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ブラックからブラックへ~若者支援の限界(田中俊英)

■若者一人ひとりの「未熟さ」はそのあと

ブラック企業を鬱になってやめた若者が、若者就労支援機関を利用して再就労できたとしても、結局は「ブラック」的な職場環境に入ってしまう。

ブラックへの復帰は言いすぎかもしれないが、おそらく「地域若者サポートステーション」をはじめとした現在ある若者就労支援の限界が見え始めたようだ。

それは、この、藤田孝典氏と今野晴貴氏の対談(「働いても幸せになれない日本」に生きる若者 労働はもう日本の貧困対策を担えない)でも言及されている。

対談にもあるように、若者をとりまく「就労」の状況は、1.職業訓練の未熟さ、2.非正規雇用の連鎖、3.ブラック企業の蔓延など、限りなく暗い。これらはすべて現在の経済状況から生み出されているものであり、若者一人ひとりの「未熟さ」はそのあとにくる。

が、現在の就労支援においては、この若者の未熟さや「できなさ」のほうが強調され、キャリアカウンセリングやセミナー等の「若者が自助努力すれば道は開かれる」という思想が蔓延している。

これはこれで必ずしも支援側を欺瞞性で追求することはできず、若者支援の現場においては、1.個別支援に限界があること(ひきこもり体験や発達障がい等で若者一人ひとりの社会化には数年単位の時間を要する)や、2.階層社会化の壁(非正規雇用しか社会参加への道のりの発端がない)がある。

ある意味、若者個人の能力に焦点化するこれまでの若者支援も、かなり努力してきてはいる。

■「よかった、よかった」

僕自身も、ひきこもり若者の社会参加支援をここ 15年以上続けてきて、それなりの成果(正社員や年間契約社員への誘導)は出したと自負している。

僕はここ数年、児童虐待や貧困支援へと足場を移動させたため現在の若者支援については具体的に実感はできないのだが、以下の発言を見るまでもなく、「ブラックからブラックへ」という笑えない状況も確かに出てきているようだ。

「社会福祉の世界でも、若者の就労支援に乗り出していますが、雇用の現場がわかっていないので、ブラック企業でうつ病になってしまった人を、またブラック企業に押し込むようなことが起きてしまっています。それでも就職が決まると、支援者は『よかった、よかった』と、就職祝いのパーティを開いて大喜びしてしまっている状態です」(藤田氏)

頼りないのは、藤田氏のような労働問題から若者問題を語る新しい発信者ばかりが目立ち、サポートステーションで日々奮闘する支援者の声がなかなか聞こえてこないことだ。

地域若者サポートステーションは現在、全国に160ヶ所ほどあるそうなので、そこではかなりの成果を出しているはずだ。

藤田氏のような「新興勢力」(僕はファンですが)に言いっ放しされるのてはなく、現場からの反論がほしい。

あるいは、「ブラック」として十把一からげに指摘される人々も、本当のブラックの人々は論外だとして、過酷な労働現場にもそれなりの意味とやりがいがあると自覚する社長たちは反論してほしい。

■「ニート」が輸入されて10年以上

いずれにしろ、2003年に日本に「ニート」が輸入されて10年以上がたち、「若者自立塾」(現在中止)や「地域若者サポートステーション」等の名のもとに膨大な予算が投下されて2016年を迎えた現在、肝心の若者の問題は全体としては一向に解決していないことから(ニート数等は全体的には変化なし)、そろそろ一つの総括を出す時期に来ている。

それを「ブラックからブラックへ」といった粗雑な議論でまとめるのではなく、現在の日本の経済状況と、10年以上の若者支援を展開した結果と、それでもまだニート問題は継続し続けていることについて、社会状況的かつ経済分析的かつ政策的な分析のもと、新しい政策提示をしてほしい。

大きな意味では、少子高齢社会において補足労働力であることを期待された「若者」はそれほどの戦力にはおそらくならず(補足労働力としては他に「女性」と「65才以上高齢者」がいるがふたつとも課題はあるものの若者よりはマシ)、それは戦力どころか、結局「被支援者」だった。

労働力どころか、社会参加に3年以上はかかってしまう「クライエント」だったのではないたろうか。

■日本の停滞の原因

そうしたクライエントたちに対して、現在の若者支援者はやりがいを感じ日々奮闘する。クライエントである若者も、その熱意に応えようと時間はかかるが社会化にチャレンジする。

それらの「若者支援」のあり方は美しい。かわいそうなのは、これらの「支援」に対して評価されず「遅い」とい言われたり「政策的に失敗」だとまとめられることだ。全国の若者支援の現場では、社会参加に関して「奇跡」のような出来事が起きている。

それらの「奇跡」を僕は評価したい。そして、これら若者へのアプローチは、社会政策的あるいは労働問題的アプローチではなく、福祉的「支援」のアプローチだとそろそろ位置づけ、現場の支援者も若者も楽にさせてあげたい。

問題は、それら対象者が、若者の一学年(100~120万人)以上は余裕でいることだ。客観的に言って、この、労働力になりえず中途半端な福祉対象者(若者)が学年人口を上回って存在することが、日本の停滞の原因のひとつであることは間違いない。★

※Yahoo!ニュースからの転載

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