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祖母が倒壊家屋の下敷きに…私が見た熊本地震(1)

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■集落で生き埋めになった7人を救った消防団

このわずかな隙間から祖母は救出された


私たち家族はそれから一睡もしないまま、朝を迎えた。

午前7時を過ぎた頃だっただろうか、父の携帯電話に、熊本赤十字病院のK医師から突然電話がかかってきた。助けだされた祖母は同病院に搬送され、黄色のトリアージのエリアに居るので、迎えに来て下さいということだった。面白いことに、祖母が父の携帯電話の番号を暗記していたため、連絡が取れたのだった。ほどなく、市内で車中泊していた妹が迎えに行き、祖母と対面した。祖母は茫然自失の状態だったのか、はたまた老眼鏡を失くしていたせいか、妹に「誰ですか」と尋ねたという。妹は泣いたという。12時前には帰宅の許可が降りた。二人の昼食は、車にあったドロップだけだった。

祖母は左大腿が挟まれていたが、無傷と言ってよい状況であった。
写真で見ると、祖母が助かったのが奇跡的だったということが判る。どの家も、垂直に崩壊したわけではなく、四隅のひとつに向かって斜めに崩壊していたため、1階部分にも空間が出来ていたのだった。

しばらくすると「爺さんがこの家は梁が立派だから、絶対壊れんと言っとったのに壊れた」「(祖父の名前を)何回も呼んだのに、返事もせん(伯父はすぐ近くから、返事をし続けたというが、祖母の耳が遠く聞こえなかっただけなのだ。)」などと皮肉を言えるほどには元気を取り戻した。

ちなみに祖父母は1995年1月16日、神戸で開かれた親戚の披露宴に参加していたのだが、昔気質ゆえか、親類が宿泊を勧めるのを断り、夜行バスでの強行軍を選択した。明け方、九州で阪神・淡路大震災発災の報を聞いたのだった。

何度も何度も、熊本とやりとりをしながら、私たち家族は不安な気持ちのまま、新幹線で郡山に向かった。新郎側の皆さんは、熊本から来たということに驚いていた。

披露宴の最中も、祖母と伯父は当然避難所生活、妹も市内で車中泊になりそうだというような連絡が次々に入った。ともに食糧にも事欠くという話に、流石に父も泣いていた。東日本大震災を経験している伯父からは、「5年経てば、笑い話に変わるようなこともあるから」と励まされた。

明治期に建てられた親類宅。祖父もここで育った。
なお、集落では7人が一時生き埋めになっていたということだったが、皆口々に自分が生きているのは奇跡だと語っていた。ある人は、気がついたら目の前に2階の天井板があったと言い、またある人は、倒れてきた箪笥の扉が開き、その中に収まる格好になって助かったと言っていた。

地面から「ギー」あるいは「ジー」というような妙な音がしたという人もいた。音が聞こえたと思った瞬間、「ドン」という大きな揺れがきて、一気に電気は消えたという。寝ていたベッドから身体が宙に浮いたという話も聞いた。

その一方、人は助かったが、家畜は犠牲になった。乳牛を飼っている人は、建物の下敷きに牛の最期の鳴き声が聞こえたと言っていた。また、助かった乳牛も、ただ繋いでおくことしかできず、廃業もやむ無しという話だった。

ついでながら、7人を救助したのは消防や警察などによるものではなく、集落の人たちの自力によるものだったため、その組織力というか、団結力がちょっとした話題になっていた。

自警団を組織し、集落の農機具倉庫に寝泊まりし、交代で夜警を行っていること(実際に、集落に至る農道に怪しげな車列が現れ、近づいていくと猛スピードでバックしながら退散したという)、あるいはそれぞれの特技を活かし、近隣の施設から水を引き、ウォシュレットまで作ってしまったというエピソードなどは、テレビのクルーも大変興味を持って撮影しにきたという。(つづく

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