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なぜメディアは「訴状が届いていないので回答できない」と伝え続けるのか - 及川修平

国道を走行中に道路脇の木が倒れ、乗っていたスポーツカーが大破したのは管理する富山県に問題があったとして、裁判になったというニュースがあった。
トヨタ2000GT大破「倒木のせい」 男性が県を提訴(朝日新聞デジタル 4月14日(木)16時5分配信)
今回被害にあわれた方は大変お気の毒に思う。速やかに本件が解決することを切に願っている。

ところで、ニュース記事によると、訴えられた富山県の道路課の回答はこうだ。

「訴状が届いていないので、コメントできない。」

裁判がニュースになる際よく耳にする「この訴状が届いていないのでコメントできない」という回答。

「そろそろ訴状が届いた頃ですよね?」と時期を見計って取材をした上で、相手の言い分を掲載している記事が一つくらいあってもよさそうなものだが、不思議とそのような記事は見ない。

では「訴状というものがいつ届くのか?」ということから、訴状というものにまつわる話をしてみよう。

■訴状っていつ届くの?

では、まず、訴状がいつ届くのかということだが、裁判の内容によって異なるものの、概ね訴状を裁判所に持ち込んでから1週間から2週間で訴えられた相手に届く。

注目される裁判などでは、原告やその代理人は裁判所に提訴すると、その足で司法記者クラブに向かい、記者会見を行う。

つまり、訴えられた相手よりも先に記者の方が訴状の内容を知ることになるわけだ。

記者会見が終わった後、記者は裁判の相手方にコメントを求める。このようなタイミングで記者から裁判の内容について問われても、当然、訴状などを目にしているわけもなく、訴えられたことさえ知らないかもしれない。

ニュースの中で「訴状が届いてないのでコメントできない」という回答が出てくると、とても不誠実な対応であるかのように見えるだろう。

しかし、これは何も訴えられた相手が不誠実な対応をしているわけではなく、裁判の相手としては本当に訴状を目にしていないわけで、「訴状が届いていないので、コメントできない。」としか言いようがないのだ。

■架空請求を裁判で?

ところで、多くの人にとって、日常生活の中で「訴状が届く」ということは極めて稀なことだ。

しかし、もしも訴状が届いたら…。裁判のシムテムをしっかり理解して対応に当たらないといけない。

数年前には、架空請求を裁判でやってくるということがあった。

架空請求とは、現在でも多い。アダルトサイトを少し見していたらいつの間にか登録をしたことになっていて、登録料や利用料などといって多額の費用を請求される手口が目立つ。

このような架空請求は「無視しておけばよい」というのがセオリーなのだが、裁判で架空請求をするというのは、これを逆手に取ったやり方だった。

裁判というのは、訴えられた内容に対して何も返答をしないと「訴えの内容をすべて認めた」という扱いにしてしまう。

架空請求だからといって、訴状を無視しておくと、訴えの内容をすべて認めたものとして判決が出てしまう。そうなると、架空請求ながら、裁判所のお墨付きを得た権利となってしまうのだ。判決が確定してしまえば、これをひっくり返すのは難しくなってしまう。

■「それ、時効です」と言わない限り消えない

このような架空請求を裁判で行うというケースはさすがに最近では聞かなくなったが、ここ数年よく聞くのが時効の問題である。

これは時効にかかっているような古い権利を裁判で請求してくるというものだ。

時効は、権利によって様々だが、例えば、貸金事業者である会社から借金をした場合、支払いを怠ってから支払いをせずに5年を経過すると時効となる。

しかし、5年を経過してもそれだけでは借金は消えない。「それは時効だから払いません」と言わない限り、時効の効果は発動せず、借金は消えないのだ。

時効にかかるような権利の場合、損害金が多額となっているケースが多い。残っている借金は少なくても、それを上回るような損害金が上乗せされて請求されることがほとんどだ。

もちろん、時効にかかった借金であっても返済を続けるということがあっていいわけだが、なかには時効の制度を知らないまま裁判に臨んでいる人もいる。

裁判所は中立的な立場から、当然ながらアドバイスなどしてくれない。時効にかかっている請求であっても「時効って言えば払わなくてよくなりますよ」などとは言ってくれるわけもなく、そのまま、裁判が終わってしまっているケースも多い。

訴状が届いても、裁判所は必ずしも自分の味方になってくれるわけではないということを肝に銘じて、裁判に臨む際は、自分自身でしっかりとした準備をしなければならない。

■まとめ

裁判のニュースはよく目にするものだが、なかなか日頃体験することでもないので、実際のところどうなるのかよく分からないことが多いことと思う。

冒頭の例でいれば、仮に訴状が届いたところを見計らって記者が取材に行っても、「内容を検討中である」という回答になるのが落ちかもしれない。ある程度の規模の企業になれば、顧問弁護士などを抱えているわけで、どのように対処するべきかしっかりと検討してから事にあたるのが普通だからだ。

そもそも「訴えた」ということがニュースなのであって、訴状が届くのを待ってから記事にしていてはニュースとしての鮮度が落ちてしまうというのが実際のところかもしれないが。

それはさておき、しっかりと検討してから臨むべきであるという点については、本来顧問弁護士などのいない一般の方々にも当てはまる話だ。

裁判所は、自分に都合よくアドバイスをしてくれるわけではないので、訴状などが届いた場合は、そのまま裁判所に出かけていく前に、専門家に相談するなど、しっかりとした情報収集から始めるべきだろう。

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