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オーストラリアの潜水艦を受注しなくて良かった

 オーストラリアが導入する予定だった潜水艦12隻の発注先が、日本、ドイツ、フランスの3国が競り合っていた中で、フランスに決定したということだ。この商談は、安倍内閣が2014年に定めた「防衛装備移転三原則」が適用される最初の事例なると期待されていたらしい。それまでは平和憲法を前提とした「武器輸出三原則」があって、日本が開発した武器の輸出は事実上不可能だったものを、安倍政権が「武器輸出」を「防衛装備移転」と言い換えて解禁にしたのだった。「事実上改憲」の一歩だった。

 日本の自衛隊の装備は、最初はアメリカからの輸入だったが、ライセンス生産などから始めてしだいに技術力を高め、自前で世界水準の武器を作れるまでに成長してきた。戦車では早い時期から世界が注目するような技術を開発したし、最近ではステルス戦闘機の試験飛行をするまでになっている。しかし自衛隊専用の生産では数量が限られるから量産の効果が期待できず、価格は割高にならざるをえない。だから輸出もできるようにして、日本の成長産業の一つの柱にしようというわけだ。

 兵器産業は、絶えず技術革新があり、各国は常に最新の性能を求め、さらに使われれば消耗して追加の需要も期待できるという、利益の大きい産業である。日本の技術力、工業力をもってすれば、得意分野になる可能性はあるだろう。だがその一面で、紛争が多発するほど景気がよくなるという「死の商人」の暗い側面を持つ。経済的利益を優先するだけで、武器供給国になるということの倫理を考えなくていいのだろうか。

 このことは原発の輸出とも似ている。単に需要があるという理由で、核物質の最終処理不能という原理的な欠陥を内蔵している原発を、これ以上世界に増やしていいのかという問題である。これが武器であれば、もっと直接的に、破壊と殺戮を目的にした機器であって、それは国と国とが本気で相手を抹殺する「果し合い」をすることを前提にしている。もちろん武器には防御の側面もあるから、最新技術に無関心であっていいというのではないが、攻撃的兵器の生産国として成功するのは、日本には似合わないと私は思う。

 潜水艦というのは、乗員にとっては非人間的な厳しい環境を強いるし、攻められる側には不意打ちの不安をもたらす。これを非人道的で禁止すべしとする思想は、発明の当初から存在していた。私もブログに書いたことがある。

http://blog.livedoor.jp/shimuratakeyo/archives/55668416.html

今回はオーストラリアの潜水艦を受注しなくて良かったと、私は思っている。



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