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若者が夢を描ける社会をつくる。「中央ろうきん若者応援ファンド」が果たす役割(湯浅誠×吉田正和)

ビッグイシュー・オンライン編集部より:本誌連動企画として、「中央ろうきん若者応援ファンド」の特集記事をお届けします。
[この記事は「中央ろうきん若者応援ファンド」の提供でお送りしています]

2014年10月にキックオフシンポジウムを開催し、15年4月から助成事業が始まって1年以上が経過した「中央ろうきん若者応援ファンド」。ファンドが目指す「若者が夢を描ける社会」とは、どういうものか。

その選考委員長を務めた湯浅誠さん(社会活動家、法政大学教授)と、吉田正和(中央労働金庫理事長)が語った。

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支援の対象は、成果主義についていけなくなった若者たち

吉田:1980年に神奈川県で小学校の教諭となって20年近く教育現場に携わったあと、教職員組合で働いてきました。就学援助を受けている子の割合はその頃より増え、全体の15パーセントにまでなっています。また、卒業の1年以上前から就活しても就職できない大学生や、正規の仕事になかなか就けない若者も多く、そんな中で私たちに何かできることはないかと立ち上げたのが「若者応援ファンド」です。

湯浅:1990年代初めに大学を卒業した私は、ちょうどフリーター第一世代です。1980年代後半のバブルの頃、夢をかなえるためにアルバイトを「個人の生き方として選ぶ」といったイメージがもてはやされました。ところが、90年代の経済低迷と共に、正規になりたくてもなれない人が増えても、「自分で選んだんだから」といった自己責任論的な発想だけが根強く残りました。

吉田:神奈川県にも、ろうきんなど複数の団体が共同で運営している「ライフサポートセンター」がありますが、全体の相談件数は増えているけれど、若い人はなかなか相談しづらいようで伸び悩んでいます。

湯浅:先ほどの「自己責任論的発想」に加えて、知らないところに電話する心理的なハードルが高いんでしょうね。20代くらいだとまだ何とかなると思いたいから、「好きでやっているからほっといてくれ」と言ってしまう。 若者支援団体の中にも、行政やマスコミを通じて活動が広く知られるようになった団体もあれば、世の中のどこかにニーズはあるはずなのに、人が来ない団体もあります。情報発信をし、ニーズのあるところに出向いていくアウトリーチの方法がもっと広がるべきだと思います。 かし、こういう取り組みは短期的な成果を出しづらい。一定の成果が求められる企業として、若者への支援を決定するのは大変だったのではないですか?

吉田:たしかに最近、世の中がせっかちになり、株式会社などは短期的な利益を株主に示すよう求められています。ただ私たちは協同組合組織なので、働く人の生活が豊かになり、会員をはじめとする社会の全構成員が夢をもって暮らせるようになることを最終目標としているため、もう少し長期的な視野での利益を考えて事業をすすめられる。すぐに結果が出ることだけがすべてではありません。

湯浅:社会は長期的な視野や投資があってこそ回るものですからね。若者支援の対象者の中には、短期的な成果主義についていけなくなった人が少なからずいて、彼らは口には出しませんが、その存在そのものが「このままの社会でいいのか」と私たちに問いかけているようにも思えます。

自分のことで精いっぱいな時代。行き過ぎた格差は民主主義の劣化をも招く


吉田:つい先日も、世界の富豪62人と恵まれない36億人の資産がほぼ同じという報告書が発表されました。格差ゆえに争いが絶えない国も少なくありません。

湯浅:OECDやIMFといった国際機関も、一定以上の格差はかえって経済成長の足を引っ張ると言い始めていますね。格差が広がると競争が激化し、人々は仕事と生活に追われ、自分の利益と直接関係のないことをじっくり考える余裕をなくします。つまり行き過ぎた格差は経済だけじゃなく、民主主義の劣化をも招く問題なんです。

吉田:若者応援ファンドを始めてから、いくつもの希望を感じる活動に出会いました。しかし、まだまだ知られていない。誰もが自分のことで精いっぱいな時代。もう少し周りを見渡すゆとりがあれば、気づけることもたくさんあるはずで、なかなか余裕のない人たちに、助成団体の活動を広めていくことも私たちの大事な役目だと考えています。

湯浅:日々追われている業務とはリンクしづらいかもしれませんが、親戚まで含めれば「そういえば困っている若者が身内にもいたな」と思い当たる節は誰にでもあると思うんです。 若者支援の役割は困難な状況の中で、「世の中こういうものだ、仕方がない」とあきらめている若者に対し、オルタナティブな社会像や働き方、成長のあり方といった選択肢を提示することでもあると思います。 オルタナティブな金融機関である中央ろうきんの社会的ポジションからいっても、この事業をやる必然性は十分あると思いますし、いい活動はしていても、まだ芽もでていない〝種〟のような団体が多い中、その芽を育てることもできるのでは。

吉田:ろうきんでは年に1度、全国の常勤役員が集まるセミナーを開いています。その席で私たちは若者応援ファンドを紹介しました。この取り組みが全国に広まっていくことを願っています。ありがたいことに、私たちが何かを始めようとすると、いろいろな方が集まって知恵を出し、力を貸してくれる。これもまた「ろうきんらしさ」なのかもしれません。

湯浅:人は社会性のあるところに集まるものですからね。期待しています。

 

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ゆあさ・まこと
1969年、東京都生まれ。東京大学法学部卒。08年末の年越し派遣村村長を経て、09年内閣府参与に就任。政策決定の現場に携わったことで、官民協働とともに、日本社会を前に進めるために民主主義の成熟が重要と痛感する。著書に『反貧困』など多数。

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よしだ・まさかず
1980年、川崎市小学校教諭として教職に就く。神奈川県教職員組合執行委員長を経て、07年より中央労働金庫常務理事および神奈川県本部長。13年6月、中央労働金庫理事長に就任。14年4月より、中央ろうきん社会貢献基金会長。

 

「中央ろうきん若者応援ファンド」は、家庭環境や経済状況、病気や障害などの諸事情による社会的な不利・困難を抱え、不安定な就労や無業の状態にある若者を応援する、<中央ろうきん>の新しい市民活動助成制度(非公募)です。
この助成事業は、中央労働金庫のCSR 活動の一環として中央ろうきん社会貢献基金が実施しています。

中央ろうきん社会貢献基金とは、
福祉・環境および文化にかかわる助成、支援活動を通じて、人々が共生できる社会の実現に資することを目的に、設立(2002年4月1日)。はたらく人の団体、広く市民の参加による団体に対する助成・支援活動とそのために必要な事業を実施しています。 <中央ろうきん>のCSR
http://chuo.rokin.com/about/csr/index.html

<ろうきん>は、はたらく仲間を応援する非営利・協同の福祉金融機関。


労働組合・生協・市民活動団体などの非営利組織との連携により、はたらく人をとりまく福祉課題の解決に取り組んでいます。
〈中央ろうきんって?〉

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