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ガリガリ君はなぜ愛されるのか ~値上げコミュニケーションに見る、赤城乳業イズム~

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4月1日、赤城乳業はガリガリ君をはじめとするアイス商品を値上げした。ガリガリ君の値上げは、1981年の発売以来2回目で25年ぶり。60円を70円にした。通常、「値上げ」に関するニュースは、生活者にダメージを与えるとして批判的に受け取られがちで、企業や商品のイメージダウンにつながる可能性もある。しかし、ガリガリ君の値上げに関するネガティブな報道は「ゼロ」。生活者も「9割」が受容したという。赤城乳業の「値上げコミュニケーション」はなぜうまくいったのだろう。その背景を取材し、分析した。

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2つのうれしい誤算

赤城乳業の「値上げコミュニケーション」は、3月上旬のリリース発表に始まる。

商品企画から宣伝・広報までを一手に担う、同社の営業本部 マーケティング部長 萩原史雄さんによると、消費者の反応は半々と事前に予想していたが、フタを開けてみると9:1でポジティブだったという。ソーシャルメディアの書き込みや、お問い合わせ窓口には「25年間ありがとう」「今までよくがんばった」「値上げしても、買う」などの意見が多く寄せられた。ここまでの好意的なリアクションは想定外だった。

各社が値上げを発表する中、その代表例として、メディアの取材も殺到した。すべてフルオープンで対応した結果、批判的な記事を書いたメディアは一つもなかった。

消費者とメディアの反応、この2つの「うれしい誤算」で、リリース発表と共に準備を進めていた広告も「これなら」と、背中を押されたという。

エイプリルフールに「事実」を

広告が解禁されたのは、4月1日のエイプリルフール。世の中の企業が「ウソ」のネタや話題づくりに気合いを入れる中、赤城乳業は10円値上げの「事実」を伝えるために本気を出した。

日本経済新聞朝刊に全面広告を掲載すると共に、1日、2日限定で60秒CMを3回放映した。会長、社長を筆頭とする赤城乳業の社員、約120人が頭を下げるシンプルなビジュアルで、新聞広告には昭和のフォークシンガー故・高田渡さんの名曲『値上げ』の歌詞が書かれ、テレビCMではその曲が滔々と流れる、という内容だ。

この「事実」広告に、消費者はどよめいた。「今朝の日経にガリガリ君値上げを謝罪する全面広告が載ってて笑った。どう、この気合いの入りよう」「ここまでするの」「どうか、頭をお上げください」。広告を見た人の好意的なリアクションは、Twitterをはじめとするソーシャルメディアで広がり、ニュースとなって海を越え、中国やブラジル、イタリアのメディアでも報道された。

歌詞にすべてをゆだねた

制作を担当した電通のクリエーティブ・ディレクター 古川雅之さんは、「赤城乳業さんの持つ、正直かつ遊び心にあふれた"人柄"に寄り添って、10円の値上げを"チャーミング"に伝えられると思った」と話す。値上げを広告のテーマにするなら、と、以前からよく聞いていた、高田渡さんの『値上げ』がすぐに思い浮かんだという。

『値上げ』は1971年のニクソンショック後、日本のインフレ加速期にリリースされた曲で、値上げはしたくないが、せざるを得ない環境となり、悩み抜いたあげく、しかたなく踏み切るという内容だ。歌詞が「赤城乳業の気持ちとまさに合致していた」(萩原さん)こともあり、値上げに至った経緯や、これまでの企業努力や言い訳は広告に一切盛り込まず、「歌詞にすべてをゆだね、シンプルでユーモラスな表現にした」(古川さん)。

異端の経営、赤城乳業イズム

同CMを撮影するにあたり、会長、社長の経営陣はもちろん、できるだけ多くの社員が参加できる日程が組まれた。同社の2つの工場で働く社員も参加するため、両工場の稼働を数時間止めなければならなかったが、生産を止めてでも伝えるべきメッセージがここにある、と決断した。通常、CMの撮影では、監督から演技指導や演出のリクエストが入るが、この時の撮影では、ほぼなし。「カメラの向こうのお客さまに気持ちが伝わると思うので、カメラをまっすぐ見てください」と伝えた結果、自然とあの表情になったという。同時に新聞広告用として、頭を下げたままのシーンも撮影された。

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▲カメラをまっすぐ見つめた結果、社員一同この表情。お客さまへの気持ちを込めた。

「申し訳ありませんと、ありがとうございます。この二つの気持ちを込めた」と萩原さん。社員の思いを伝えつつ、「くすっと笑える広告」をつくろうとしていたが、結果的には赤城乳業の真摯さや正直さも伝わる仕上がりとなり、消費者からの反応は「感動した」から「面白い」まで、感情の幅は多岐にわたった。

「会社のトップが出る新聞広告なのに、写っているのは顔じゃなくて頭だけ。普通の企業ならOK出さないですよね」と古川さん。これに対し、「あの広告見ると、当社の頭薄い率がわかるんですよ、11%です(笑)」と萩原さん。まるで、小学生のガリガリ君が言いそうなことをスッと口にする。この豪胆さとお茶目さがなければ、ガリガリ君らしいコミュニケーションはできないのだろう。自らを"異端の経営"と呼ぶ、赤城乳業イズムを感じた。

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▲4月1日の日本経済新聞朝刊に掲載された、赤城乳業「ガリガリ君」の値上げ広告。同社の会長、社長をはじめ、全員頭を下げているため、顔は見えない。萩原さん曰く、頭薄い率は11%。

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