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【読書感想】赤い心

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「わかりました。それなら一度、電話をしてみます」

 南社長と別れると、すぐにカープの鈴木清明球団本部長に電話を入れた。

「さっき南社長と話をして、カープが僕のことを気にかけてくれていると聞いたのですが、本当ですか?」

 鈴木球団本部長はひと言、広島弁でこう答えた。

「そういうことじゃ。帰ってこい」

 僕は本当にびっくりして、「ええっ!」と心の中で叫んでいた。

 黒田博樹投手のカープ復帰に関しても、粘り強く声をかけつづけてきた、鈴木球団本部長!

 この人と駐米スカウトのシュールストロムさんこそが、カープの宝なのかもしれません。

 新井さんは、この言葉をきいて、すごく嬉しかったのと同時に、やっぱり、かなり悩んだみたいです。

 「いまさら戻ってくるなよ!」って言われると思うよね。僕もそう言ったもの。

 黒田さんも、新井さんのカープ復帰を後押ししてくれたそうですよ。

「さすがだね。本当に全く違和感ない」

 そう笑った緒方監督だったが、実は前にカープにいた時は、大勢で一緒に食事に行ったりすることはあったが、基本的にはあまり接点がなかったというのが本当のところだ。現役の時の緒方さんは、とにかく怖くて、こちらからはとても話しかけられない、そんな雰囲気だった。当時のチームでは、前田智徳さんも同じような印象だった。二人とも、とてつもないほどの練習をやっていて、寡黙でストイック。後輩から見ると、近寄りがたいオーラがあった。

 新井さんからみると、「監督になった緒方さんは、本当にイメージが変わった」そうです。

 だいぶ人間が丸くなったみたいです。

 丸くなってこれかよ!と、カープファンとしては申しあげたいところではありますが。

 新井さんは、同じ年にカープに復帰した黒田投手について、このように語っています。

 近年は投手分業制が確立され、先発投手の球数制限などもあり、昔の野球とは変わってきている。昔は先発完投が当たり前、という時代だったが、今は勝ちゲームでクローザーが出てくるのは、当然のことになっている。

 黒田さんは、そういった考え方が、日本よりも浸透しているメジャーで7年もプレーしていたのに、復帰してからは甲子園で140球ぐらい投げた試合もあったし、中4日で何度も先発していた。前にカープに居た時は「ミスター完投」と呼ばれていたが、アメリカでバリバリやって帰ってきても、根本的な部分は全く変わっていなかった。

 甲子園での試合は、連投が続いていたリリーフの中崎翔太を気遣っての100球超えの投球だった。試合終盤にマウンドに集まった時も「ザキは大丈夫ですか?」と自分のことを気遣っていた。

 中崎を今日は休ませてやりたい、その一心で投げ続けていたのだ。そこがエースたるゆえん、そして黒田さんが黒田さんたるゆえん、だと思う。

 これを読んで泣かないやつは、カープファンじゃない!

 ああ、これぞ黒田博樹!

 東出選手の意外な素顔とか、駒大の先輩だった高橋尚成投手との信頼関係とか、コーチ陣とのつきあいかたとか、いまやカープの、いや球界の重鎮となった新井さんだからこそ語れるエピソードが散りばめられています。

 新井さんは2000本安打の偉業を達成したけれど、個人としての記録以上に、カープで優勝することを「選手生活の総決算」にしたい、受け入れてくれたカープファンへの恩返しをしたい、という気持ちが伝わってくるのです。

 僕は正直、新井さんに対して、わだかまりがありました。

 でも、こうしてお互いに年を重ねて、また巡りあってみると、なんだか、いろんなことが必然だったような気もするんですよね。我ながら、なんて御都合主義!

 ほんと、カープファンって、カープの選手って、難儀だよなあ。

 でも、だからこそ、やめられないんだ。

リンク先を見る 決めて断つ (ワニ文庫) リンク先を見る 変わるしかなかった。

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