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地方創生とイノベーション創出のための知的財産戦略 提言~第4次産業革命とグローバル化の中で~

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平成28年4月21日
自由民主党政務調査会

知的財産戦略調査会では、これまで取りまとめた提言を踏まえ、有識者等の意見や政府の取り組み状況等を聴取し、産業活性化に関する小委員会、コンテンツに関する小委員会等において議論を行ってきたが、この度、今後の知的財産戦略として取り組むべき施策を明示するため、この提言を取りまとめるものである。

知的財産に関する政策決定は、経済のグローバル化が進む中で、知的財産を活用していかに経済発展を図り、国富を増大するかという視点からなされなければならない。IoT、ビッグデータ、人工知能といった技術革新により進展しつつある第4次産業革命という新しい経済社会の変革と、TPPを契機にさらに加速するグローバル化の中で、ダイナミックなイノベーション創出のための成長戦略と、地域の中小企業、大学等の力を発揮できる地方創生戦略を、知財戦略の観点から推進していくことが必要である。本提言は、そうした基本的な立場に立って、必要な施策を取りまとめたものである。

本提言を取りまとめるに当たって、今後、知財戦略を推進するうえで着目すべき視点を強調しておきたい。

まず、知財戦略の重層的な取り組みの重要性である。知財戦略は、国全体で、知的財産の創造、活用及び保護のそれぞれの局面が有機的かつ密接に関連したものであり、かつ、個別企業、産業界、大学から国全体におよぶ様々なレベルで、多様な知的財産や標準化に関わる競争と協調によって高めていくものである。特に、第4次産業革命時代に対応した知財戦略を推進するためには、企業レベルのオープン&クローズ戦略を発展させていくだけでなく、社会システムの国際標準化のための体制整備を国が主導するなど、官民が連携して取り組むことが必要である。

第2に、地方創生につながる知財活用の促進である。知的財産の活用により地方の中小企業も含めグローバルな市場を獲得し、日本全体の競争力向上を図るためには、大都市圏や大企業のみならず地方や中小企業、農業分野においても知財マネジメントの重要性が理解され、実践されることが重要であり、TPP協定の締結に向けた動きも踏まえ、海外展開を含めたその普及拡大を図っていくことが必要である。また、地方の資源活用も含めたコンテンツと非コンテンツ分野の連携などを通じて日本の魅力あるコンテンツを海外に積極的に発信することが重要である。

第3に、デジタル・ネットワーク化に対応した知財システムの構築である。デジタル化、人工知能の発達といった技術の進化により大量に情報が生成され、情報の利活用方法が多様化する中、従来の知的財産に加えて、イノベーションの新たな源泉としてデータが大きな価値を持つようになっている。このような中で、我々の経済的・社会的活動において知的財産をより広くとらえ、多様な手法を駆使した知財マネジメントが必要となる。

また、現在の著作権法が作られた昭和45年と現在を比べると、社会は大きな変化を遂げている。一方で、TPP協定により、著作権等侵害罪の一部非親告罪化や保護期間の著作者死後70年への延長等、更なる権利保護の強化がなされる方向である。新しい技術を用いた著作物の多様な利活用を促進し、イノベーションを起こしていくためには、「コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律」との関係を踏まえつつ、新規立法をも視野に入れることが必要とも考えられる。これについては引き続き検討が必要であることから、まずは現行著作権法に「柔軟な権利制限規定」を取り込み、契約行為で対応できない利活用方法についてもイノベーションを引き起こす仕組みを設けることが妥当である。併せて契約による利活用の円滑化に取り組むことが重要である。これにより、著作物の保護と利活用のバランスを取り、日本の質の高いコンテンツについてさらに利活用を進め、日本経済成長の原動力としていくことが必要である。

第4に、知財教育と知財活用のための人材育成の重要性である。新たな時代に対応した知的財産の創造・活用・保護の一連の強化や国際標準化の推進のためには、研究機関や企業、公的機関における知財マネジメントに精通した人材や国際社会での交渉力ある知財人材の育成が必須である。加えて、社会のより広い分野に知的財産が関わりを生じ、その創出が国際競争力のコアとなる時代には、将来のイノベーションの源泉となる青少年の創造性の涵養とそれによって作り出された知的財産の活用の重要性を認識した知財を担う人材の裾野拡大が重要である。

第5に、審査体制等の充実や知財紛争処理システムの機能強化など知財システム基盤整備である。知的財産の活用を通じたイノベーション創出を推進していくためには、知財保護を担保するための審査官の確保等の特許審査体制等の整備・強化や知的財産の保護に必要となる制度・ルールの構築などの環境整備を図っていくことも必要であり、これはグローバルな動向を把握しつつ国際社会をリードする形で取り組んでいかなければならない。

また、紛争処理システム分野では経済成長の原動力であるイノベーションが絶え間なく生まれるよう、特許権を十分に保護する体制構築が必要である。高度な技術が絡む特許紛争における刑事罰の実効性の問題等を勘案し、特に悪質な侵害の場合に損害賠償を充実させるべきとの意見がある一方、我が国の全体的な法体系等の観点から慎重な検討を求める声もあることを踏まえ、損害賠償制度の充実・適正化については様々な論点を引き続き検討していくべきである。

最後に、民間の知財啓発活動の支援も重要である。我が国の企業等が知財を巧みに活用し、企業価値、大学等の価値を高めることが国富の増大に結びつく。企業トップや経営幹部らが、紛争処理システムを含め、知財制度の国際的な進展状況を十分に理解し、知財のマネジメント手法、訴訟ノウハウ、弁護士・弁理士の選定・活用などに関するグローバル企業等の先進事例を学ぶことは極めて重要である。

イノベーション創出における国際競争が加速していく中で、党と政府が一体となり、世界最先端の知財立国として我が国の産業を活性化し、国民の生活と文化を豊かにしていくことが最大の責務である。政府においては、本提言を受け止め、知的財産推進計画はもとより、日本再興戦略や経済財政運営の基本方針、科学技術・イノベーション総合戦略に反映するとともに、国家戦略としての観点から積極的かつ強力に諸施策を実施していくことを期待する。

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