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アメリカに社会主義は実現可能か?ニューヨーク決戦の舞台裏 - 海野素央

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投票日当日のエンパイアステートビルは民主党と共和党のカラーである青と赤でライトアップされた

 今回のテーマは、「クリントン支持者VS.サンダース支持者」です。民主・共和両党の候補指名争いにおけるニューヨーク決戦はヒラリー・クリントン候補と不動産王ドナルド・トランプ候補が、それぞれ勝利を収めました。クリントン候補は100万票以上を獲得し、その数はトランプ候補を含めた3人の共和党候補の合計の得票数を上回ったのです。クリントン候補は、ニューヨーク州のように民主党員のみが投票できる州では強さを発揮しますが、サンダース支持者が多い無党派層が参加する州になると苦戦を強いられます。

 本稿では、第1に、ニューヨーク市マンハッタン区におけるクリントン陣営の戸別訪問について説明します。第2に、戸別訪問から得た有権者の声の一部を紹介します。第3に、ニューヨーク州民主党候補指名争いの結果から見えたクリントン陣営の課題について述べ、そのうえでどのようにしてそれを解決できるのかについて議論していきます。

NYCマンハッタン区におけるクリントン陣営の「戸別訪問」

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8番街で戸別訪問を実施する筆者(@ニューヨーク市マンハッタン区チェルシー)

 クリントン陣営は、ニューヨーク市マンハッタン区に戸別訪問の拠点を5つ設け、地上戦に力を入れていました。その内、2拠点は米国国際サービス従業員労働組合(SEIU)と米国教員連盟(AFT)の建物の中にあり、労働組合員と協力して戸別訪問を実施したのです。

 周知の通り、マンハッタン区には高層ビル及びアパートが数多く林立し、入口がオートロックになっているために暗証番号を入力しないと建物の中に入って戸別訪問を行うことがでません。そこで、クリントン陣営では、従来の戸別訪問ではなく、街頭で有権者に声をかけてクリントン支持者を発見し、パンフレットを配布するという作業を行ったのです。同陣営ではこれを「戸別訪問」と呼んでいました。

 前述しましたように、ニューヨーク州民主党予備選挙では登録した民主党員のみが投票できます。まず、「あなたは民主党員ですか」と声をかけ、歩行者の中から民主党員を探し出します。次に、クリントン陣営のパンフレットを民主党員に見せて、「あなたの票に頼ってもいいですか」と質問をします。「はい」と回答したクリントン支持者にはパンフレットを配布し、決めかねている有権者に対しては説得を行います。バーニー・サンダース上院議員(無所属・バーモント州)の支持者の中には、筆者を説得しようとする若者がいました。もちろん、サンダース支持者にはパンフレットを配布しません。

 筆者はニューヨーク市マンハッタン区8番街とウエスト25ストリート及び26ストリートの角に3日間立ち、戸別訪問を実施しました。この地域は「チェルシー」と呼ばれ、リベラルな有権者、中間所得者層並びに同性愛者が多く住んでいます。以下で、戸別訪問で得た有権者の声の一部を紹介しましょう。

ニューヨーカーの声 
現実VS.非現実 クリントン支持者

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ニューヨーク州予備選挙前日のヒラリー・クリントン候補と筆者(@ニューヨーク市ヒルトンミッドタウン)

 ・「サンダースは非現実的です。共和党が議会を支配しているので彼が主張している法案は通過しません。ヒラリーの方が、議会と取引ができると思います」

 ・「サンダースは空想の世界に生きています。公立大学の授業料無償化は非現実的です。彼はたくさん約束をしますが、どうやって遂行するのか説明をしていません。単に有権者が聞きたいことを語っているのです」

 ・「サンダースには政策を遂行する具体的な計画がありません」

 ・「サンダースはあまりにも理想的です」

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ニューヨーク市マンハッタン区チェルシーにある投票所ナンバー33(筆者撮影@ニューヨーク市マンハッタン区チェルシー)

 繰り返し述べてきましたように(「トランプとサンダース ポピュリスト旋風は続かない 」)、サンダース上院議員とトランプ候補には、種々の共通点が存在します。たとえば、同上院議員と同候補は、職業政治家、エスタブリッシュメント(既存の支配層)及びワシントンにいる連邦上下院議員や知事といったインサイダーを攻撃します。北米自由貿易協定(NAFTA)並びに環太平洋経済連携協定(TPP)に反対の立場をとっている点も類似しています。筆者の戸別訪問によれば、同上院議員と同候補は無党派層から支持を得ており、彼らが投票できる州では選挙を有利に戦います。

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投票を済ませた有権者がつけるシール(筆者撮影@ニューヨーク市マンハッタン区チェルシー)

 それらに加えて、サンダース上院議員とトランプ候補には具体的な計画がなく、政策が非現実的なのです。クリントン支持者には、サンダース上院議員の目玉政策である公立大学授業料の無償化及び、トランプ候補が提案している国境の壁並びにイスラム教徒米国入国全面禁止は、実現不可能な政策であるという認識が強いです。

ウォール街VS.反ウォール街 サンダース支持者

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サンダース支持の看板とエンパイアステートビル(筆者撮影@ニューヨーク市マンハッタン区)

 ・「私はウォール街の大手金融機関解体に賛成です。ゴールドマン・サックスからもらったヒラリーの1回の講演料は、22万5000ドル(約2450万円)です」

 ・「政府は大企業に乗っ取られています。バーニーはそれを変えようとしています」

 ・「ヒラリーは石油業界から献金を受けています。しかも彼女はバーニーよりもタカ派です。あなた(筆者)は誰を応援するべきか、よく考えてみなさい」

 ・「ヒラリーは製薬会社や金融機関から大口献金を受けています。私はサンダース陣営に25ドルの献金を2回しました。サンダース陣営の献金の平均は27ドルです」

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 戦争反対のサンダース支持者(筆者撮影@ニューヨーク市マンハッタン区チェルシー)

 ・「サンダースか、クリントンか、私にはとても難しい選択でした。私は女性ですが、サンダースに投票してきました。大手金融機関解体に賛成だからです。大手金融機関や製薬会社はパワーをもっています。私は大企業に反対です。サンダースに投票することによって大企業にメッセージを送りました」

 ・「ヒラリーは、ウォール街から大口献金を受けています。彼女は大企業の味方です。バーニーは、一般の人から小口献金を受けています」

 サンダース上院議員は、演説や討論会でクリントン候補の講演料及びウォール街の金融機関からの献金について繰り返し言及してきました。その狙いは明らかです。クリントン候補と中間所得者層を切り離すことにあるのです。

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