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コンビニビジネスは“光”ばかりではない - 『コンビニ店長の残酷日記』著者・三宮貞雄氏

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スーパーバイザーは「人件費をけずれ!」と言うばかり

足成

先の熊本地震でも、地場の中小スーパーなどに比べ、コンビニは圧倒的に早く営業を再開した。被災地への募金活動を始めた加盟店も多い。被災された方々にはお見舞いの言葉以外出てこないが、コンビニオーナー仲間の奮闘には胸が熱くなる。当店でも、さっそくレジの前に募金箱を置いた。

とはいえ、コンビニ・ビジネスは「光」ばかりではない。私が、脱サラをして一国一城の主を目指してコンビニのオーナー店長になったのが6年前だが、当初の説明会では知らされないことばかりで驚かされることの連続だった。何よりも不思議だったのが、ドン・キホーテや中堅量販店の売値よりも本部推奨の正式ルートで仕入れた方が高い商品が複数あったことだ。

当初、本社の社員たちは、 「うちはバイイングパワー(巨大な販売力を背景とした強い仕入れ・安い仕入れ)があるから、地場の中小スーパーなどよりも安く仕入れられるから利益も出やすい」 と、豪語していたのに、実態はまるで逆。高い仕入れ値だから安く売ることなどできはしない。

それに東日本大震災の時に、ドン・キホーテで仕入れた食品や飲料水などを売ったら、お客様にも喜んでいただいたのになぜか担当スーパーバイザー(SV・店舗指導員)からすぐに止めるように注意された。その時に、いくらで仕入れたかをスーパーバイザーに聞いてもはぐらかされるし、本部に聞いても「全店一括で仕入れているので、個々の商品の仕入れ値がいくらかはわからない。請求書なども見せられない」というばかりだった。

うちの店の近くに食品スーパーが開店して日商が下がった時、担当SVに相談したところ、
「人件費を削ったらどうですか?」
「廃棄弁当を食べて生活費を浮かせたらどうですか?」  と、言われただけだった。要するにアルバイトなど雇わずに我々に働けということだ。これが経営指導なのかと、さすがに絶句した。

本部にとっての“お客様”は消費者ではなくコンビニオーナー

廃棄弁当のことでいえば、コンビニ独特の会計に触れておく必要がある。通常の会計では、廃棄弁当などは、売上原価に含まれる。つまり、粗利=売上高-売上原価という計算式になる。

わかりやすく説明するために、原価100円、売値150円のおにぎりを1000個仕入れ、7百個が売れ、300個の廃棄が出たとしよう。この場合、売上は150円×7百個で10万5000円となる。ここから売上原価10万円(100円×1000個)を引いた5000円が粗利となる。

ところが、コンビニの弁当などの場合は純売上原価(廃棄ロスを含まない)といって、廃棄弁当などは売上原価からではなく、営業費から引かれてしまう。原価には、売れた商品の原価しか含まれない。つまり、先の例でいえば、10万5000円-7万円(100円×700個)=3万5000円が粗利となるのだ。つまり、コンビニ会計によって粗利が見かけ上7倍に膨らむのだ。

仮にコンビニ本部へ払うロイヤリティが70%とすると、一般会計だと5000円×70%=3500円だったのが、コンビニ会計では3万5000円×70%=2万4500円となるのだ。実際には5000円の粗利しかないのに、ロイヤリティを2万4500円も払うのだから、加盟店は大赤字となってしまう。

スーパーマーケットなどでは”タイムセールス”と称して、消費期限が近づいた弁当やお総菜などは値引きしてでも売り切ろうとするところがほとんどのはずだ。ところがコンビニでは、この”見切り販売”はしないように本部から強いプレッシャーがかかっている。公正取引委員会から、見切り妨害は違法だと大手チェーンに排除命令が出てからもほとんど変わらない。

なぜなのか。その理由は先に挙げたコンビニ会計にある。先ほどのおにぎりを例にしてみる。原価100円のおにぎりを1000個仕入れ、700個売れたとする。廃棄すべき300個のおにぎりを80円に値引きして売り、完売したとしよう。どうなるか。

売上は定価で売れた分(150円×700個)+見切りで売れた分(80円×300個)で12万9000円になる。コンビニ会計の純売上原価は売れた商品の原価だから、原価100円×1000個=10万円を引いた2万9000円の粗利となる。やはり、ロイヤリティ70%で計算すると、2万9000円×70%=2万300円と、4200円も負担が減る。

しかも売上は増えているから、店側の粗利-ロイヤリティを計算すると、マイナス1万9500円(5000円-2万4,500円)から8700円(2万9000円-2万300円)の黒字へと転換するのだ。その逆に本部から見れば、見切りで完売されるとロイヤリティ(本部の取り分)が4200円減ることを意味する。本部が見切りを嫌う理由はここにある。

コンビニ本部にとっては、弁当などの商品は完売されることよりも廃棄が大量に出たり、嫌な言い方だが、万引きされたりした方が儲かるというわけだ。だから、悪いSVなどは廃棄が多く出るように、ひたすら「積極的発注」をゴリ押しするのだ。

要は、本部にとっての本当のお客様はエンドユーザーではなく、加盟店のオーナーたちということに、店長になって数年して気付いた。

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