- 2016年04月30日 10:00
安心してください「虐待されない」介護施設のチェックポイント3
深夜の“同時多発”排せつ介助とは?
▼虐待のない老人施設を選ぶポイント前回は、現役ケアマネージャーのFさんと、特別養護老人ホームの元職員Tさんに、介護施設における入所者への虐待の実情と、入所者から介護職員への暴力の存在を赤裸裸に報告してもらいました。今回はその続編です。
画像を見る「介護施設の虐待」と聞くと、強い立場の職員が弱い入所者を支配しているという構図をイメージしがちですが、そんな状況があるのは一部のひどい施設です。
とくに今回の事件(今年2月、川崎市の有料老人ホームの介護職員が、3人の入所者を投げ落とした事件)は特異な例であって、その報道に接して「どこの施設でも同じようなことがあるのではないか」「施設に入るのが怖い」と思われるのは心外だとFさん、Tさんは言います。
「多くの施設の職員は大変な目に遭いながらも、入所者に寄り添う努力をし、懸命にケアをしています。どちらが強い・弱いという関係性もまずありません。それをわかって欲しいですね」(Tさん)
Fさんは夜勤の過酷さも語ってくれました。
「私が特養に勤めていた時は、夕方5時から翌朝9時までの16時間夜勤をしていました。夜は入所者も寝ているから、大してすることはないだろうと思われるかもしれませんが、そんな穏やかな日はめったにありません」
夜勤は次のような“壮絶”な状況となることもあるそうです。
「大変なのは、“同時多発”の排せつの介助です。通常、オムツをしている方はそれを交換し、立って歩ける方は付き添ってトイレへ行きます。ただ、トイレで介助をしている途中にナースコールが鳴ることがあります。『すぐに戻りますから、ここで座って待っていてくださいね』。そう言って、コールをした入所者のもとに走ります。そこで介助をしていると、今度は“センサーマット”のアラームが鳴る。入所者のなかには、立つと必ず転んでしまう方がいて、ベッドの脇に足を着くとアラームが鳴るマットを敷いているんです。転んだら骨折の危険がありますから、ダッシュ。なんとか間に合い体を支えてベッドに戻すと、ホッとする間もなく最初のトイレの方か、ふたり目の方のどっちに戻るかを判断し、そこに走る。そういうことが連続するんです」
1人で40人担当! 夜勤の「魔の時間帯」
また、夜勤には「魔の時間帯」というのがあるそうです。
「16時間ぶっ続けで仕事をしたら体がもちませんから、交代で2時間ほどの休憩を取るんです。その休憩時間に食事をしたり仮眠したりするわけです。施設にもよりますが、ひとりが担当する人数は20人前後。私がいた施設の入所者は40人ほどいて、夜勤は2人で担当していましたが、ひとりが休憩すると残った者は40人のケアをすることになる。それが魔の時間帯。20人でも大変なのに、それが倍になるわけです。なかには、暴力性のある人もいますし、ものすごいストレスになります」
そもそも介護施設の職員が、このような過酷な環境に置かれていること自体、問題ですが、それに耐え働き続けるモチベーションはどこから生まれるのでしょうか。
画像を見る「きれいごとに聞こえるかもしれませんが、ケアが必要な方に自分の力が役に立っているという実感が得られることでしょうか。それがやりがいになっていたような気がします。“ありがとう”と言われたり、言葉には表さなくても感謝の気持ちが伝わってきたりすると、それも喜びになります。そんな思いで働いている職員が大半だと思いますよ」
とはいえ、虐待のある施設が実在することも事実。では、そうした問題のある施設を、利用者が事前に見抜くにはどうしたらいいのでしょうか。
「施設は見学ができますし、お試し入所ができるところもある。できるだけ多くの施設を見学し、比較検討していただくことが必要です」
とふたりは口を揃えます。
虐待されない介護施設 ここをチェックせよ
必ずチェックすべきポイントは以下の通りだといいます。
【1:職員に声をかけ、どのような対応をするか】
「“こんにちは”と声をかけてみてください。介護職員には内気で人見知りのタイプが多く、明るく朗らかな反応はあまり望めませんが、職員教育がしっかりした施設では、最低限のあいさつはできる。ちゃんと声を出してあいさつできない職員がいたら要注意です。また、あいさつ時の表情に温かみが感じられるかどうかもチェックポイントです」
【2:昼食時に見学する】
「午前11時半頃に見学に行くといいと思います。配膳をし、職員が入所者を食堂に連れてきて食事の介助をする。職員が入所者に対して、どのような対応をしているか、つぶさに見られるわけです。忙しい時間帯ですが、ちゃんとした施設なら職員は丁寧に介助するはずですし、問題がある施設は流れ作業をしているような感じがある。それに虐待があるようなところは、職員に刺々しい雰囲気があると思います」
【3:入所者の身だしなみを見る】
画像を見る「職員はさまざまなケアをしなければならず、入所者の身だしなみなどは一番後まわしになることも少なくありません。問題のある施設の職員は、そこまで配慮が行き届かないこともある。服装が汚れている、髪がボサボサのまま、といった入所者がいたら要注意です」
ここにあげたのは、話をした時にふたりが思いついたポイントで、他にもまだあるかもしれません。ともあれ、できるだけ多くの施設を見学し、職員に誠実で温かみが感じられるかどうかをチェックする。それが虐待のある施設に当たらないためのポイントになるといえそうです。
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