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アングル:新興国株式の上昇トレンド、継続確信には材料不足か

[ロンドン 20日 ロイター] - 新興国市場の上昇基調は3カ月目に入るが、投資家は今回の反発が短命に終わらないとの確信を得るため、景気や輸出の上向きサインを確認しようとしている。

これまでの上昇は、浮き沈みの激しさで知られる新興国市場に投資ファンドの資金が戻ってきたことが主な要因とみられている。こうしたファンドは、さえない景気見通しには目をつむり、長期バリュエーションが割安との期待からエクスポージャーを拡大している。

2015年の大幅下落と年初の混乱を経て、年初から8%近く株式が上昇するなど新興国市場は苦境を脱しつつあるようにみえる。ただ、回復を裏付ける確定的な要素はまだみつかっていない。

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチは19日の顧客へのリポートで、新興国株式市場の見通しについて、過去5年の弱気から「構造的な強気」に転じているとし、日本を除くアジアと新興国の株式市場への長期投資を推奨した。

しかし、今回の上昇局面が継続するかどうかが問題だ。

懐疑的な向きは、現在の上昇は米国の利上げ速度が緩やかになるとの見方からドル安が進み、コモディティ価格が回復したことが要因だと指摘。新興国の景気は依然として弱く、株価もそのうち打撃を受けると予想する。

UBSによると、主要新興国19カ国と先進国の成長率の差は1.6%で、2009年の7.5%から大幅に縮小し、ここ16年で最も小さい。UBSは、新興国と先進国の成長率の差と資本フローに大きな関連性があると指摘する。

投資家はこれまでにも、新興国の弱気相場での反発を経験している。モルガン・スタンレーは、今回の上昇は、新興国の株価がマイナスに転じた2010年末以降9回目の反発局面になるとしている。

明るい兆しもみられる。国際金融協会(IIF)の調べでは、新興国の3月の成長率は3.3%と8カ月ぶりの高水準にあるという。

新興国の命綱ともいえる貿易も、ようやく回復しつつあるか、もしくは、少なくとも悪化ペースが鈍化しているようだ。キャピタル・エコノミクスによると、2月の輸出はドルベースで7.2%縮小となり、12カ月ぶりの小幅な減少となった。

中国の第1・四半期成長率は6.7%と、2009年以来の低水準となったが、融資や小売り売上高、鉱工業生産は予想を上回った。

キャピタル・エコノミクスのウィリアム・ジャクソン氏は「今回の新興国株高は、懸念されていたことが起きなかったためだ。中国経済は崖から落ちなかったし、予想されていた新興国市場の危機もない」と語った。

<依然弱い貿易>

UBSのアナリストから見れば、貿易統計を中心に新興国経済の指標にはセンチメントを下支えする要素がない。UBSによると、世界経済の伸びに対する貿易の伸びは現在1.07倍と、2000年半ばの1.6倍、1990年代の2.2倍を大きく下回っている。ドルベースで新興国の輸出は毎年10%縮小しているという。

UBSは「こうした変化は構造的なもので、この変化が適正価格モデルに組み込まれていないため、新興国の資産は安く評価されている」と指摘する。

歴史的なバリュエーションの低さが投資家を引き付けている主な要因とみられており、MSCIの新興国株価指数は先進国の株価指数を約25%下回っている。

ただ、この差は縮小している。ブラジル経済は今年最大4%のマイナス成長を記録し、国内の政局は混迷の度合いを増しているものの、株価は年初から33%上昇、予想株価収益率は12倍と過去平均を大きく上回っている。

アビバ・インベスターズのファンドマネジャー、ウィル・バラード氏は「根本的な経済の状況をみれば、かなり悲惨だ。株価収益率は膨らんでいるがそれを利益が支える兆候がみられない」と指摘する。モルガン・スタンレーも、新興国企業の利益は今年マイナス7%となり、5年連続で落ち込むと予想している。

それでも、新興国市場のファンはいる。

アバディーン・アセット・マネジメントの新興国株式部門代表、デバン・カルーン氏によると、新興国の企業の利益は昨年ドル建てで3%縮小したが、資源関連企業を除いた現地通貨ベースでは10%増加している。

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチは、新興国通貨の40%は、貿易加重平均ベースでこれまでにないほど競争力が高まっているとし、これが貿易面でプラスに働くと指摘。「われわれはこれまでより強気だ。新興国企業の収益見通しは、コンセンサスを過去5年で初めて上回った」としている。

(Sujata Rao 記者、 翻訳:伊藤恭子 編集:加藤京子)

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