- 2016年04月21日 14:31
野球賭博、自己申告期限の無意味さ - 赤坂英一 (スポーツライター)
週明けの25日月曜は、日本野球機構(NPB)が12球団の選手に通達した自己申告期限である。これまで有害行為(野球賭博)に関与したことがある者は、6日から25日までの20日間に自主的に申し出れば、無期の失格処分に相当していても、野球賭博常習者や反社会勢力と関係を持たないなど、十分に反省していると判断された場合、失格処分の期間を1年間に軽減する、というものだ。
巨人で発覚した一連の野球賭博問題では、昨年露見した福田聡志、笠原将生、松本竜也の3人が無期失格処分。今年自ら球団の調査にウソをついたと認めて、謝罪会見を行った高木京介が1年の失格処分となった。これを受けて、松本竜也もNHK『クローズアップ現代』(4日放送)のインタビューに応じ、遅ればせながら謝罪の弁を述べている。
プロ野球界の腐敗を“自白”したNPB
そうした経緯を踏まえて、NPBでは選手たちに“自首”する機会を提供し、代わりに“無期懲役”から“懲役1年”にしてやろう、というわけだ。「名乗り出たいけど、向こう(賭博常習者や反社会勢力)から圧力をかけられるような選手を救うための措置」(巨人・森田清司球団総務本部長)、「悩んでいる選手がいるとすれば、われわれが言いやすい環境を作らなければならない」(中日・西山和夫球団代表)と、各球団ともこの自己申告制度の期限まで全面的に協力する構えである。
これはNPB自ら「プロ野球界は腐敗している」と“自白”したに等しい。このような反社会勢力がらみの不祥事が発覚するたび、球界では「ほかに有害行為に手を染めている選手はいないと信じたい」などとキレイ事の詭弁を弄し、「臭いものにはフタ」式の灰色決着で終息させるのが常だった。それが大っぴらに“自首”を呼びかけているのだ。そういう意味では、実態を踏まえた現実的措置であり、画期的な進歩であるとも言える。
この自己申告制度の発案者、熊崎勝彦コミッショナーは元東京地検特捜部長で、リクルート事件、金丸信・自民党副総裁の巨額脱税事件の捜査などに携わり、「落としの熊崎」と異名を取った。退官後の2005年より、コンプライアンス(法令順守)担当のコミッショナー顧問としてNPB入り。主に暴力団排除問題に取り組み、中日の本拠地・ナゴヤドームから反社会勢力と関わりのあった私設応援団をすべて締め出すなど、着実に成果を上げ、14年からコミッショナーに就任した。
啓発活動は選手会が担う米国
では、期限の25日までにどれだけの選手が“自首”して出るかとなると、甚だ疑問である。失格期間が1年に縮まっても、球団をクビになり、マスコミにも大きく報じられるのだ。1年後に処分が解かれても、プロ野球に復帰できる保証はない。加えて、野球賭博には仲間が付きものだから、自己申告すれば自分だけの問題で済まず、ほかに誰がやっていたのかと所属球団やNPBの担当者に聞かれる。メリットは何一つないのだから。
この問題、選手会労組はどう考えているのだろうか。元ソフトバンク球団取締役で江戸川大教授の小林至氏によると、「(野球賭博への関与を戒める)啓発活動は米国では、選手会がやるんです。大リーグではキャンプの時に。プロバスケットボールのNBAもそう」(3月31日付毎日新聞「そこが聞きたい」)だという。球団やMLBももちろん協力しているものの、主体的に野球賭博対策を講じているのはむしろ、選手会のほうなのだ。
日本の選手会も、今回の野球賭博問題では2月のキャンプ中に再発防止のための研修会を主催。開幕前には「二度とこのようなことを起こさない」と嶋基宏会長(楽天)が声明を出した。が、04年の球界再編騒動の最中のストライキ、11年の東日本大震災で経営者側を押し切った開幕延期と比べると、いまひとつ積極さが感じられない。誰が野球賭博をやり、反社会勢力に関わっているか、一番詳しいのは選手たちのはずだから、いまこそ自発的な調査や指導を期待したいのだが。- WEDGE Infinity
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