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【読書感想】組織の掟

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 この新書を読んでいると、難関をくぐり抜けて外務省に勤めていたにもかかわらず、「ノンキャリア(「国家公務員総合職試験」ではなく、一般職試験を受けて入省した人)」だった佐藤さんは、便利屋としてかなりこき使われていたようです。

 ものすごく汚い便所の掃除も押しつけられていたのだとか。

 そんななかで、佐藤さんは、上司と波風を立てずに、いやな仕事を回避する方法などを工夫しながら生き延びました。

 

 この新書のなかでとくに興味深かったのは、第3章の「組織の分析術」で紹介されている、「スパイ適性テスト」でした。

 僕は予想通り「普通」の結果で、ちょっとホッとし、けっこう残念ではあったのですが、分類のなかで、佐藤さんが出会ったきたさまざまな人たちの話が出てきて、外務省といっても、本当にいろんな人がいるのだな、と感心してしまいました。

 目的のためなら手段を選ばない、という人もいれば、能力はないのに、プライドだけは高い人もいる。

 たとえば外務省のキャリア職員で東京大学医学部中退者がいた。おとなしい、人柄の良い人だ。現役で東京大学理科3類に合格した。おそらく成績では、日本の同学年の高校生のうち、ベスト10に入っていたはずだ。もっともこの人には、医者になりたいという気持ちがまったくなかった。ただ目の前にある最も難しい課題に挑み続けているうちに、気がついてみると日本で入学試験が最難関の東京大学理科3類に合格していたのだ。

 この人は、もともと他人とのコミュニケーションがあまり得意ではない。医師になると、患者と会って話をしなくてはならない。それから、血を見るのも大嫌いだ。教養学部から医学部に進学する段階になって、この人は「自分は医者に向いていない」ということに気づいた。そして、両親に「どうしても医学部には進学したくない」と泣きついた。家族会議の結果、両親はその人に「医者にならなくてもよいが、安定した職業である外交官になってほしい」と伝えた。そこでこの人は、当時、外務省が独自に行っていた外務公務員上級試験を受け、合格した。

 この人は、人付き合いが嫌いなので、ロシア語の会話は得意ではなかった。しかし、ロシア語の読解力は高かった。ロシア語だけでなく英語の読解力も高い。インテリジェンス部局にいるときにこの人は米国に出張し、CIA(米中央情報局)の分析に関する訓練を受けた。それが性にあっていたようで、CIA流のマトリックスを用いた分析を外務省に導入した。


 そうか、こういう事例もあるんですね。

 成績が良すぎる人の悲劇、と言っていいのか……

 そんなに人付き合いが嫌いなのに、外交官で良かったのか?とは思うのですが、それはそれで、能力があれば、「外交」の中に、向いている仕事というのはあるものみたいです。

 個人的には、臨床医じゃなくて研究者になるか、厚生省にでも入ればよかったのに、とも思うのですが、とにかく「医者」という仕事がイヤになったのだろうなあ。

 ちなみに、この人はソ連から独立した小さな国の大使として外務省でのキャリアを終えたそうですが、「本人は、医者にならずに済み、外務省でも派閥抗争に巻き込まれることもなく、部下には無理な仕事をさせず、家族を大切にして、最後は小国であれ、特命全権大使になることができて満足していた」そうです。

 僕にとっては、こういう上司が理想かもしれない。

 佐藤さんも「こういう人生も決して悪くないと思う」と仰っています。

 佐藤さんには、こういう生き方は難しいのではないか、という気はするけれど。


 また、外務省での仕事の割りふりを例示して、交渉事で、ホテルや会場の準備などの雑用がちゃんとできない人は、外交戦略を左右するような交渉現場での重要な役割を果たすことはできない、という話もされています。

 一事が万事、というか、「こんな雑用なんて」という人は、「雑用じゃない仕事」を割り振られても、うまくこなすことができないのだそうです。

 それは、僕自身の経験からも、頷ける話なのです。

 日頃から「本気」を出していない人が、大舞台でいきなり「本気」を出せるはずがない。

 「本気」を出すのにだって、トレーニングが必要なんだよなあ。気持ちだけの問題じゃなくて。


 佐藤さんがこの新書のなかで述べている「組織で生き残るためのインテリジェンス」って、目新しいものではなくて、むしろ古典的な感じがするものが多いのです。

 そして、「組織のなかの組織」という感じの外務省でのノウハウは、ネットで見かけた「脱・社畜術」よりも、普遍性が高いのではないかと思われます。

 民間企業でも役所でも「上司は選ぶことができないが部下は選べる」というのが大原則だ。こう言うと、「実際には部下を選ぶことなんてできないよ」と反論されそうだが、筆者から言わせれば、選ぶことはできなくても断ることはできる。

 ときどき人事担当者から「ちょっと問題のある人物だが、能力はある。しばらくの間でいいから、君のところで預かってくれないか」とか「他の部署では、あいつの能力を引き出すことができない。君ならできるので、是非、引き取ってくれないか」などということを言われても、断固「ノー!」と言って跳ね返すことが、自分のチームの運営を円滑に進めるコツだ。

 もし、派閥やネットワークにまったく参加していない人がいるとすれば、その人は能力が劣っているか、性格的に他人と信頼関係を構築することができないので、仲間に入れてもらえないのである。

 だから社内のコミュニケーションを円滑にする付き合いは、きちんと消化すべきだ。課内旅行や懇親会は、二次会を含め、付き合うべきだ。

 筆者と対談したときに、竹中平蔵さんがビジネスパーソン時代の経験を披露していたが、二次会がカラオケのときは、出口に近い席をとっておき、早いうちに2曲くらい歌を歌って、「あいつはいた」という印象を確実に残した上で、静かに帰って、時間を無駄にしないようにしたということだが、こういうノウハウを身につける必要がある。

 重要なのは、「あいつは人付き合いの悪い変わり者だ」とか「人間嫌いだ」という評判を立てられないようにするとことである。会社(役所)勤めは、要領をもって、その本分とするということを忘れないようにする。


 僕はこういうのが全くできていない人間なので、反省しながら読みました。

 僕の場合は、とりあえず頑張ってみてもできなかったのだからしょうがない、と諦めているところもあるのですが。

 少なくとも、こういうのが「王道」だということは、これから組織に属する人は、知っておいて損はないと思います。

 あなたが、僕と同じ轍を踏む必要はないのだから。

 こういう新書を書いている佐藤優さん本人が、結果的には組織と袂を分かってしまったことを考えると、一筋縄ではいかないものだ、としか言いようがないのだけれど。

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