - 岸 裕司

新学期のこの時期は、ピカピカの元気な新入生たちの声がまちじゅうに鳴り響く心ウキウキの時期のはずなのに……。

 「体験しないとわからない」といった人の性(さが)が、実感として感じるのが災害に遭ったときではないでしょうか。

 昨年9月に起きた鬼怒川の決壊による茨城県常総市全域におよんだ大水害で、そんなことを感じました。

 被災した方々は「まさか川が決壊するなんて」と口々にいっていたからです。

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秋津コミュニティで毎年実施の防災被災訓練を兼ねた一泊キャンプで、学校に設置の防災倉庫に常備する簡易担架に子どもを乗せての避難訓練の様子

そのことは、21年前の阪神淡路大震災を経験していても、今年5周年の3.11東日本大震災と大津波や福島原発事故の際も被災した方々の「まさか自分が」との多くの反応からも感じました。

 そして、この4月の「熊本地震」も震度7の地震から、この原稿を書いている時点までに震度1以上は900回以上も続いています。

 気象庁は、引き続き激しい揺れを伴う地震に警戒するとともに、地盤が緩んでいることから土砂災害にも警戒を呼びかけています。

 渦中の被災された方々には、早く地震が収まってほしいことと、早期の復旧復興を願ってやみません。

学校が避難所に

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2011年3.11の際に秋津小学校コミュニティルームに避難してきた秋津の住民

 ところで、熊本では多くの学校が住民の避難所となり学校の再開はまだ一部。

 『毎日新聞』の4月24日付けでは、学校と子どもたちの様子を「学校再開いつ 子どもに不安感『地域でケアを』」の見出しとともにこのように報じています。

 「熊本地震の被災地で、児童生徒約15万人が依然として授業を受けられなくなっていることが明らかになった。避難所として使われる学校は熊本県内だけで163校に上っており、避難者の多い地域では休校の長期化も予想される。避難生活を強いられる児童らの中には不安感やいらだちを示す子もおり、専門家は地域でのケアを呼びかけている」と。

 記事にある写真――笑顔の子どもたちが住民やがれきの撤去に携わる自衛隊員らと遊ぶ姿に「ほっ」と温かくなりました。

 で、学校が避難所になったことは、これまでに耐震化が90%以上の学校で体育館を含めて進み耐震性が高いためです。

 いっぽう、文部科学省が4月21日に「地域住民の避難場所としての学校施設等の安全性の管理・確保等について(依頼)」の通達を熊本県などに出したためでもあります。

 また、東日本大震災後の2013年に改正された「災害対策基本法」でも「指定緊急避難場所」を同法第49条の4で、以下のように自治体の首長が事前に指定しておくことを義務づけているからでもあります。

 「指定緊急避難場所は、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合にその危険から逃れるための避難場所として、洪水や津波など異常な現象の種類ごとに安全性等の一定の基準を満たす施設又は場所を市町村長が指定する」と。

学校の避難所生活は
普段からの学校と住民との協働が大切

 で、初期段階の避難所生活は、水や食料確保、また災害の生々しい体験の恐ろしさや先行き不安などからのメンタルヘルスや感染症の予防などが喫緊の課題です。お風呂にも入りたいですし……。

 でも、避難所生活が長期に及ぶようになると住民自治力が問われるようになります。

 同時に、学校と住民との普段からの交流や授業・行事などの協働が進んでいたか、いなかったか、が決定的に重要であることがはっきりしています。

 そのことは、東日本大震災で実証されています。

 東日本大震災後に避難所になった学校の40校の校長に、仙台市は調査をしました。

 半分の20校は「学校支援地域本部」を設置している学校で、20校は「学校支援地域本部」の未設置校です。

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3.11東日本大震災後の仙台市内の学校が避難所になった際の運営調査データ 
出典:仙台市教育委員会2011年


 「学校支援地域本部」は、教育基本法が2006年に改定された際に新設の第3条「生涯学習の理念」や第13条「学校・家庭・地域住民の連携協力」に基づき文部科学省が事業化した学校・家庭・住民が一体となって子どもを育てることや、教師を支援しつつ学校教育の充実とともに生涯学習社会の実現や地域の教育力の向上を目的とした事業です。

 全国数万の小中学校での活動事例では、クラブ活動を住民と協働したり、運動会を地域の運動会と合同で行ったり、安全面でも登下校時に大人が見守り、また災害時の学校での避難所生活を想定しての防災キャンプなど多彩です。

 つまり、学校・家庭・住民が一体となって、日常的に交流が楽しみながら進み、結果的に互いの顔と名前が一致する温かな関係が築かれていくのです。

 で、仙台市の40校の校長への質問のひとつが以下です。

 問:避難所において自治組織が立ち上がる過程は順調だったか?

 すると、「学校支援地域本部」を設置している学校の95%(19校)が「順調だった」と回答したのです。

 いっぽう「学校支援地域本部」未設置校は、逆に「混乱が見られた」が40%(8校)もあり、「順調だった」は35%(7校)しかなかったのです。

 このことから、普段からの学校と住民との協働が、いかに大切なことなのかが如実に示されました。

避難所の学校の先生も被災者

 また、先生も被災者である場合も多いです。本人は無事でも家族や親戚・知人などの場合もありますし。

 そんな先生を心配してくれたのも「学校支援地域本部」を設置している学校に避難してきたボランティアの地域住民でした。

 先の調査の自由記述での「学校支援地域本部」を設置している学校ではこんな温かな発言があります。

 「『先生は学校のことと家族のことを考えてください。避難所は私たちにまかせて』と学校支援ボランティアからの声には胸がつまりました」

 「会議だけで顔を合わせる人よりも、定期的に子どもたちや先生たちと一緒に汗をかいている人はごく自然に避難所を支援する側に立っていました」とね。

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避難所生活が長期におよぶとお風呂に入りたい。秋津小学校の校庭に掘った手掘り井戸の水を沸かして子どもたちが露天風呂体験。毎年の防災被災訓練を兼ねた一泊キャンプで

  先生だって人の子。避難住民のしんどさがわかるだけに、ボランティアなどの温かい心遣いはうれしいんですよね。

 夜も学校に泊まり込み、子どもたちはもちろん多くの住民のお世話をしていたのです。

 いっぽう、「学校支援地域本部」未設置の学校ではまったく逆でした。

 「物資を配布するにも、避難者の顔もわからず混乱しました。権利を振りかざして物資を奪っていく人たちや、どさくさに紛れて決められた数量を守らない人がいても見過ごすしかありませんでした」との記述があります。

 このような避難所運営の格差は、「日頃の学校と地域住民のかかわりの質の格差でもありました」とも記しています。

 このことも、普段からの学校と住民との協働が、いかに大切かが如実に示されたと思います。

学校再開に向けて

 先生らは、以下の法律で災害時も勤務が可能になっています。

 「義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置に関する条例」の第6条には「教育職員を正規の勤務時間を超えて勤務させる場合は、政令で定める基準に従い条例で定める場合に限るものとする」との規定があり、同条の運用では「災害時」も規定されているからです。

 とはいえ、学校の早期再開を避難所住民も望むのは、今回の熊本地震でも同じです。

 そのことは、先の仙台市調査での「学校支援地域本部」を設置している学校でも、こんな温かな発言がありましたから。

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3.11後の避難所の陸前高田市立米崎小学校で秋津コミュニティのおじさんが紙芝居で慰労中。2011年4月18日、筆者撮影

 「コーディネーターやボランティアは学校再開に向けての避難所閉鎖の時にこそ存在感が際だちました。避難住民と子どもたち、学校の様子がよく分かっているからこその活躍でした」と。

 さらには「今求められること!」では、以下のことも記しています。

 「保護者の多くが、子どもをひとりで自宅においておきたくないと考えています。また、子どもも地震への不安がぬぐえず、放課後子ども教室の需要がますます高まっています」

 「子どもたちの姿は、これまでに見たことのないようなオーバーアクションです。地域総ぐるみによる子育てこそ、復興には不可欠だと思います」

 またある程度落ち着いてからの課題に対する希望も記しています。

 「全国からのボランティアが去り、雪がちらつく頃にこそ本当の復興は住民の手によって進められていくものだと思います」と。

 これらの体験経験は、熊本の今後の復旧復興にも示唆するところが多いことと思います。

 熊本は、暑い夏に向かいます。ご自愛いただき心身ともにお元気になられることを祈念しています。

 てなことで、今回はマジなお話でした。

 はい、では次回まで、アディオス! アミ~ゴ!

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