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日本では経済的徴兵制より、文字通りの徴兵だ 私たちの子や孫を戦場に送らないために

 集団的自衛権の行使を容認する安保関連法が昨年9月に可決、今年4月より施行されています。

 戦闘地域への派兵と他国のために参戦するということへの法整備が「完了」したわけです。

 さすがに安倍政権も南スーダンへの派兵では、新たな任務は付け加えることができませんでした。補選や参議院選挙への影響を恐れてのことです。
南スーダンへの派兵、2013年、現地は戦闘地域だった。自民党への一票は戦闘行為への一票です。

 実際に戦闘行為に加担すれば自衛隊に戦死者が出ることは十分に予想されますし、想定されています。

 実際に戦死者が出た場合は当然に、死者が出なくても危険極まりない戦闘地域への派兵が前提ということになれば、自衛隊の志願者が今以上に激減することになります。
自衛隊の志望者がなお激減中 自衛隊はかつての自衛隊ではない

 そうなると危惧されるのが徴兵制です。実際に志願者が不足し、定員割れという状態が今まで以上に深刻になるからです。

 予備自衛官制度などは徴兵制に親和性があります。

 ところで、日本では絶対に徴兵制はないと言ってしまう人たちが少なくありません。右翼の軍事オタクばかりなのですが、どれをみても全く説得力はありません。
徴兵はない! これを読んでピンときますか? 岡田真理氏の珍論 徴兵導入の危険を自覚しよう

 他方で、日本でも格差社会により経済的徴兵制が実現されるので、徴兵制はないという主張もあります。

『経済的徴兵制』(布施祐仁著)


この著書を読みました。自衛隊では何が大変って、志願者をかき集めてくることの大変さがしみじみ伝わってきます。

 自衛隊では、安保関連法ができる前でもあの手この手で「経済的メリット」を強調して志願兵を集めていました。

 昔から言わずと知れた、衣食住はパンツ以外は支給される、各種免許も取れるなどです。

 「貸費学生」などという制度もあります。
http://www.mod.go.jp/gsdf/jieikanbosyu/recruit/02.html(自衛官募集ページより)

 人数は限られていますが、理工系の学生が対象です。
大学の理学部、工学部の3・4年次又は大学院*修士課程在学
(正規の修業年限を終わる年の4月1日現在で26歳未満(大学院*修士課程在学者は28歳未満))
*(専門職大学院を除く。)
 防衛大学校、防衛医科大学校は給付制(給与)がありますが、こちらはエリート養成ですから、もともと「徴兵」という次元の話ではありません。

 戦前でも陸軍士官学校などは、貧しい家庭の子にとっては憧れであったようです。もっともこの時代は徴兵制があり、貧乏人が徴兵されれば2等兵として馬以下の扱いをされていた時代でもありますから、進んで志願する状況は整っていたとも言えます。

 これと比較しても、現在、防衛大学校でも卒業生の任官拒否組が増加する事態に陥っていますから、経済的要因だけで自衛隊に志願する時代ではなくなったと言えるわけです。
任官拒否者を卒業式に出席させない安倍政権 こういうイジメ的なやり方が自衛隊の体質を歪める

 米国では徴兵制は廃止されていますが、他方で経済的徴兵制とも言われている実態があります。

 ただ学費のためということであれば、やはり日本との相違点がいくつかあります。

 米国では、奨学金(ローン)については破産しても免責の対象外とされています。一定額を払い、その余は免除という制度はあるようですが、奨学金(ローン)を受ければそれ自体が大きな借金となるということであれば、軍に行くことによって学資を得るということも1つの大きな動機になるだろうということは想像がつきます。

 他方で、日本では奨学金(ローン)については破産、免責の対象から外されているということはありません。

 少なくとも今の日本では、奨学金を負担しなければならないことを考えるなら自衛隊へとか、自衛隊に一定期間、任務を果たせば学資が出るということであったとしても、それだけの動機で自衛隊を志願するという環境にはありません。

 また、日本では生活保護などや医療体制など、社会保障の分野では米国に比べればましと言える程度のものはあります。移民の国である米国とは決定的に異なる点です。 「経済的徴兵制」を実現させるためには、なお生活保護費の支給額の削減、奨学金制度の対象を絞る、免責の対象外とする、などの方策も必要になってきます。

 より露骨な格差社会を実現し、さらに底辺層に対する徹底的な差別感情を社会に蔓延させることも必要になってきます。

 「生活保護を受けるのは恥だ!」というようにです。

 国民の中にあからさま分断を持ち込む手法です。
生活保護受給者だからパチンコはダメ? 「納税者」と生活保護受給者の分断を煽る産経新聞

 今後、自衛隊や政府もあの手この手で志願者増のために画策するでしょうが、それでも私は、やはり自衛隊の志願者を回復させるには至らないと思います。

 決定的に異なるのは、日本は、米国のような耐えず戦死者が出ているという国とは違うという点です。日本は戦後、戦死者を1人も出していません。

 どんなに底辺層に叩き落とされようとも、もはや現実の問題として日本の若者の一定層が死を自ら受け入れるということはありません。

 米国での帰還兵がその後、異常な行動を取ったり、日本の自衛隊が帰還後、自殺が異様に多かったりなどの情報は、日本の若者から消し去ることは、もうできません。
 
今後、ますます自衛隊への志願者は減少を続けます。

 既にちっとやそっとの「経済的メリット」などで誘引できる状況ではないということです。

 もはや自衛隊の人員を充足させるためには強制力を働かせるしか手段がなくなるのも時間の問題ということになります。

 強制的に集めても役に立たない?

 そのようなことはありません。強制されるのであればこそ、例えば、陸軍士官学校に憧れる貧民層だって出てくるのです。

 防衛大学校をより一層の「エリート」に引き上げることも可能になります。

 とかく日本の極右政治家は、徴兵制にこだわりを持っています。

 若者を一定期間、自衛隊に入れろというのは、形を変えた徴兵制です。
兵役義務や強制労働を匂わせる政治家&言論人」(おまとめサイト)

 発想の根底には、やはり米国との違いがあり、彼らの思想には「大和民族」として一致団結し、日本国家のために死ぬべきという思想があるからです。靖国神社参拝による「英霊崇拝」は、その思想の表れです。

 このように私は、日本では経済的徴兵制よりも徴兵制の方こそその危険性が高いと考えます。
(正確には、支配層があの手この手の経済的メリットをもたらす政策を実施しようとも、功を奏さず、結局、徴兵制に行き着くという意味です。)

 安保関連法を残している限り、そして憲法9条が改悪されれば徴兵制は現実のものとなります。

 私たちの子や孫を戦場に送るようなことがあってはなりません。

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