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サウジ批判展開のオバマ 関係改善は時期大統領にかかる - 岡崎研究所

ニューヨークタイムズ紙が3月21日付社説で、アトランティック誌のインタビュー記事でのオバマのサウジ批判を紹介し、オバマには両国関係を進展させる時間は殆ど残っておらず、それは後任大統領の仕事になるだろう、と言っています。社説の要旨は次の通り。

脆弱化する米×サウジ関係

 オバマは長年、サウジその他のスンニ派アラブ国家を、イスラム教の厳格な解釈が過激主義を助長している抑圧的な社会とみなしてきた。アトランティック誌のゴールドバーグ氏とのインタビューで、オバマはサウジを、米国の力を自分たちの偏狭で宗派的な目標に用いる「ただ乗り」の同盟国とした。

 オバマは、サウジその他のスンニ派アラブ国家が反米闘争を煽っていると批判し、サウジはイランと「ある種の冷たい平和」を達成することで、地域で共生するようもっと努力すべきである、とも述べた。

 サウジはすぐさま反論した。Turki al-Faisal王子(元サウジ諜報機関トップ)は、オバマは、サウジ政府が行ってきたテロとの戦いにおける情報共有を含むあらゆることを認めようとしていない、とArab Newsに書いた。しかし、何十年にもわたる両国のパートナーシップは、ますます脆弱になっている。

 サウジはシーア派のイランが卓越することを恐れるあまり、イラン核合意がイランの核能力を制限するものであるにもかかわらず、合意を葬り去ろうとした。サウジとイランの競争は、シリア、イエメン、イラクにおける代理戦争を激化させた。サウジのイエメン介入は、サウジが支持する政府軍とイランが支持するホーシー派の戦争を激化させ、シリアでは、サウジはイランが支持するアサドと戦うより過激な反乱軍のグループを支援してきた。Turki王子が「イランと地域で共生する」とのオバマの考えを嘲笑したことは不思議ではない。

2002年には、オバマは演説で、サウジとエジプトを米国の「いわゆる」同盟国と言い、「彼らは反対意見の抑圧や汚職と不平等への寛容を止める必要がある」と述べた。ゴールドバーグの記事によれば、オバマは、イスラムが現代世界と折り合いをつけるようになるまでは、イスラムテロに対する包括的な解決策は存在し得ない、とも主張した。サウジ王家は、不確実な新指導者チームの手にあり、経済は油価下落により圧迫され、改革には関心を示していない。

 オバマは両国関係についての舞台裏の会話を表に出した。米国には抜本的改革を促すために何かできるだろうか。批判を表明することは別として、オバマですら、伝統的な線に沿って同盟を維持していくことの重要性を感じている。

 オバマの任期には、米国とサウジがいかにして共に前進できるかについて再考する時間は殆ど残されていない。その仕事は、大部分を後任大統領がやることになろう。

出典:‘A Presidential Rebuke to the Saudis’(New York Times, March 21, 2016)
http://www.nytimes.com/2016/03/21/opinion/a-presidential-rebuke-to-the-saudis.html?partner=rssnyt&emc=rss&_r=0

*   *   *

単なる“同盟国”に格下げされたサウジ

 アトランティック誌とのインタビューで、オバマがサウジを公に批判したのは、米国の大統領として異例のことです。批判の内容は、サウジは、1)米国を自分たちの偏狭で宗教的な目標のため利用し、「ただ乗り」している反面、反米闘争を煽っている、2)国内の反対者を抑圧し、汚職と不平等に寛容である、3)ワッハーブの厳格なイスラム原理主義を教える外国の神学校に多額の援助を与えているというもので、そのほか社説は指摘していませんが、インタビューでは、サウジは女性を蔑視している、と批判しています。

 そして、サウジをかつてのような米国の重要な同盟国ではなく、「いわゆる同盟国」に格下げしています。インタビューでは、豪州のターンブル首相が、オバマに対し「サウジは米国の友邦ではないのか」と尋ねたのに対し、オバマは「それは複雑である」と答えたことが明らかになっています。

サウジとの関係悪化もたらしたオバマの理念外交

 オバマがサウジ国内の反対者の抑圧や、女性蔑視を批判し、その結果サウジをもはや同盟国視していないことは、オバマが外交における理念を重視していることを示しています。米国の外交は建国以来、力の均衡を重視する現実主義よりは、自由、民主主義、人権といった理念を重視する傾向が強く、ウィルソンがその典型的な例です。第二次大戦後ソ連と鋭く対立した冷戦時も、ソ連との覇権争いと並んで、米国の理念に反する共産主義反対の側面が重要でした。

 米国はその後幾多の経験を経て、欧州の伝統的現実外交を推進するようになりましたが、その間にもカーターが「人権外交」を提唱したのをはじめ、自由、民主主義、人権の理念が対外政策に見え隠れします。

 サウジの米国にとっての重要性は、シェールオイルの増産で米国のサウジ依存が減ったこと、イランとの核合意でイランとの関係が進展していることから以前より減少したと言われていますが、オバマがサウジとの関係を「いわゆる」同盟国と言ったのは、これらの事象に先立つ2002年のことです。

 米サウジ関係については、後任大統領が今一度米国にとってのサウジの戦略的重要性を吟味し、それに則った外交を推進する必要があります。

 オバマは、サウジがイランとの間に「ある種の冷たい平和」を達成し、両国は中東で共生すべきである、と言っていますが、サウジとイランの対立の根は深く、このような状態が実現するためには米国が積極的に関与する必要があるでしょう。オバマにそのような関与をする気があるとは思われず、これも後任大統領に委ねられることとなるでしょう。

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