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焦点:接近するイランとロシアの同床異夢、関係発展に限界か

[ドバイ/モスクワ 26日 ロイター] - 防空システムの最初の部品を今月ロシアから受け取ったイランは、軍隊の日を祝う軍事パレードでロシア製対空ミサイル発射装置を誇示した。

テヘランがそれを祝うのには理由がある。つまり、こう着状態にあった「S─300」システムの売却を推進するという1年前のクレムリンの決定が、二国間における協力関係の強化を明確に示す証拠となったのだ。両国はシリア内戦で形勢を一変させ、中東での米国の影響力に挑んでいる。

しかし同時に、この売却の遅れは、共通の世界観よりも利害の一致によって形成された両国関係の限界を指し示すものとなった。イランはイデオロギーをめぐって指導者層が分裂する一方で、ロシアは関係強化に対し消極的な兆候を見せている。ロイターが取材した外交官や政府当局者、アナリストらはそう分析する。

イランの政府当局者には、今よりもさらにロシアとの関係を深め、戦略的な提携を望んでいる者もいる。しかし、ロシア政府は、シリア内戦で、ともにアサド政権を支援するイランに対して、現行の協力関係上の新たな局面と述べるのみだ。

「我々はイランとの友好な関係を常に発展させてきている。しかし、両国間の新たなパラダイムについては本当に話すことはできない」とロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は先月語った。

ロシアは2007年、S-300システムをイランへ売却すると合意したが、核開発プログラムをめぐる対イラン制裁を受け、2010年に売却を凍結した。

ロシアは昨年4月、対イラン制裁を解除。それはイランが原子力計画を抑制する見返りに、イランと主要国が核関連に絡む制裁解除に向けた合意に近づいたタイミングだった。

ロシアは現在、イランへの武器売却によって得られる経済的・外交的な利益と、サウジアラビアや米国、イスラエルなどの怒りを買ったり、イランがあまりにも強力になったりするリスクとを天秤にかけて比較検討している。

「この提携は軍事的、経済的な面において、両国にとって有益だ」とサンフランシスコ州立大で中東イスラムの歴史を研究するMaziar Behrooz准教授は説く。「しかし、地政学的な水準では、イランとロシアは、戦略的ではなく、短期的な戦術的提携しか築くことができない。両国のイデオロギーの違いは大きすぎる」

<ダマスカスを支援>

ロシアのプーチン大統領が昨年9月、シリアへの軍事介入を命じ、イランの味方であるアサド大統領を支援して以来、ロシアとイランの長い友好関係は新たなレベルに達したように思われた。

イランはシリア反体制派の気勢をそぐため、アサドの政権軍を支援する自らのイスラム革命防衛隊を派兵。ロシアの空軍の力を得て、こう着状態を打開し、アサド大統領を優位に立たせた。

軍事的に両国は補完し合った。イランは、シリアの地元勢力と連携できる、鍛錬された地上軍を派兵。一方、ロシアは、イランとシリア政府軍に欠けている一流の空軍力を提供した。

外交的には、この共同作戦によって、地域の安全保障構造をめぐるあらゆる議論において両国は中心的な役割を得ることとなった。

これはプーチン大統領にとって重要なことだ。なぜならば、同大統領は、親ロシアだったリビアのカダフィ大統領が殺害されて以来、中東地域での同盟を強化し、ロシアの影響力を高めようとしていたからだ。

イラン核問題をめぐる制裁が解除された今、ロシア政府がどれほど上手に、儲かる商談を獲得できるかは不透明だ。ロシア企業がイランで新たに進出している兆しはこれまでのところ、ほとんどない。

これにはイデオロギー的な理由も一部ある。多くの米国政策が今もなお非難されているとはいえ、ロウハニ大統領の派閥が、西側との対立よりも貿易に興味を示すなど、イランの指導者層は分裂状態にある。

ロシアは、中東における西側の利益に対抗する、主にシーア派からなる「抵抗の枢軸」に加わる動機はほとんど持ち合わせていない。ロシアの「抵抗の枢軸」への参加は、イスラエルや(スンニ派の)サウジアラビア、エジプトといった中東諸国との関係を台無しにするため、イランの保守派層には支持されている。

<秘密の会合>

冷戦後では初となるロシアによる中東への大規模介入は、プーチン大統領とイラン当局者との何カ月にもわたる秘密の会合を踏まえて実施された。イラン当局者の中には、イスラム革命防衛隊の司令官や、最高指導者ハメネイ師の外交顧問のアリーアクバル・ヴェラーヤティー氏が含まれる。

ロシアとの密接で独占的な提携は、イランで最も影響力のあるハメネイ師を満足させるものだろう。ハメネイ師はイランの苦境を西側の影響だとして非難、「ルック・イースト」政策を強力に推進してきた。

しかし、これはロウハニ大統領とザリフ外相に率いられたイラン政府の政策に反する。この2人は昨年7月に主要国と核開発問題をめぐる合意に達して以来、ほぼ毎週、西側の代表団を招いている。

西側で教育を受けたロウハニ大統領は、ロシアへの傾倒により慎重で、プーチン大統領とも不安定な関係にある。プーチン大統領は昨年11月、8年ぶりにテヘラン訪問した際、他の多くの訪問者のようにロウハニ大統領を最初に訪問せず、空港から直接ハメネイ師に会いに向かった。

「ロウハニ大統領とプーチン大統領はそんなに仲良くやっていない」とイランの外交官は、匿名を条件にロイターに述べた。

また、一部のイラン当局者は、ロシアとあまりにも緊密になることを警戒している。ロシアは、19世紀にイラン支配をめぐって英国と戦い、2つの世界大戦中はイランを支配していた。

「ロシア人は常に私たちを彼らの外交政策の道具として利用してきた。彼らはどんな国ともずっと同盟を維持することなどない」。イランのハタミ前大統領の報道官を務めたAbdullah Ramezanzadeh氏はテヘランでこう述べた。

プーチン大統領は、イランとの関係改善に懸命に取り組んできた。昨年11月の同国訪問中は、ハメネイ師に世界でも最古に当たる聖典コーランの写本を贈った。ロシアはこのコーランを19世紀中にイラン北部を占領していたときに押収していた。

シリア介入は、ロシアの国内経済から人々の目をそらすことに役立ってきた。ウクライナ危機をめぐり国際的な経済制裁を受けたことでロシア経済は悪化、新たな貿易取引相手を必要としていた。

ロシアのデータによると、昨年の対イラン貿易は13億ドル(約1420億円)に過ぎないが、両国間の協力が増える兆候は出ている。

ロシアは、イランのインフラプロジェクト資金として50億ドルの融資を開始する用意があると表明している。また、エネルギー供給源が乏しいイラン北部にロシアが石油とガスを送るプロジェクトや、イラン南部のガス田からペルシャ湾のロシア顧客に対して石油とガスを送る計画も協議されている。

しかし、二国間協力の発展は限られているかもしれないとエネルギーセクターのアナリストは分析する。イランは主に技術と設備を必要としているが、それらはロシアも必要としているものだからだ。

ロシアは戦闘機「Su─30」売却によって、イランの老朽化した空軍を向上させるための協議に入っている。しかし、これには国連安全保障理事会の承認が必要となる一方、イスラエルやサウジアラビア、米国との関係をさらに悪化させることにもなりかねない。

(Bozorgmehr Sharafedin記者、Lidia Kelly記者、翻訳:高橋浩祐、編集:下郡美紀)

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