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あれだけ「電力自由化」発表してこれか! - 多賀一晃

1月から随時発表されてきた電力自由化に伴う新電気料金メニュー。「自分にあったメニューがあって良かった」という人や、「大山鳴動して鼠一匹か」と感じられていられる人、いろいろとあるのではないでしょうか? 今回の家電口論は2回にわたり、「ユーザー目線」、そして「企業目線」の2つの視点で電力自由化を斬りたいと思います。今回は、ユーザー目線。何が一番いいプランなのかを探ります。

ユーザーの選択傾向

 3月になり、ユーザーがどの様な対応をしているのかの調査結果が出されるようになりました。例えば、「価格.com」が調査、3月17日に発表したデータを引用いたしますと、3月までに申し込んだのは、7.5%。「現在契約している大手電力会社のプラン」がトップで、31.4%、「ガス会社」23.1%、「携帯電話会社」11.6%。

 意外なのは、携帯電話会社。CMも行い、かなり力を入れているはずですが大きく水をあけられています。なぜでしょう。ユーザーの決め手となった理由を確認してみます。「電気が単体で安くなる」ことで、52.3%。ちなみに興味のある料金プランも「電気が単体で安くなる」で、61%。次が「契約解除料のないプラン」で、38.2%。

 1月に電力自由化参加を表明し、東京電力とがっちりスクラムを組んでいるソフトバンクは、電力料金は『バリュープラン』こそ独自ですが、他の『スタンダードプラン』、『バリュープラン』は基本、東京電力エナジーパートナー(東京電力は業務内容により分社化。電力料金は東京電力エナジーパートナーが行う。以下、東電EP)のプランに特典を加えたセットになっています。契約、契約期間の縛り、解約条件の縛りがついています。皆さん、携帯電話会社の契約でいろいろな経験をされたことが察せられます。このためですかね。より明確でシンプルなプランが好まれているようです。

一世帯当たりの使用電気量は?

 知っている人は知っていることですが、新電力プランの中には、現在の契約も含まれているということです。今回、契約を見直さない、何もしないというのは「あり」なのです。

 総務省のデータでは、2015年の月平均電気代は 9336円。(世帯構成人数:2.38人)また、2013年の月平均電気使用量は441.2kWh、2014年で月平均電気使用量は421.6kWhです。今後、単身世帯が増えることを考えますと、250〜500kWhで安くなると、多くの人から支持されるプランになります。金額にしますと、約6500〜1万4500円/月(従量電灯B、40A契約で算出)。この範囲で検証します。

東電VS 東電EP

 以上のことを踏まえ、東電EPの料金プランをみてみましょう。

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東電EPホームページより

 東電EPの中では、〜8000円程度(300kWh未満)を「従量電灯B」「C」に、それ以上を「スタンダードS」「L」「X」で対応しようとしています。「スマートライフ」もここに掛かっていますが、これはIHクッキングヒーターを導入したオール電化住宅が前提ですので、ちょっと話が違ってきます。

 「従量電灯B」「C」、「スタンダードS」「L」「X」の違いですが、実は「B」「C」、そして「S」「L」「X」で電気料金は変わりません。基本料金の扱いが変わります。基本料金は、一度に使える電気量の取り決めです。
漏電を抑える役割をします。具体的には、どのくらいでブレーカーが落ちるかです。少ない量ならアンペア数、それなりの量ならkVA(キロボルトアンペア、10Aが1kVA相当)数で決められます。

 「従量電灯B」、「スタンダードS」はアンペア数で、10〜60A、それ以上を受け持つ「従量電灯C」、「スタンダードL」kVA数が受け持ちます。「スタンダードX」は「スマート契約」と呼ばれる契約を基本料金に適用します。
当月と過去11カ月の30分ごとの使用電力量の最大値にもとづき、各月の契約電力を決定する契約です。単位はkWh。電気の使い方を工夫することにより、契約電力を抑えることができるのですが、今、進められているスマートメーターの取り付け(無料)が必要となります。

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 では、「従量電灯B」「スタンダードS」を比較してみましょう。基本料金は変わりません。電力料金は、300kWhが2つだったものを、1つにまとめてあります。しかも、300kWh以上の場合は、約0.1円高くなっています。契約アンペア数:60A、使用電力量:450kWhで、「基本料金」+「電力量料金」を算出してみます。

 「従量電灯B」で1万3169.7円、「スタンダードS」で1万3207.8円。38.1円ほど高くなっていることがわかります。「スタンダードL」「X」も、電力量料金は「スタンダードS」と変わりません。東電EPの場合、新しい契約は、少しばかり損をする人が多いと思います。

東電EPのプランを他社と比較

 では東電EPのプランを次のプランと比較したいと思います。シミュレーション計算は、契約アンペア数:60Aもしくは6kVA、使用電力量:450kWhを標準として用います。場所は、東京です。比較するのは次の3つです。

 1、ガス会社。現在、人気の高いプランです。ガス会社も、電力自由化を機に、エネルギー総合会社を目指します。今回は、その中で、東京ガスと対比させます。

 2、他のエリアの電力会社。東電EPのお膝元、東京でも、他のエリアの料金プランが選択できるようになりました。今回は、その中で、中国電力と対比させます。

 3、次は他分野から参入した会社。現在色々な分野から参入していますが、東京電力の発電機、送電を使わないメーカーはないと思います。これに値下げ分を補填して市場に提供している他分野からの参入会社。当然、目的は、単純な利を得る販売とは違います。今回は、その中で、ソフトバンクでんきと対比させます。

VS東京ガス

 今、人気の高い東京ガスの電気料金です。比較は、東電EPの「スタンダードS」、そして東京ガスの「ずっと電気1」を比較しました。基本料金は、双方共に変わりません。電気料金は下表の通り。

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 シミュレーション条件では、東電EP「スタンダードS」13207.8円、東京ガスの「ずっとも電気1」1万2455.9円。751.9円/月。年に直すと9022.8円。ただし、300kWhでの差は、14.4円/月と小さいことに注意してください。300kWh以上でお得なのです。

VS中国電力

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 中国電力との契約は、東電の従量電灯Bという、極端に電気を使ってこなかった家庭での料金プランからの変更が条件です。このため元々、東電の「夜とく」等、ライフスタイルを考慮した割安プランに入っていた人が、このプランに入ることはできません。

 実はこのプランかなり意欲的なのです。基本料金を取っていない上に、常に25.62円/kWh。このため、使用電気量料金にかかわらず、お得です。破格と言っても過言ではないかも知れません。シミュレーション計算では、東電EPの1万3207.8円に対し、1万1529円。その差、1678.8円/月。年当たり2万0145.6円。

 ただし電気料金の場合、シミュレーション計算には加えてありませんが、基本料金、電力量料金に加え、「燃料費調整額(燃料費調整単価に使用量を掛け合わせたモノ)」と「再生可能エネルギー発電促進賦課金」で成り立ちます。
このうち、「再生可能エネルギー発電促進賦課金」は全国一律ですが、燃料費調整額は、火力燃料(原油・LNG〔液化天然ガス〕・石炭)の価格変動を電気料金に迅速に反映させるため、火力発電で何を燃料にするのかで、発電所を持っている会社ごとに違います。

 東電の火力のメインはLNG、中国電力は石炭で、原油のような大幅変動がないため、影響がないとしましたが、実際はこの影響も受けます。

VSソフトバンクでんき

 ソフトバンクでんきで、「バリュープラン」が今回のシミュレーションではベストです。東電EPの電力量を多く使用する人は、600kWh以上の「プレミアム」ですから、少しユーザーの使い方によったプランになっています。ただし、基本料金は前述のスマート契約。アンペア数、kVA数は相関がありますが、kW数は完全に相関が取れません。ここでは、3kWhを用います。ちなみに、基本料金は60A:1684.8円に対し、3kWで1404円(432円/kW)です。

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 いつもの条件下でのシミュレーションでは、東電EP「スタンダードS」の1万3207.8円に対し、ソフトバンクでんき「バリュープラン」は1万2514円。693.8円/月、8325.6円/年。差を出しているのは、お分かりの通り300〜400kWhの電気量料金の安さです。300kWhを割り込むと「損」を被るプランでもあります。

お勧めと価格差

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 上のグラフは、契約を60A、もしくは3kWh、そして基本料金と電力量料金の和で算出した場合のグラフです。「燃料費調整額」と「再生可能エネルギー発電促進賦課金」は入っていないため、最終的な電気料金とは異なることは、ご承知ください。

 もっとも安いのは、中国電力のプランです。今、東京エリアで乗り換えるなら、お勧めのプランです。一見、「おー、これなら!」と思えるグラフかも知れません。が、最大に下げている中国電力でも、世帯平均の範囲で、12〜13%レベルの値下げです。しかもエリア限定です。今後増える単身世帯ですと、これより差が縮まります。

 某量販店Y社の言い方をすると、ポイント還元だけでも「10%は標準」です。そのようなご時世に、「これはいかなることか?」と思われる人も多いと思います。しかも最大大手の東京電力EPは、ほとんど電力価格が変わっていないのが実態です。

 「あれだけ「自由化」を大々的に発表してこれか!」、「オレは得にならないぞ!」などと、思われる人も多いと思います。

 次回は、「第2回 電気料金を紐解く」とし、自由化にも関わらずなせこのレベルの価格差なのか、参入会社は何を考えているのか、そして自分に合った選択とは何かを紐解いてみたいと思います。

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