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特集:G7伊勢志摩サミットへの道

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5月26-27日に予定されている伊勢志摩サミットまで、いよいよ残り1か月少々となりました。この政治イベントに併せて、消費増税の延期や解散・総選挙の可能性が語られてきましたが、ここへきて2つのワイルドカードが飛び込んで、内外の情勢はますます視界不良になってきた感があります。

ひとつは4月3日に公表された「パナマ文書」で、既にアイスランドの首相が辞任に追い込まれています。もうひとつは4月14日と16日に連続して九州を襲った「熊本地震」で、日本経済への影響が懸念されるのみならず、政治動向も左右されそうです。

今回の伊勢志摩サミットでは何がテーマとなり、何が成功のカギを握るのか。そして安 倍首相は何を考えているのかを探ってみました。

●世界経済見通しはまたも下方修正

4月12日、IMFの「世界経済見通し」(World Economic Outlook)の最新版が公表された。「WEO」はもともと4月と10月に改訂されていたが、近年は状況の変化が激しいために、1月と7月も併せて年4回改訂されている。

最近は改訂のたびに、見通しは下方修正を繰り返している。今回も世界経済のベースライン見通しは、前回1月に比べて0.2%の下方修正となり、2016年は3.2%成長、2017年は3.5%成長となった。

ちなみに今年2月に発表されたOECDの世界経済見通しは、前回の3.3%から下方修正されて3.0%であった。3%は文字通り景気失速スレスレの水準であり、IMFとOECDは揃って今年の世界経済は黄色信号と見なしていることになる。

ということで、最新号のWEOは”Too Slow for Too Long”という表題がついてしまった。

意訳すれば、「かくも長き停滞」といったところだろうか。なにしろ2012年以来、連続して3%台前半の成長が続いている。こんな風に低成長が続くと、その結果として消費と投資が減少し、世界全体の潜在成長力が低下してしまう。最近の貿易量の低迷と資源価格の下落は、そのことを雄弁に物語っているように見える。

今回のWEOについて、日本国内では「日本経済の2017年見通しがマイナス成長になった(前回に比べて0.5%引き下げ)」ことが話題になっている。「だって予定通り消費増税をやるんでしょ」と言われているような気がするが、これは今の世界経済が抱えている問題とはやや文脈が異なっている。

今回のWEOが警戒しているのは、「中国経済の減速」「商品市況の下落」「投資と貿易の減速」「新興国への資金フローの不足」「地政学的リスク」「英国のEU離脱」などである。が、日本経済はこれらの問題に対して、特に脆弱というわけではない。対中貿易依存度はそれほど高くはなく、商品市況の下落はむしろ受益者の側である。地政学的リスクも他国ほど切実ではなく、Brexitの風圧を受ける度合いも低そうだ。

むしろ日本は安全だと思われている。ゆえにこれらのリスクが実現した場合には、「とりあえず円を買っておけ」というリスクオフの円高が生じる恐れがある。しかるに日本政府が「円高は困る」とアピールしても、他の先進国が素直に受け止めてくれるとは思えない。「もう3年間も円安を許容してきたじゃないか。その間にお宅はいったい何をしてきたんだ」と怒られそうである。しかも今年に入って、月次の貿易収支は完全に黒字に転じている。いよいよ金融政策では、ごまかせなくなっているのではないだろうか。

●「オフレコ破り」から見えてきたもの

それでは今の世界経済が共有している問題と解決策は何か。安倍首相は先月以来、海外の著名有識者を官邸に呼んで勉強会を開催している。以下の通り、ノーベル経済学賞受賞者が3人もいるという豪華な講師陣である。

○国際金融経済分析会合(*印はノーベル賞受賞者)
第1回(3/16)ジョセフ・スティグリッツ(コロンビア大教授)*
第2回(3/17)デール・ジョルゲンソン(ハーバード大教授)/岩田一政(日経センター理事長)
第3回(3/22)ポール・クルーグマン(NY市立大教授)*
第4回(4/7)ジャン・ティロール(仏トゥールーズ第一大教授)*
第5回(4/13)アンヘル・グリア(OECD事務局長)/シャンジン・ウェイ=魏尚进(ADBチー フエコノミスト)
第6回(4/21)ファティ・ビロル(IEA事務局長)/ポール・スティーブンス(チャタムハウス 名誉フェロー)/ウィム・トーマス(ロイヤル・ダッチ・シェル・チーフエナジーアドバイザー)


となると、これらの会合でどんな意見交換が行われているかが気になるが、あいにく非公開であり、配布資料だけがネットで公開されることになっている2

ところがこの会合でのやり取りを、完全に暴露してしまった人物がいる。毎度お騒がせのクルーグマン教授で、なんと45分間のやり取りを英文のフルテキストに起こし、「僕が東京で言ったこと」と題してツイッターで公開してしまったのである3

会合は全体で45分間。クルーグマン教授の冒頭プレゼンは10分だけで、その後はじっくり質疑応答が行われている。なかでも安倍首相が行った都合4回の質問は、経済の現状に対する考え方がよく表れていてまことに興味深い。

冒頭の質問はこんな風に始まる。

(PM Abe)
About two years ago, I had a pleasure meeting with you, Professor Krugman. At that time, Japan was able to be going out of the deflation then we have set for ourselves the 2% inflation goal. We were talking during that time that a rocket has to go out of the atmospheric region, which means that an escape velocity has to be earned in order to lift the Japanese economy out of deflation and we were looking for a good speed to do that.


2年前、つまり2014年秋に消費増税の延期を決めたときの会合のことを言っているのだが、「デフレからの脱出速度(Escape Velocity)が大事」と言っている。どうもこの二人は、日本経済の処方箋についてほとんど意見が一致している。もっと言えば、「2014年春の消費増税で脱出速度を損なった」と反省しているのではないか。

1 http://www.imf.org/external/pubs/ft/weo/2016/01/

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