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JR西日本のリニエンシーは組織の構造的欠陥解明に光をあてるか?

4月24日(日)の読売新聞朝刊(一面および社会面)では、「鉄道6社、ミス懲戒対象外」として、運転士の人的ミスを報告した場合には、原則として懲戒処分の対象からはずすルールを導入している鉄道会社が6社に上ることが明らかにされました。とりわけJR西日本さんは、この4月から導入に踏み切ったそうです(他の5社はJR北海道、JR貨物、京王電鉄、新京成電鉄、首都圏新都市鉄道)。

運転士のミスを懲戒処分とすると、上司に報告することを隠し、その結果として重大な事故につながるようなリスクを経営トップが把握することが困難になります。また、そのような重大なミスが報告されないままになりますと、このたびのJR西日本福知山線事故における経営トップの無罪判決のとおり、刑事司法の限界によって事故を発生させた構造的欠陥が全く解明できない状況になってしまいます(組織を処罰する規定があればよいのですが、現在はそのような組織への処罰法はありません。なお毎日新聞の社説がこのあたりを伝えています)。航空機事故や鉄道事故にように、痛ましい事故をこれ以上増やさないためにも、現場におけるモラルハザード(懲戒処分を受けないというルールによって現場運転士の緊張感が緩んでしまうリスク)を多少犠牲にしてでも、国民の生命を守るための組織の構造的欠陥を解明し、再発防止への事業活動を優先する、といった姿勢が必要かと思います。

記事の中で、ノンフィクション作家の柳田邦男さんが指摘しておられるように、どんな失敗でも処罰されない空気が漂わないように、導入の狙いや意図的な法規違反は処罰されることを社員に周知すべき、というのはそのとおりかと。私も、故意または重過失によるミスがあった場合には、懲戒対象になることは当然かとは思います。ただその場合でも、やはり自己申告がなされたことはそれなりに評価すべきであり、一切懲戒処分がなされないということではないにせよ、処分の裁量的減免は認めるべきではないかと考えます。自身が不正に関与していたとしても、組織的な不正を申告した社員にはそれなりの減免措置をとるべき、とした大阪地裁の裁判例もあります。また内部統制システムの整備に熱心な経営トップのほうが、そうでない経営トップよりも刑事責任が問われやすいといったおかしな状況を防止するためにも、できるだけ現場の情報をトップに報告しやすい体制作りが求められるからです。

航空会社70社はすでにこの制度を導入済みです。実際にも日本航空の元担当者の方によると、「日航でも続けるうちに、正直に話すことが不利益にならないと理解されるようになり、社員がミスを率直に報告するようになった」そうです(上記記事)。鉄道会社もようやく懲戒免除措置を数社で導入するようになったようですが、企業コンプライアンスという視点からは、国民の生命、身体、財産の安全を確保すべき立場にある企業は導入を検討すべきです。導入したからといっても、(会社による不利益な取扱いをおそれて)自身のミスを社員がすぐに申告するとは思えませんが、ただこの制度を導入することでミスの一歩手前である「ヒヤリ・ハット」事例の報告が急増した組織の実例は散見されます。不祥事防止の実効性を高めるためにも、このような自社リニエンシー制度の導入を検討する価値はあると考える次第です。

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