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賢い親は、20年かけて「内定が取れる子」をつくる - 親技のカガク【22】

エッセイスト、教育・子育てアドバイザー 鳥居りんこ

親が子の「愛され力」と「面構え」をつくる

私事で恐縮だが、この春、新社会人として働き出したウチの娘の隣には1期上に当たるブラジル人のお兄さんが座っているらしい。ブラジル人と言っても、フランス人とイタリア人のハーフだそうで、アメリカの大学を出ている。

そこは純粋なるドメスティック企業なんだが「その人とは何語で意思疎通を図るのか? アンタ、英語(も)できないじゃん?」と聞いたら、娘はこう答えた。

「日本語だよ? 『なんでやねん!?』って流暢な大阪弁でつっこんでくる」

彼は日本に興味があったので、日本語を学び、その延長線上で日本の企業に就職したんだそうな。つまり、彼は20代後半で5か国語を普通に話せるということになる。

嗚呼、もう世の中はこういう時代なのか!? とびっくりした。イジンさんウヨウヨは外資系企業だけの話かと思っていたら、今や、純国産企業にも普通に世界中から「この会社で働きたいから」という理由だけで人材が押し寄せている。

人材のグローバル化というものは思うよりもスピードを上げているに違いない。

今の学生さんはそういう背景も抱えながら「地球規模」のライバルたちと共に就職戦線を戦わなくてはならないのか!? とその厳しさに身震いしてしまうほどだ。

私は長年、子育て系の取材を重ねているが、昨今はその延長線上で子育ての着地点とも言える「就活事情」を垣間見ることも多くなってきた。就活戦線を戦った本人やら採用担当者らと直接、話をする中、最近はこんなことを強く感じている。

就活で一番、大事なポイントは結局「面構え」ではないかと。

人事担当者「面構えで内定出しました」

あるメーカー系有名企業でこんなことがあった。学歴フィルターはないと言い切る会社ではあるんだが、結果として「あるやん!?」ってことになっている。

その会社のレベルでは学歴偏差値的には少し見劣りする大学出身の子(男子)が入社することになった。人事担当者はこう言っていた。

「アイツは面構えがいいんで、採用しました」

就活内定は学歴の上に資格を取ったり、ボランティア活動で海外に行ったり、サークル活動に勤しんだりして「保険」を積み上げて来た有能学生だけのものではないのだ。

就活戦線に勝利する能力はいろいろあるし、業界によっても「傾向と対策」は必須であるが、それを全部差し置いたとして、詰まるところ「面構え」の善し悪しで決まっているような気がして仕方ない。

「面構えが良い」というのは顔立ちが良いとか、ルックスが良いということではない。目力がある、信念がある、自己解決能力がある、真面目である、賢いなどの己の長所が顔ににじみ出ている子を指すのであるが、一言で言い切るならば、ズバリ「コイツと一緒に仕事がしたい」と思われるかである。

私はこの能力を「愛され力」と言い換えているが、観察するに、この「愛され力」が高い順に内定をゲットしているように思っている。

「愛され力」は言うなれば各家庭でしっかりとその存在を認められて育って来た子どもに備わるもので、生まれて来てから、就職年齢までの長い時間をかけて熟成された力なのだ。つまり、就活は「今、この瞬間」ではなく「今まで」の生き方を見られるということだ。

実際、ある大人気のIT企業の採用担当者T氏はこう言った。

「内定の取れる子と取れない子の違いは、社会で働くことの目標がある人とない人の差です。そこがまず分岐点になり、その中で行動を起こせている人といない人に分かれます。

自分の将来像をしっかりと持っていて、それを実現する行動力がある人は将来性のある人材の可能性が高いのです」

要は「働く」ということをどのくらい真剣に考えているのか、自分の将来を考え抜いているのかをチェックして、軸が備わっている子なのかどうかを確かめたいということらしい。

内定学生は「他者」に対する想像力がある

よって、各企業からはこういう質問が飛んでくる。「なんでウチの会社なの?」

自分がなぜ、その企業を志望しているのかを説明するためには自分は何が好きで、なぜ、それが好きなのか、なぜ、この仕事がしたいのか、なぜ、この業界なのかということを突き詰めて考えて、しかも答えを持っておかないといけないのである。

面接では必ず「なぜ、そう思うのか?」は深堀りされるので「軸」がブレブレでは最初から勝ち目はない。

採用担当者T氏はこうも語る。

「『面接で何を見るのか?』ですか? 主に『客観性』を見ます。考え方の節々に周りを見る力をどれだけ備えているかということを重視します。学生時代には『自分らしさ』を重視したアウトプットを求められますが、社会でのアウトプットは常に徹底したクライアント、ユーザー目線での仕事が求められますので、そういった感覚に優れているかを大事にしています」

この言葉で思い出した。

有名広告代理店の最終面接で落ちてしまった子と採用された子がいる。

採用されなかった子はこういう思考で面接に臨んでいた。「自分→近くの人(社内)→他人(ユーザー)」。常にベースが自分軸になるので「自分がこう思っているから、皆もこうだよね」という発想になるそうだ。

一方、内定が出た子は自分軸ではなく他人軸。つまり「向こう側にいる人」を考えていることがわかったので採用されている。

新人に対して企業側も「今すぐ巨万の富を生み出せ!」なんていうような大それた要求はしていない。ただ「働くということはどういうことなのか?」をきちんと持っていてほしいということは最低限の要求のようだ。

そこで内定を取った子は「自分の意見は常に正しいわけではないと思っています」と面接官に答えたと言っていた。

内定学生は「人の心に何かを残す」

今はインターンシップ制度を導入している企業も多いが、それに行ったからと言って即採用されるわけではない。されるわけではないが、チャンスは増える。

では、そこで長時間、何を見ているのか?

と、いろんな企業の採用担当者に話を聞きまくったところ、コミュニケーション能力やら、技術力やら、柔軟な対応能力やら適切なアウトプットやら、様々なご意見があったんだが、ひと言で言い切るのならば、やはり「愛され力」であった。

もう「一緒に働きたいと思わせる魅力を持っているか?」に尽きる。T氏は言う。

「資格を持っているから、たくさん旅行をしているからなどといったものではなく、その人にしか作り出せないセンスや人間性、周りを巻き込める力や行動力など抽象的ではありますが、人の心に何か引っかかるような能力は魅力に感じます」

さあ、就活戦線は始まったばかり。もし、苦戦が続いているのならば、今一度、自分の魅力について考えよう。周囲の人に聞いてみるのもいい方法だ。

絶対に何かは持っているのが人間なので、そこに気が付けるかどうかが勝負の分かれ目だ。その自分にしかない魅力を足がかりにして、自分がどのように社会貢献を果たしていくべきかをしっかりと組み立てよう。

そうすれば、きっと「一緒に働こう!」と言ってくれる場所が見つかるはずだ。心折れている場合ではない。内定目指して、頑張るのは今なのだ。

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