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女の子はいつから「頭からっぽ」になってしまうのか ~ 「ピンク色の世界」に閉じ込めないために私たちができること - 堀越英美

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 PVでは、ピンクのパジャマに大きなパステルカラーのリボンをつけた少女たちが、ピンクのベッドの上で飛び跳ねながら枕を投げ合っている。甘い声で歌われる歌詞は、「女の子はかわいくなきゃね」「どんなに勉強できても愛されなきゃ意味がない」……こんなアイドルソングが、女性蔑視であるとして批判を浴びた。

 女はおバカ、男はお利口。アイドルソングに限らずひんぱんに目にするステレオタイプではあるが、子育て中の身としてはやや奇妙な気持ちになることがある。小学生以下の子供たちを持つ親たちの世界では、まったく逆のステレオタイプが蔓延しているからである。すなわち、男の子はおバカ、女の子はお利口。あるカリスマ男性塾講師は、母親に向けてこんなメッセージを発している。「11歳女子は新人OL、11歳男子はカブトムシだと思って育ててください」。大変だ、男の子はおバカどころか人間ですらない。確かに、小学校時代は女子のほうが男子よりも真面目に勉強に取り組む傾向があるけれども。それにしても、11歳にして社会人扱いされるほど「お利口」だった女子は、何をきっかけに「おバカ」になってしまうのだろう。

「女の子は能力より見た目が重要」

 ガールスカウト日本連盟が2014年に行なった国内の女子高生対象の調査は、その疑問に答えてくれるかもしれない。同調査によれば、「人は能力より、見た目で判断されている」と考える日本の女子高生は66%にも上る。まさに問題の歌詞の通りだ。そして実に74%の女子高生が、「自分の容姿に自信を持っていない」と回答した。「見た目のほうが能力よりも重要」と社会から刷り込まれた女子が、自分の見た目に自信を持てなかったら? 内閣府が7か国の13~29歳の男女を対象に行った調査「平成25年度 我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」によれば、日本の女子は「自分への満足感」が15歳で著しく低下することが指摘されている。これは、日本と同様に女性への容貌プレッシャーが強い韓国の女子にもみられる現象だ(「第3部 有識者の分析」より)。

「ピンクカラー」に追い込まれる女子たち

 能力を評価されていると信じていられた子供時代は「お利口」になるべくがんばっていた女子も、「女の子は能力よりも容姿」「女の子は三角関数よりも草花の名前を覚えたほうがいい」といった価値観にさらされることでみるみる自信をなくし、失われた自尊心を取り戻すべく女子力向上にリソースを振り分ける。この時期の少女が摂食障害や不安障害などの精神上の問題を抱えることは珍しくない。注目を集めたい、自分が特別であると感じたいという欲求は思春期の男女には普遍的にみられるが、少女にとってそれは知的好奇心を追求したり、地道な訓練を積んだりすることよりも、「頭からっぽのかわいいお人形さんでいなさい」という期待に応えることで実現できる。つまるところ、女の子たちは「お利口」から「おバカ」にいきなり転生したわけではなく、周囲の期待に応え続けたにすぎない。日本社会の中でいい子でいたいなら、ピンクのパジャマにくるまれて、頭からっぽのふりをしていたほうがいい。お勉強するにしても、数学なんてとんでもない。女の子らしく文系だけにしておいたほうが無難だ。結果として、女の子の多くは「伝統的な女性の職業」=「ピンクカラー」に追い込まれる(ピンクカラーは社会評論家ルイーズ・カップ・ハウの命名)。ピンクカラーは概して低賃金だったり、狭き門だったり、年齢差別が横行していたりと、安定性に欠けるものが多い。さまざまな調査が明らかにしている通り、理系出身者は文系出身者より年収が高いため、勉強、特に数学を避けた女子は高収入の職に就くことが難しくなる。

  こうした風潮は男女間の賃金格差の一因となっており、ひいては母子家庭の高い貧困率といった深刻な社会問題を引き起こしている。

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