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コンビニビジネスは“光”ばかりではない - 『コンビニ店長の残酷日記』著者・三宮貞雄氏

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おでんの箸やからしのコストは加盟店が負担?!

BLOGOS編集部

弁当だけでなく、レジ横にあるコロッケなどの揚げ物や季節商品のおでんや肉まんなども同じ構図だ。廃棄が出ても売上原価に入れられないから、余った食べものは自腹を切ってでも購入するハメになる。おでんなどは仕込みやらで、とても手間がかかるのだが、儲けは思ったより少ないし、箸やからし、容器などは加盟店持ちだ。

さらに、恵方巻きやクリスマスケーキ、お中元、お歳暮、おせち料理などのキャンペーンなどはノルマがあり、それを達成できないと「やる気がない」と見なされて、契約の更新をしない等、ちらつかされるから必死だ。とはいえ、そのような商品をコンビニで買うお客様は少数派だ。悪いSVから突きつけられたノルマを達成するために自分は当然のことながら、友人や知人に頭を下げて買ってもらう。アルバイト店員にも頭を下げて友人らに買ってもらうようお願いするのは日常茶飯事だ。

そして、一国一城の主であるはずのオーナー店長だが、なぜか毎日の売上は本部に送金しなくてはいけないというルールがある。たとえていえば、加盟店の財布と通帳、帳簿を本部が管理しているようなもので、オーナーといえどもまったく自由には使えない。送金処理が遅れると罰金が引かれる。1日1000円、2日で2000円、3日で3000円とどんどん増えていき、私の場合でいえば、9000円の罰金を引かれたこともある。

かつて、生活費に困り、売上の一部を拝借したオーナーがいた。そのオーナーはSVに厳しく叱責され、最終的には契約更新してもらえずに失意のうちに亡くなったと聞く。まさに現代版女工哀史だ。

「トイレで充電」「代行の手配を要求」…困ったお客たち

また、困ったお客様にも悩まされる。

代金を投げてよこすお客様には、もはや驚かない。タバコやお酒を買っていくお客様に未成年者ではないことを確認するために、年齢確認で20歳以上である「はい」のボタンを押していただけますか、と頼むと「お前が押せよ!」と仰るお客様がいかに多いことか。怒鳴りつけられることも1度や2度ではない。レジにやってきて、「タバコ」とぶっきらぼうにいうお客様もいる。「どこの銘柄ですか? 何ミリですか? 何個ですか?」と一つ一つ聞いていくと、「テメー、常連客の好みぐらい覚えておけ!」とご無体なことを言うエリート然とした中年サラリーマンもいる。

トイレに籠もって電源を外して、自分のスマホの充電をしてそのまま出てしまい、水が流れないと大騒ぎしたこともあったし、すごい強者になると看板の電源を外してやはりスマホの充電をしていた若者もいた。

「ファクス送りたいから、A4の紙1枚くれ。筆記用具忘れたからボールペン貸して。間違えたからホワイト(修正液)貸して」 と何でもタダでサービスしてくれるものだと勘違いしている人もいる。すべて売り物だ。

酔客が来る深夜帯もトラブルの種があちこちに転がっている。 酔って店に立ち寄ったと思ったら、「タクシー呼んで!」と仰るお客様。自分の車をうちの店の駐車場に停めて飲みに行き、帰り際に「(タクシー)代行呼べ!」と仰るお客様もいる。仕事のストレス発散なのか、「俺の気持ちがわかるのか!?」とくだを巻く方も多い。

その逆に、一見怖そうな風貌のお客様がとても優しく気遣ってくれたり、「ありがとう」と満面の笑みを返してくれたり。ほんとうに人は見かけによらないということをつくづく感じさせられる。

48時間以上、店舗から離れるのは契約上NG

現在は、アルバイトの時給は上がったものの、コンビニはブラックバイトの代名詞のようにいわれてしまい、集めにくくなった。都心部では中国人を中心としたアジア系留学生でまかなえる可能性も高いが、ちょっと地方にいくと深夜帯を中心にまったくアルバイトが集まらない。そのため、50歳過ぎの私でさえも、年中ほぼ無休で1日最低でも12時間は働き、深夜シフトに週に2~3回は出ている。正直、体がキツい。

妻も繁忙時間帯である昼間には、ほぼほぼ毎日、店に出てもらっている。契約書には48時間以上、店舗経営から離れてはならないという項目があるし、原則として1分たりとも閉店休業できないので、家族旅行などもほとんど行くことはできない。雨が降ろうが、台風が来ようが店は絶対に開けなければならない。

コンビニの代名詞でもあるトップチェーンの親会社の会長が先ごろ退任し話題を呼んだが、コンビニ店長を苦しめる「しくみ」に切り込んだ報道はまだまだ少なく、あまりにも知られていないのが現実だ。

しかし、何のかんのいっても、自分としてはコンビニ経営という仕事に誇りを持っている。365日24時間営業は確かに厳しい。しかし、どんな時でも欲しいものは必ずお客様が手に入れられるし、モノだけでなく、宅配便など各種サービスなどは豊富でかなりの利便性があるはずだ(その分、覚えることが多すぎて混乱することもあるが)。社会インフラとしての役割はとても重要なものだと認識している。

様々なことに悩まされながらも、私はこの仕事を全うする覚悟でいる。

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